【最新版】打消し表示の規制|摘発されないたった3つのポイントも紹介

商品やサービスの内容に例外がある場合、その旨の注釈、いわゆる打消し表示をしなければなりません。打消し表示を分かりやすく適切におこなわなければ、 不当表示として景品表示法上問題となるおそれがあります。しかし打消し表示のルールは何度も改正されていますから、最新の規制を把握しておくことが重要です。本稿では

  • 「打消し表示に関する実態調査報告書」
  • 「スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書」
  • 「広告表示に接する消費者の視線に関する実態調査報告書」

などを根拠に

  • 現時点で打消し表示が問題となるケース
  • 打消し表示をおこなう際の注意点
  • 不当表示とならないための2つのポイント

を解説していきます。

情報の信ぴょう性については

  • 日本でただ一人消費者庁に公的文書の誤りを指摘・改善させた実績
  • 景品表示法務検定(消費者庁、公正取引協議会主催)アドバンスクラス(平均合格率2.9%)所有
  • 上場企業との取引実績多数
  • 食品の適正表示推進者(東京都福祉保健局主催)
  • その他薬事法関連民間資格ひと通り(薬事法管理者資格など)
  • 薬事広告実績9000件以上

をもつ専業5年目薬機ライターが解説しています。

目次

打消し表示と強調表示

はじめに打消し表示強調表示の定義を確認しておきます。

強調表示…一般消費者に訴求するために、目立つ表現を使って品質等の内容や価格等の取引条件を強調した表示

打消し表示…商品やサービスの説明の際、その内容に例外がある場合に表示される注釈

前提として、「打消し表示は免罪符にはならない」ということを頭に入れておく必要があります。打消し表示をすれば何を書いても許されるわけではありません。

打消し表示の有無は、消費者が広告から受ける印象に影響を与えるものではないというのが行政の考え方です。

例)

化粧品でシミ改善を標ぼうした場合、「効果には個人差があります」などと打消し表示しても薬機法上の問題が生じる

そのうえで、打消し表示については細かな規制が定められています。

打消し表示で問題となるケースとその対策

打消し表示の規制も以前は「8ポイント以上の文字サイズで表示すればよい」とう単純なものでした。しかし打消し表示に関する実態調査により、特に中高年の消費者が表示を見落とし内容を誤認するケースが判明するなどで、ルールは何度も改正されています。

以下では

  • 「打消し表示に関する実態調査報告書」
  • 「スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書」
  • 「広告表示に接する消費者の視線に関する実態調査報告書」

をもとに、現時点で問題とされている表示事項と事業者がとるべき対策について解説します。

全ての媒体に共通して問題となる事項

①打消し表示の文字の大きさ 

問題となるケース:一般消費者が見落としてしまうほど文字が小さい

打消し表示の文字の大きさは、一般消費者に打消し表示が認識されない大きな理由のひとつであると考えられています。表示媒体の特徴も踏まえ、一般消費者が実際に目にする状況において十分な文字の大きさで表示することが必要です。

公正取引委員会は、2008年に「見にくい表示に関する実態調査報告書―打消し表示の在り方を中心に―」を公表しており、「一般消費者が手に取って見るような表示物の場合には、その表示スペースが小さい場合であっても、最低でも8ポイント以上の大きさで表示することが必要である」と示されています。

②強調表示の文字と打消し表示の文字の大きさのバランス 

問題となるケース:強調表示の文字サイズに対して、打消し表示の文字サイズが小さい

打消し表示そのものの文字は大きくても、強調表示の文字サイズと比較すると小さい場合、消費者の注意は打消し表示には向かず、認識できません。

強調表示とのバランスを考え、十分な大きさで打消し表示をすることが必要です(同じくらいのサイズが望ましいとされています)。

③打消し表示の配置箇所

問題となるケース:打消し表示が強調表示から離れた場所にある

打消し表示の文字が、強調表示とのバランスからしても妥当なサイズであっても、強調表示から離れた場所に配置されているケースではその強調表示に対する打消し表示であることを認識できません

打消し表示を強調表示の近くに配置することが必要です。 

④打消し表示と背景の区別 

問題となるケース: 打消し表示の文字と背景との区別がつきにくい

  • 打消し表示の文字が背景と同化している
  • 背景に模様がある

など打消し表示の文字と背景との区別がつきにくいような場合消費者が打消し表示を認識できません。

背景の色と打消し表示の文字の色との組合せや、打消し表示の背景の模様等を消費者から認識できるように調整することが必要です。

動画広告において問題となる表示方法

 (ア) 【動画広告】打消し表示が含まれる画面の表示時間

問題となるケース:画面が切り替わるまでに打消し表示を読み終えることができない

  • 打消し表示が含まれる画面の表示されている時間が極端に短い
  • 打消し表示の文字量が多い

など、画面が切り替わるまでの時間内に打消し表示を読み終えることができない場合、消費者が打消し表示を認識できません。

  • 打消し表示が含まれる画面の表示時間を十分にとる
  • 文字数が多い場合はその分画面の切り替え時間も長くする

など、打消し表示の時間や画面に表示される文字数を、消費者が打消し表示の内容を理解できるよう調整することが必要です。

(イ) 【動画広告】強調表示と打消し表示が別の画面に表示されるか

 問題となるケース:強調表示が表示画面が切り替わった後打消し表示が表示される

強調表示が表示画面が切り替わった後打消し表示が表示されても、消費者は直前の強調表示に対する打消し表示であると認識できません。

強調表示と打消し表示は同一画面に表示することが必要です。

 (ウ) 【動画広告】音声等による表示の方法

問題となるケース:

  • 強調表示は文字と音声の両方で表示されているにもかかわらず、打消し表示は文字のみで表示されているため、打消し表示に一般消費者の注意が向かない
  • 打消し表示と同一画面内に表示された人物等の部分に一般消費者の注意が向けられ、打消し表示に一般消費者の注意が向かない

たとえば、いったん画面をストップさせ、その間に音声による打消し表示をするなど、いかなる場合でも消費者の注意が打消し表示に向くようにすることが必要です。

 (エ) 【動画広告】複数の場面で内容の異なる複数の強調表示と打消し表示が登場するか 

問題となるケース:複数の場面で内容の異なる複数の強調表示と打消し表示が登場し1回見るだけでは一般消費者にすべての打消し表示の内容が伝わらない 

複数の場面で内容の異なる複数の強調表示と打消し表示が登場する場合は、それらすべての強調表示と打消し表示を最後にまとめて表示るなど、消費者が1度見ただけで内容を理解できる表示にすることが必要です。

 Web 広告において問題となる表示方法

問題となるケース:強調表示が表示されている位置から1スクロール下に打消し表示が表示されており、一般消費者が打消し表示に気付かない

打消し表示が別の画面(1スクロール上)に表示された強調表示に対する打消し表示であると認識できないような場合、意味をなしません。

強調表示の付近に打消し表示をするなど、強調表示と打消し表示の関係性を明確にすることが必要です。

体験談を用いる打消し表示

口コミ 意見

打消し表示に関する実態調査報告書は「3 体験談を用いる場合の打消し表示」で体験談を用いる打消し表示の景品表示法上の指摘事項を定めています。

 体験談に関する景品表示法上の考え方

・打消し表示の実態調査結果から、体験談を見た一般消費者は 「『大体の人』が効果、性能を得られる」と いう認識を抱くといえる

「個 人の感想です。効果には個人差がありま す」「個人の感想です。効果を保証するも のではありません」といった打消し表示 に気づいたとしても、体験談から受ける 「『大体の人』が効果、性能を得られる」と いう認識が変容することはほとんどない。 

・広告物で商品の効果、性能等を標ぼうして いるにもかかわらず、「効果、効能を表す ものではありません」等と記載する表示は、商品の効果、性能等を標ぼうしている ことと矛盾しており、意味をなさない。

よって優良誤認となる可能性がある。

体験談及び打消し表示を用いる場合の留意点 

  • 体験談を用いる際は、体験談等を含めた表示全体から「大体の人に効果がある」と一般消費者が認識を抱くことに留意する必要があります。

たとえば実際には効果をまったく得られない者が相当数存在するにもかかわらず、商品の効果、性能等があったという体験談を表示した場合、打消し表示があっても、一般消費者は大体の人が何らかの効果、性能等を得られるという認識を抱くと考えられます。

  • 表示内容の効果は商品の使用だけでは得られず、特定の条件下(食事療法、運動療法など併用が必要、表示の効果を得られるのはBMI値が25以上の者のみなど)でしか効果が得られない場合一般消費者の誤認を招かないよう、 その旨を明瞭に表示しなければなりません。

景品表示法違反にならないためには?打消し表示の2つのポイントを紹介

解決

POINT1:調査・試験結果の内容を正確・詳細に表示する

優良誤認表示とみなされないようにするには、商品の効果、性能等に関して事業者がおこなった調査結果の内容を正確かつ詳細に表示することが重要です。

以下の項目を明記しましょう。

  1. 試験・調査の方法
  2. 被験者の人数・属性
  3. そのうち体験談と同じような効果、性能等が得られた人の割合
  4. 体験談と同じような効果、 性能等が得られなかった人の割合

このうち

3の「そのうち体験談と同じような効果、性能等が得られた人の割合」

4の「体験談と同じような効果、 性能等が得られなかった人の割合」

については必須ではありませんが、記載するのが望ましいというのが消費者の見解です。

POINT2:試験や調査は客観性・公平性が十分に確保される方法でおこなう

試験や調査は客観性・公平性が保たれた方法おこなう必要があります。

景品表示法では「不実証広告規制」と呼ばれるルールがあり消費者庁に要求されたときに、15日以内に合理的な根拠資料を提出できなければ不当表示とみなされます。

提出資料が合理的根拠とみなされるためには、客観的に実証された内容のものであることが必要です。

客観的な事実であると認められるには次のいずれかを満たす必要があります。

  1. 試験・調査によって得られた結果である
  2. 専門家・専門家団体もしくは専門機関の見解または学術文献である

不実証広告規制について詳しくはこちらの記事で解説しています。

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1、試験・調査によって得られた結果である

ひとつめは、試験・調査によって得られた結果であることです。

調査の方法・対象は統計的に客観性を確保している必要があります。

客観性を確保するためには作為が生じ得ないような配慮が必要になります。

たとえば、以下のような試験・調査は、公正性に欠くため、認めらない可能性が高いです。

  • 調査対象が関連企業や従業員の家族
  • 調査方法が会社独自のもの

消費者の体験談やモニターの意見なども、一部の個人的感想であり客観性を欠くため不可となる可能性があります。

ただし第三者機関による試験・調査でなければ客観性が認められないわけではありません

重要なのは調査や試験の結果が恣意的(作為的)なものにならないことです。客観的が担保されていれば、自社調べでも問題ありません。

2、専門家・専門家団体もしくは専門機関の見解または学術文献である

ふたつめは専門家や専門家団体、専門機関などによる見解、もしくは学術論文であることです。

ただし専門家のものであっても自説や特異な学術文献では、客観的性が担保されません。見解や学術文献は、その業界で一般的に認められている必要があります。

POINT3:見やすい場所に明りょうに表示する

お伝えしているように表示内容そのものは優良誤認とはいえないものであっても、打消し表示の位置が離れていたり、背景との区別がつきにくかったりする場合、消費者が正しく認識できず優良誤認表示となるおそれがあります。

以下のポイントを守ることが必要です。

web広告の場合

①打消し表示の大きさ(8ポイント以上)

②強調表示とのバランス

③打消し表示の配置箇所(強調表示と近接した場所(スマホでみたときにどんなに遠くても1スクロール以内))

④背景との区別(打消し表示を背景と対照的な色で記載)

動画広告の場合

⑤打消し表示の表示時間

⑥強調表示と打消し表示が同じ画面内か

⑦音声による表示の有無

⑧複数のシーンで異なる打消し表示が登場するか

打消し表示の摘発事例は増加傾向!事業者は細心の注意を

「消費者は打消し表示を、意識して読まない」事業者はこのことを常に念頭に置いて広告する必要があります。

強調表示を使う場合には、打消し表示がなくても商品サービスの内容や取引条件が正確に伝わるようなものにすることが求められます。

またやむを得ず打消し表示を用いる場合、消費者が確実に認識し、かつ理解できるよう、分かりやすく表示しなければなりません。打消し表示がらみの摘発事例は最近非常に増加しています。

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