「広告が法律違反した場合、その責任を負うのは広告主」―――老舗のメディアを運営されている方や、出版広告業界に長く携わっている方など、古くからメディア運営にかかわっている方ほど、「広告の責任は広告主に」の考え方を持ってます。しかし、今やその考え方は危険といわざるを得ません。
どういうことなのか、改正健康増進法の施行に伴い定められた「媒体責任」について解説していきます。情報の信ぴょう性については
消費者庁発出の公的文書の誤りを指摘し改善させた実績もあり
- 景品表示法務検定アドバンス(消費者庁、公正取引協議会主催)
- 食品の適正表示推進者(東京都福祉保健局主催)など
を所有する専業薬機ライターが執筆しておりますのでご安心ください
健康増進法と広告規制ガイドライン
まず前提となる健康増進法について確認しておきましょう。
健康増進法とは、国民の健康維持と現代病予防を目的として作られた法律です。昔の栄養改善法に代わるもので、その内容には栄養改善法の条文が引き継がれています。
この法律は、我が国における急速な高齢化の進展及び疾病構造の変化に伴い、国民の健康の増進の重要性が著しく増大していることにかんがみ、国民の健康の増進の総合的な推進に関し基本的な事項を定めるとともに、国民の栄養の改善その他の国民の健康の増進を図るための措置を講じ、もって国民保健の向上を図ることを目的とする。
(健康増進法第一条)
健康増進法も発足当初はヘルスケアの実務にはさほどかかわりのないものでした。しかし2003年の改正に伴い発出された「広告規制ガイドライン」により、以後大きな影響を受けることになります。
健康増進法の広告規制ガイドラインで加えられた規制内容は大きく次の4つです。
「虚偽誇大広告の禁止」
「付近ルール」
「あっせんルール」
「媒体責任」
今回は媒体責任に絞って解説します。広告規制ガイドラインの他の規制については以下の記事で詳しく解説しています。
媒体責任とは
健康増進法の広告規制ガイドラインのなかでもとりわけメディアへの影響が大きいのが、「媒体責任」です。
広告規制が出されるまでは、メディアはなんら規制を受けることなく、自由に表記することが許されていました。なぜなら日本国憲法はその21条に「表現の自由」を規定しているためです。
媒体責任は広告の責任が掲載媒体にも及ぶことを定めたルール
ところが広告規制ガイドラインが出され、状況は一変します。
改正健康増進法では誇大広告の規制対象について次のように規定しています。
「何人も、食品として販売に供する物に関して広告その他の表示をするときは、健康の保持増進の効果その他厚生労働省令で定める事項(以下「健康保持増進効果等」という。)について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない(第32条2)」
注目したいのは、誇大広告の禁止を定めたこの条文の主語が「何人も」となっている点。
つまり違反行為(誇大広告)があった場合、事実上その責任は広告主だけでなく、掲載元の媒体メディアにも及び得ることを定めています。
媒体責任に関して「食品として販売に供する物に関して行う健康保持増進効果等に関する虚偽誇大広告等の禁止 及び広告等適正化のための監視指導等に関する指針(ガイドライン)に係る留意事項について」 には、次のように記載されています。
第1 本指針の趣旨
2 食品として販売に供する物に関して広告その他の表示をする者の責務
食品として販売に供する物に関して広告その他の表示をする者は、その責務として、摂取する者が当該食品を適切に理解し、適正に利用することができるよう、健康の保持増進の効果等について、客観的で正確な情報の伝達に努めなければならないものである。
→「広告主なら、客観的で正しい情報を伝える責任があるので、誇大広告の規制を受けるのは当然のことですよね」ということです。
その上で以下のように続きます。
第2 健康増進法第65条第1項の規定により禁止される広告その他の表示
1 同項の適用を受ける対象者
健康増進法第65条第1項には「何人も」と規定されている。このため、同項が対象とする者は、食品等の製造業者、販売業者等に何ら限定されるものではなく、「食品として販売に供する物に関する広告その他の表示をする」者であれば、例えば、新聞社、雑誌社、放送事業者、インターネット媒体社等の広告媒体事業者等も対象となり得ることに注意する必要がある。
→「誇大広告の規定に違反した場合新聞社、雑誌社、放送事業者、インターネット媒体などの媒体も責任に問われる可能性があります」ということです。
この媒体責任論については日本新聞協会広告委員会から厚生労働省に対して意見書が送られるなど、当時非常に批判が上がりました。
「広告の責任は広告主にある」との考え方が社会通念上、大原則だったためです。
とはいえ、広告主が違法行為をしたからといっただちに媒体も道ずれになるわけではありません。あくまでも「健康増進法の適用があり得る」とするにとどめています。
もっとも、虚偽誇大広告について第一義的に規制の対象となるのは健康食品の
製造業者、販売業者であるから、直ちに、広告媒体事業者等に対して健康増進法
を適用することはない
また健康増進法の適用があり得るのは「予見可能性」があった場合のみとされています。
つまり広告主が虚偽広告を提出し、メディアがそれと知らずに掲載した場合は、メディアが責任を負ことは現段階ではありません。
しかし、販促手法の規制強化は年々厳格化しているので、注意が必要です。たとえば景品表示法ではつい最近までアフィリエイターの違反で販売元が罪に問われることはありませんでしたが、平成30年6月15日のブレインハーツの事例では、アフィリエイトサイトの違反で販売元に措置命令がでています。
「ホワイトな広告」が求められる昨今ですから、媒体責任もいつ規制強化となるかもしれません。
健康増進法の罰則
健康増進法に違反した場合、勧告、措置命令などの行政処分、罰金や懲役などの刑事処分を課されることがあります。刑事事件になるケースは稀ですが、健康増進法の行政指導では社名公表になることもありますから、甘く見てはいけません。
行政指導
勧告
健康増進法に違反する表示をおこなった場合、厚生労働省よりその表示に関し必要な措置をとるべき旨の勧告を受けます(健康増進法第32条1項)。
措置命令
勧告を受けても措置をとらなければ、措置命令が出されます(健康増進法第32条2項)。
健康増進法の措置命令では多くの場合事業者名が公表されることとなります。
刑事罰
措置命令に従わなければ、「6ヶ月以下の懲役、または100万円以下の罰金」に処せられます(健康増進法第36条2項)
ただ、基本的に刑事処分になるのは行政指導をすべて無視した場合のみです。健康増進法で刑事処分になるケースはほとんどありません。
メディアには虚偽広告を排除できる仕組み作りが求められる
媒体責任は現段階では法的拘束力は強くありません。ただし、今後規制強化される可能性は十分にあります。メディアは掲載ガイドラインを設ける、広告のリーガルチェック体制を整えるなど、虚偽広告を排除できるような仕組み作りが必要です。
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