【どこよりもわかりやすく】ステルスマーケティング規制とは?対象や対策を紹介!

2023年10月1日から「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準、いわゆるステルスマーケティング告示が指定告示(景品表示法第5条3号)に追加されました。以後ステルスマーケティングを行うと景品表示法違反となります。

今回は「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準ステルスマーケティングに関する検討会 報告書WOMJ ガイドラインを基にステルスマーケティングの規制内容や違法になるケースや事業者が講ずべき対策などについて、どこよりもわかりやすく解説していきます。規制の背景や海外の規制状況なども紹介していますので参考にしてください。

情報の信ぴょう性については

  • 日本でただ一人消費者庁に公的文書の誤りを指摘・改善させた実績
  • 景品表示法務検定(消費者庁、公正取引協議会主催)アドバンスクラス(平均合格率2.9%)所有
  • 上場企業との取引実績多数
  • 食品の適正表示推進者(東京都福祉保健局主催)
  • その他薬事法関連民間資格ひと通り(薬事法管理者資格、コスメ薬事法管理者資格、薬機法・医療法遵守認証広告代理店、美容広告管理者など)
  • 薬事広告実績9000件以上

をもつ専業5年目薬機ライターが解説しています。

目次

ステルスマーケティングについて

2023年10月1日からステルスマーケティング規制が始まりました。まずはステルスマーケティングの意味や問題点、法改正に至った背景などを紹介します。

ステルスマーケティングとは

ステルスマーケティングとは消費者に広告であることを悟られないようにおこなう、セールスプロモーションをさします。

ステルス(stealth)=隠れたの意味です。「やらせ」「サクラ」と同じように、好ましくはないものの違法とまではいえない「グレーな販促行為」として、日本ではこれまで規制はありませんでした。

ステルスマーケティングの問題点

2023年10月1日から「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準、ステルスマーケティングは違法になりました。ステマのルールを

では、そもそもステルスマーケティングはなにが問題なのでしょうか。ステルスマーケティングの問題点としては大きく次の2つが挙げられます。

  • 消費者の適正な商品選択を妨げるリスク
  • マッチングプラットフォームへの影響

①消費者の適正な商品選択を妨げるリスク

景品表示法の表示規制の目的は、消費者の適正な商品選択を守ることにあります。

その点、ステルスマーケティングは消費者の商品選択を歪めるものです。

たとえば、ある表示を「事業者の広告」として消費者が認識した場合、消費者はその内容を一定程度、”割引いて”考えます

あ~、広告か、自社に都合よく大げさに言ってるんだろうな

一方、ある表示を「事業者と関係ない人(=第三者)の自主的な意志に基づく表示」として認識した場合

消費者はその内容を”額面通りにそのまま”受け取ります。

業者と関係ない人の投稿か!大げさに言う必要性がないからきっとホントなんだろう!

実際には事業者の表示であるにもかかわらず、事業者と関係ない第三者の意見であるかのように表示した場合消費者の商品選択を歪める可能性があるわけです

②価格コムや食べログといったマッチングプラットフォームへの影響

さらに価格コムや食べログといったいわゆる「マッチングプラットフォーム」への影響もあります。

マッチングプラットフォームの情報は、消費者がいろいろな情報を取捨選択する中で一つの観点として参考にするものです。プラットフォーマー側は、消費者がニーズに合った選択ができるよう、口コミや店舗情報などを掲載しています。

しかしマッチングプラットフォームに掲載された口コミのなかに、やらせ口コミがあったらどうなるでしょうか。

画像引用:消費者庁

たとえば飲食系のマッチングプラットフォーマーA社のサイト上に、飲食店Bについて実態と乖離したやらせ口コミがあったとします。

その口コミを信用して飲食店Bを利用したお客さんは「なんだ、口コミと全然違うじゃん!A社は信用できない」となる可能性がありますよね。結果として、プラットフォーム側が信用を失うリスクがあるわけです。

口コミと全然違うじゃん!あのサイトの情報、いい加減だな…

景品表示法についてはこちらで詳しく解説しています。

ステルスマーケティング規制の背景

ステルスマーケティング告示が指定告示に追加され、正式にステルスマーケティングが違法となったわけですが、ここに至るまでには、どのような経緯があったのでしょうか。ステルスマーケティング規制が整備された背景を見ていきましょう。

ポイントは次の4つです。」

  • ステマ被害の拡大
  • 法規制の不備
  • 業界自主規制の限界
  • ステルスマーケティングに関する検討会を経て2023年10月1日にステマ規制開始

ステマ被害の拡大

ステルスマーケティグは利益が出やすいため、短期的な利益を追求し、ステルスマーケティングでの広告を望む広告主も多く存在しました。

そのため、消費者が被害を被るケースが後を絶たなかったのです。

ステルスマーケティング事例の一部を紹介します。

スクロールできます
年月事件名事件の内容補足
2001年ソニー・ピクチャーズソニー・ピクチャーズは自社映画を宣伝するため、架空の映画評論家「デビッド・マニング」の絶賛コメントを週刊誌に掲載。しかし後に、この評論家は存在せず、ソニー内部での自作自演が発覚。
2012年ペニーオークション事件落札できない仕組みのオークションサイト「ペニーオークション」が入札者から、手数料をだまし取っていた詐欺事件。ステルスマーケティングがあったことで炎上した。ステルスマーケティングが世の中に知られるきっかけとなった。
2012年食べログやらせレビュー問題飲食店が代行業者に対して報酬を支払い、自社のページに肯定的なレビューを書かせるという行為が行われた。当時、社会問題になった。
2016年には食べログ内のランキングが部分的に広告枠となっており、金額によってランキングが決定されていることが明らかになった。
2015年9月岩手放送の旅行番組岩手放送の旅行番組が大手製品メーカーから宣伝依頼を受けたヨーグルトを、番組内で宣伝表示なしに推奨した。明治の「R-1 」ヨーグルト。
2017年タレントが、自身がオーナーであることを隠して飲食店を公表タレントのグッチ裕三は、自身がオーナーであることを隠して浅草のメンチカツ店「浅草メンチ」をテレビで宣伝し問題視された。さらに、彼は自身が経営者であるカフェ「グッド フェローズ」についても「女性セブン」や「dancyu」でステマ行為をていた。
2019年12月アナと雪の女王2のやらせツイート騒動ディズニー映画「アナと雪の女王2」についてのマンガ投稿がステマ疑惑として問題視された。インフルエンサーたちはPRだったことを認め、ディズニーも謝罪声明を発表した。
同様の疑惑が「アラジン(実写版)」「アヴェンジャーズ/エンドゲーム」「キャプテン・マーベル」でもあった。関連キーワードに「ステマ」が表示されるようになり、映画作品に否定的なイメージがつくり出され、大きなダメージを受けた。
2021年笑いコンビ「ミキ」のステマ疑惑吉本興行のお笑いコンビ「ミキ」が京都市から報酬を受けながらも、宣伝であることを隠して旧Twitterで観光地を紹介する投稿をした。リツイート数が100件程度に達したものの、後に批判コメントが相次いだ。
2021年フジテレビの女性アナウンサーのステマ疑惑フジテレビの女性アナウンサーが有名な美容室や関連店で無料のネイルやマツエクなどのサービスを受け、その見返りとして店の写真をSNSにアップロードし、宣伝活動を行った。疑惑が浮上後、関連する8人の女性アナウンサーはSNSを更新をストップ。一方、フジテレビの公式ウェブサイトでは、新入社員4人による「2021年新人アナウンサー研修日誌」というブログが開始。
2021年インスタグラムのバストアップサプリのステマ騒動(※)健康食品販売会社「アシスト」と通信販売会社「アクガレージ」は豊胸効果をうたうサプリメントを販売。2社はインスタグラマーに商品を無償提供する代わりに、商品と一緒に写った写真などをインスタグラムに投稿させた。
インスタ初の摘発事例としても注目された事案。


(※)本件を”ステルスマーケティングに対する摘発”としているメディアが新聞メディアやポータルメディア含め多数存在します。
ステルスマーケティングではなく、豊胸効果を得られるかのような表示に対する優良誤認表示(5条1号)での摘発です。間違えないようにしましょう。

このほか、前述のマッチングプラットフォーマーの信頼失墜のような間接的な損害を含めれば、ステルスマーケティングによる影響は計り知れないものがあったといえるでしょう。

日本における法規制の不備

グレーゾーン

ステルスマーケティングによる甚大な影響の一方、日本ではステルスマーケティングを直接規制する法律がありませんでした。

これまで、ステルスマーケティングは次のような取り扱いだったのです。

  • 表示内容に優良誤認・有利誤認がない場合、規制はできない
  • 事業者の表示を、事業者と関係ない第三者の意見であるかのように表示すること(=ステルスマーケティグ)そのものは景品表示法上の不当表示に当たらない

2012年5月に改正された「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」では以下のように示されています。

(2) 景品表示法上の問題点 

ー(中略)ー

口コミサイトに掲載される情報は、一般的には、口コミの対象となる商品・サービスを現に購入したり利用したりしている消費者や、当該商品・サービスの購入・利用を検討している消費者によって書き込まれていると考えられる。これを前提とすれば、

ー(中略)ー

消費者による口コミ情報は景品表示法上の問題が生じることはない。

ー(中略)ー

ただし、当該「口コミ」情報が、当該事業者の商品・サービスの内容又は取引条件について、実際のもの又は競争事業者に係るものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるものである場合には、景品表示法上の不当表示として問題となる。

インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項

そのうえで「問題となる事例」として以下を例示しています。

(3)問題となる事例

グルメサイトの口コミ情報コーナーにおいて、飲食店を経営する事業者が、自らの飲食店で提供している料理について、実際には地鶏を使用していないにもかかわらず、「このお店は△□地鶏を使っているとか。さすが△□地鶏、とても美味でした。オススメです!!」と、自らの飲食店についての「口コミ」情報として、料理にあたかも地鶏を使用しているかのように表示すること

商品・サービスを提供する店舗を経営する事業者が、口コミ投稿の代行を行う事業者に依頼し、自己の供給する商品・サービスに関するサイトの口コミ情報コーナーに口コミを多数書き込ませ、口コミサイト上の評価自体を変動させて、もともと口コミサイト上で当該商品・サービスに対する好意的な評価はさほど多くなかったにもかかわらず、提供する商品・サービスの品質その他の内容について、あたかも一般消費者の多数から好意的評価を受けているかのように表示させること。

広告主が、(ブログ事業者を通じて)ブロガーに広告主が供給する商品・サービスを宣伝するブログ記事を執筆するように依頼し、依頼を受けたブロガーが、十分な根拠がないにもかかわらず、「△□、ついにゲットしました~。しみ、そばかすを予防して、ぷるぷるお肌になっちゃいます!気になる方はコチラ」と表示させること

日本ではステルスマーケティングは”好ましくはないが合法”な販促手法として長い間、まかり通っていたのです。

諸外国では、ずいぶん前からステルスマーケティングが規制されています。たとえばアメリカでは2012年からFTCガイドライン連邦取引委員会法5条で、ペルーでも行政による規制がなされています。

ECD加盟国(名目GDP上位9か国)において、ステルスマーケティングに対する規制がなかったのは日本だけだったのです。

【ステルスマーケティング規制がある国】

ベルギー、スペイン、フランス。アイルランド、イタリア、オランダ、スウェーデン、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、インド、UAE、ブラジルなど

外国企業による日本のみを対象にしたステルスマーケティング行為もあるともいわれ、対策が急がれていました。

業界の自主規制の限界

もちろん業界も、ただ手をこまねいていたわけではありません。独自の自主基準を設けていました。

たとえばクチコミマーケティングの健全な発展を目的とした「一般社団法人クチコミマーケティング協会(WOMJ)」は「WOMJ ガイドライン」を発出し、適正な広告を業界に呼びかけてきました。

しかし自主基準では違法でないものは規制できず、意図的にステルスマーケティングを行う事業者を抑止できなかったのです。

ステルスマーケティングに関する検討会を経て2023年10月1日にステマ規制開始

ステルスマーケティングによる問題が深刻化するなか、消費者庁は2022年9月から8回に渡り「ステルスマーケティングに関する検討会」を開催(第5回は弊社も傍聴)しました。

翌2023年3月28日に「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」を指定。同年10月1日から改正景品表示法を一部施行しステルスマーケティング規制がスタートしたわけです。

規制対象は「事業者の表示であることを判別することが困難な表示」

告示の対象となるのは、「事業者の表示であることを判別することが困難である表示」すなわち第三者の表示のようにに見える事業者の表示です。ではどのようなケースが第三者の表示のように見える事業者の表示にあたるのでしょうか。以下では「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準を元に、考え方を解説していきます。ポイントは以下の2つです。

  • 「事業者が自ら行う表示」か
  • 「事業者が表示内容の決定に関与」したか

POINT①「事業者が自ら行う表示」か

ステルスマーケティング規制のポイントのひとつめは、事業者が自ら行う表示かです。

ステルスマーケティング告示は、”実際には事業者の表示であるのに、第三者の表示に見える表示”を規制するものです。つまりそもそも事業者の表示に該当しない場合、規制対象とはなりません。

POINT②「事業者が表示内容の決定に関与」したか

ステルスマーケティング規制のポイントのふたつめは、事業者が表示内容の決定に関与したかです。事業者が表示の内容の決定に関与していない場合、第三者に表示を依頼したとしてもステルスマーケティング規制の対象にはなりません。詳しくは後述します。

事業者の表示とは

事業者が自ら行う表示とはどんなケースなのでしょうか。

以下のパターンについて解説しています。

  • 事業者の利害関係者(関係従業員や子会社の従業員など)が行う表示のうち一定の要件を満たすもの
  • 事業者が第三者に行わせる表示のうち一定の要件を満たすもの

①事業者の利害関係者(関係従業員や子会社の従業員など)が行う表示ののうち一定の要件を満たすもの

事業者の利害関係者(関係従業員や子会社の従業員など)が行う表示も事業者が自ら行う表示になるケースがあります。指針では以下のように示されています。

事業者が自ら行う表示について


ア 事業者が自ら行う表示には、事業者が自ら表示しているにもかかわらず第三者が表示しているかのように誤認させる表示、例えば、事業者と一定の関係性を有し、事業者と一体と認められる従業員や、事業者の子会社等の従業員が行った事業者の商品又は役務に関する表示も含まれる

一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準

事業者自身が行う完全な自作自演だけでなく関係従業員や子会社の従業員(=事業者の利害関係者)による表示も「事業者が自ら行う表示とみなされ得るわけです。

事業者が自ら行う表示とみなされるケース

ただし関係従業員や子会社の従業員(=事業者の利害関係者)による表示がすべて事業者が自ら行う表示になるわけではありません

関係従業員や子会社の従業員(=事業者の利害関係者)による表示のうち、事業者が自ら行う表示とみなされるのは、次の2点を満たすものです。

  • 商品やサービスの販売を促進することが必要とされる地位や立場にある者が
  • 商品やサービスの販売を促進するために行う表示

【関係従業員や子会社の従業員の表示のうち事業者が自ら行う表示とみなされるケース】

商品やサービスの販売を促進することが必要とされる地位や立場にある者が、その商品やサービスの販売を促進するためのに行う表示

  • 販売スタッフが一般消費者の認知度を高めることを目的に画像や文章を投稿する

    「この商品、すごくいいですよ」 と口コミサイトに投稿(販売促進・認知拡大)
  • 開発チームの一員がライバル企業の製品を誹謗中傷し、自社製品の品質・性能の優良さについて言及する

    「○○社の商品はイマイチです」とSNSに投稿(他社製品を誹謗中傷)

事業者が自ら行う表示とみなされないケース

一方、商品やサービスを販売する事業者の関係者ではあるものの、商品やサービスの販売を促進することが必要とされる地位や立場にない者が行うその商品やサービスの販売を促進する目的ではない表示は事業者が自ら行う表示とはみなされません。

【関係従業員や子会社の従業員の表示のうち事業者が自ら行う表示とみなされないケース】

商品やサービスを販売する事業者の関係者ではあるものの、商品やサービスの販売を促進することが必要とされる地位や立場にない者がその商品やサービスの販売を促進する目的ではない表示を行う場合

一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準

例えば次のようなケースではステルスマーケティングとはみなされません。

  • 化粧品会社の工場製造スタッフが、一般消費者でも入手できる情報を元に表示を行う場合

    工場製造スタッフがチラシを元に商品の製造方法について言及
    受付スタッフが「今度この商品買うんです!楽しみ~」とSNSに投稿

関係従業員や子会社の従業員(=事業者の利害関係者)による表示が事業者の表示に該当するかについては、従業員の事業者内における地位、立場、権限、担当業務、表示目的等の実態を踏まえて、総合的に判断されます。

【関係従業員や子会社の従業員による表示が事業者が自ら行うの表示に該当するかの判断基準】

以下のような実態を踏まえて、事業者が表示内容の決定に関与したかについて総合的に考慮し判断

  • 従業員の事業者内における地位、立場、権限、担当業務
  • 表示目的等

②事業者が第三者に行わせる表示のうち一定の要件を満たすもの

事業者が第三者に行わせる表示も、事業者が自ら行う表示とみなされるケースがあります。

事業者が自ら行うの表示とみなされるもの

事業者が第三者に行わせる表示のうち、事業者が自ら行う表示とみなされるものとして、指針は以下を例示しています。

【第三者に行わせる表示のうち、事業者が自ら行うの表示とみなされるもの】

  • 事業者が第三者に対して当該第三者のSNS上や口コミサイト上等に自らの商品又は役務に係る表示をさせる場合。
  • EC(電子商取引)サイトに出店する事業者が、いわゆるブローカーや自らの商品の購入者に依頼して、購入した商品について、当該ECサイトのレビューを通じて表示させる場合。
  • 事業者がアフィリエイトプログラムを用いた表示を行う際に、アフィリエイターに委託して、自らの商品又は役務について表示させる場合。
  • 事業者が他の事業者に依頼して、プラットフォーム上の口コミ投稿を通じて、自らの競合事業者の商品又は役務について、自らの商品又は役務と比較した、低い評価を表示させる場合。

事業者が自ら行う表示とみなされないもの

第三者に行わせる表示のうち、事業者が自ら行うの表示とみなされないものとして指針は以下を例示しています。

【第三者に行わせる表示のうち、事業者が自ら行うの表示とみなされないもの】

  • 第三者が事業者の商品又は役務について、SNS等に当該第三者の自主的な意思に基づく内容として表示(複数回の表示も含む。)を行う場合。
  • 事業者が第三者に対して自らの商品又は役務を無償で提供し、SNS等を通じた表示を行うことを依頼するものの、当該第三者が自主的な意思に基づく内容として表示を行う場合。
  • アフィリエイターの表示であっても、事業者と当該アフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが直接又は間接的に一切行われていないなど、アフィリエイトプログラムを利用した広告主による広告とは認められない実態にある表示を行う場合。
  • ECサイトに出店する事業者の商品を購入する第三者が、自主的な意思に基づく内容として当該ECサイトのレビュー機能を通じて、当該事業者の商品等の表示を行う場合。
  • 「気に入っているから」「好きだから」といったといった理由で、特定の商品やサービスついて自らの意思で行っている表示であることが客観的に見て明らかな場合

このように、事業者が第三者の表示に関与しているからといって、必ずしも事業者が自ら行う表示とみなされるわけではありません。では、この違いはどこにあるのでしょうか。

第三者の自由意思に基づく表示であれば、事業者が関与していても事業者自ら行う表示とみなされない

事業者が第三者の表示に関与している場合に、事業者が自ら行う表示とみなされるか(=ステルスマーケティングとなるか)の違いは、その表示が第三者の自主的な意思に基づいて書かれたものか否かです。

ステルスマーケティング告示の趣旨は、

”実際には事業者の広告であるのに、第三者の表示に見える表示は一般消費者の商品選択を歪めるよね。だから事業者の広告には広告であることをきちんと書いてね”

というものです。

つまり事業者が表示に関わっていたとしても、第三者の自主的な意思による表示内容と認められるものであれば、ステルスマーケティングとはみなされません。

第三者の自主的な意思による表示内容と認められるかは、事業者と第三者との間に事業者が第三者の表示内容を決定できる程度の関係性があるか否かによって判断されます。

事業者と第三者との間に事業者が第三者の表示内容を決定できる程度の関係性がある(=事業者の表示となる)か否かの判断要素の例

  • 第三者と事業者との間で表示内容について情報のやり取りが直接又は間接的に一切行われていないか
  • 事業者から第三者に対し、表示内容に関する依頼や指示があるか
  • 第三者の表示の前後において、事業者が第三者の表示内容に対して対価を既に提供しているか、
  • 去に対価を提供した関係性がどの程度続いていたのか
  • 今後提供することが決まっているか
  • 今後対価を提供する関係性がどの程度続くのかなど

明示的に依頼していない場合もステマとみなされる可能性がある

留意が必要なのが、第三者の自主的な意思による表示内容とは認められない場合、暗示的に表示を依頼する場合もステマとみなされる可能性がある点です。

事業者が第三者に対してある内容の表示を行うよう明示的に依頼・指示していない場合であっても、事業者と第三者との間に事業者が第三者の表示内容を決定できる程度の関係性があり、客観的な状況に基づき、第三者の表示内容について、事業者と第三者との間に第三者の自主的な意思による表示内容とは認められない関係性がある場合には、事業者が表示内容の決定に関与した表示とされ、事業者の表示となる

一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準

第三者の自主的な意思による表示内容と認められるか否かは、次のような要素から判断されることとなります。

第三者の自主的な意思による表示か否かの判断基準の例

  • 事業者と第三者との間の具体的なやり取りの態様や内容
  • メール・口頭・送付状
  • 事業者が第三者の表示に対して提供する対価の内容、その主な提供理由
  • 宣伝する目的であるかどうか。
  • 事業者と第三者の関係性の状況
  • 過去に事業者が第三者の表示に対して対価を提供していた関係性がある場合に、その関係性がどの程度続いていたのか
  • 今後、第三者の表示に対して対価を提供する関係性がどの程度続くのか

事業者が第三者に対してある内容の表示を行うよう明示的に依頼・指示していない場合であっても、事業者の表示とされる場合として、指針では以下を例示しています。

明示的に依頼・指示していない場合であっても、事業者の表示(ステルスマーケティング)とされるケースの例

  • 客観的な状況に基づき、当該表示内容が当該第三者の自主的な意思によるものとは認められない場合

    たとえば事業者がSNSなどへの口コミを投稿してもらうことを目的に商品又は役務を無償で提供し、その提供を受けた当該第三者が当該事業者の方針や内容に沿った表示を行う
  • 事業者が第三者に対して自らの商品又は役務について表示することが経済上の利益をもたらすことを暗示させる場合

「弊社は今拡散力のある人材を必要としています。結果を出してくれた人とは今後もお付き合いさせていただきたいと思っています」

遠回しに利益提供を約束しているのでステルスマーケティングになる

媒体事業者の表示は基本的に事業者の表示にはあたらない

媒体事業者の表示は基本的に事業者の表示にはあたりません。

媒体事業者(新聞・雑誌発行、放送等)が自主的な意思で企画、編集、制作した表示については、通常、事業者が表示内容の決定に関与したといえないことから、事業者の表示とはならない。

一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準


媒体事業者が自主的な意思で企画、編集、制作した表示には以下のようなものも含みます。

  • 取材活動に基づく記事の配信
  • 書評の掲載
  • 番組放送


ただし、媒体事業者の表示であっても、事業者が表示内容の決定に関与したとされる場合は、事業者の表示となる点に留意が必要です。

媒体事業者の表示内容の決定に事業者が関与したかは、取材活動等が正常な商慣習の範囲内かどうかが考慮要素となります。以下のようなケースでは媒体事業者の表示内容の決定に事業者が関与したとみなされることとなります。

【ステルスマーケティングになるもの】

  • 通常考えられる範囲の取材協力費を大きく超えるような金銭が提供されている
  • 通常考えられる範囲を超えた謝礼が支払われている

「事業者の表示であることを判別することが困難」な表示とは

ステルスマーケティング告示は、事業者の表示であるにもかかわらず、第三者の表示であると一般消費者に誤認されることを防ぐためのものです。

そのため一般消費者が表示を事業者の表示であることを判別することが困難であるかは、表示全体から判断されます。

「一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっていないもの」について運用基準は次の2通りに分類しています。

  • 事業者の表示であることが記載されていないもの
  • 事業者の表示であることが不明瞭な方法で記載されているもの

①:事業者の表示であることが記載されていないもの


事業者の表示であることが記載されていないものとして、指針では以下を例示しています。

ア 事業者の表示であることが全く記載されていない場合

イ 事業者がアフィリエイトプログラムを用いた表示を行う際に、アフィリエイトサイトに当該事業者の表示であることを記載していない場合

②:事業者の表示であることが不明瞭な方法で記載されているもの

事業者の表示であることが不明瞭な方法で記載されているものとして指針では、以下を例示しています。

【ステルスマーケティングになるもの】

  • 事業者の表示である旨について、部分的な表示しかしていない。
  • 文章の冒頭に「広告」と記載しているにもかかわらず、文中に「これは第三者として感想を記載しています。」と事業者の表示であるかどうかが分かりにくい表示をする場合。あるいは、文章の冒頭に「これは第三者としての感想を記載しています。」と記載しているにもかかわらず、文中に「広告」と記載し、事業者の表示であるかどうかが分かりにくい表示をする場合。
  • 動画において事業者の表示である旨の表示を行う際に、一般消費者が認識できないほど短い時間において当該事業者の表示であることを示す場合(長時間の動画においては、例えば、冒頭以外(動画の中間、末尾)にのみ同表示をするなど、一般消費者が認識しにくい箇所のみに表示を行う場合も含む。)。
  • 一般消費者が事業者の表示であることを認識できない文言を使用する場合。
  • 事業者の表示であることを一般消費者が視認しにくい表示の末尾の位置に表示する場合。
  • 事業者の表示である旨を周囲の文字と比較して小さく表示した結果、一般消費者が認識しにくい表示となった場合。
  • 事業者の表示である旨を、文章で表示しているものの、一般消費者が認識しにくいような表示(例えば、長文による表示、周囲の文字の大きさよりも小さい表示、他の文字より薄い色を使用した結果、一般消費者が認識しにくい表示)となる場合。
  • 事業者の表示であることを他の情報に紛れ込ませる場合(例えば、SNSの投稿において、大量のハッシュタグを付した文章の記載の中に当該事業者の表示である旨の表示を埋もれさせる場合)

「一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっている」とは

アイデア

一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっていないもの」はステルスマーケティング規制の対象になります。

では、事業者の表示であることが明瞭となっているのはどのようなケースなのでしょうか。

運用基準では以下を例示しています。

事業者の表示であることが明瞭となっていると認められる

ア「広告」、「宣伝」、「プロモーション」、「PR」といった文言による表示を行う場合
イ 「A社から商品の提供を受けて投稿している」といったような文章による表示を行う場合

一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準

ただしこれらの文言を使用していたとしても、表示内容全体から一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっていると認められない場合もあるとしています。

事業者の表示であることが明らかな場合、告示の対象とならない

ポイント

事業者の表示であることが誰が見ても明らかなものは、告示の対象とはなりません。たとえば以下のようなケースはステルスマーケティング告示の対象外となります。

【ステルスマーケティングにならないもの】

  • ア 放送におけるCMのように広告と番組が切り離されている表示を行う場合。
  • イ 番組放送や映画等において事業者の名称等をエンドロール等を通じて表示を行う場合。
  • ウ 新聞紙の広告欄のように「広告」等と記載されている表示を行う場合。
  • エ 商品又は役務の紹介自体が目的である雑誌その他の出版物における表示を行う場合。
  • オ 事業者自身のウェブサイトにおける表示を行う場合。
  • カ事業者自身のSNSのアカウントを通じた表示を行う場合。
  • キ 社会的な立場・職業等(例えば、観光大使等)から、一般消費者にとって事業者の依頼を受けて当該事業者の表示を行うことが社会通念上明らかな者を通じて、当該事業者が表示を行う場合。

自社サイトでも広告表示が必要なケースも

事業者自身のウェブサイトであっても、次のような場合には事業者の表示であることを明瞭に表示する必要があります。

  • 第三者の客観的な意見のようにみえるが実際には第三者に依頼・指示をして特定の内容の表示をさせている
  • 事業者が作成し、第三者に何らの依頼すらしていないなど

その際の表示例として指針では次のような例を挙げています。

  • 「弊社から○○先生に依頼をし、頂いたコメントを編集して掲載しています。」といった表示をする

ステルスマーケティング規制に対して事業者がとるべき対策は

解決

では、ステルスマーケティングにならないためには、どうすればよいのでしょうか。ポイントは以下の2つです。

  • 広告であることを明示する
  • 一般社団法人クチコミマーケティング協会のガイドラインを遵守する

それぞれ詳しく解説していきます。

対策①:広告であることを明記する

違う色のマッチ

事業者の表示であることが明瞭となっていれば、ステルスマーケティングとはみなされません。

そのため、第三者の表示にみえるおそれがある表示は

  • 「広告である旨」を
  • 「明りょうに」

表示する必要があります。

  • 広告です
  • タイアップ
  • PRなど

明りょうに」というのがポイントです。

例えば形式的に広告である旨を記載していても、以下のような場合、明りょうに記載しているとはみなされません。

  • 文字が見にくい(小さい、薄い、背景と同化しているなど)
  • 長い動画の冒頭部分だけに「PR」と表示
  • 動画の中盤に一瞬「タイアップ企画です」などと表示
  • 紛れ込ませる(例:Instagramのたくさんの「#」のうちのひとつに「#PR」と表示)

広告であることを表示するための文言として、ステルスマーケティングに関する検討会 報告書では以下の表現が例示されています。

  • 「広告」
  • 「宣伝」
  • 「プロモーション」
  • 「PR」
  • 「A社から商品の提供を受けて投稿している」等

ただし形式的に文言を使用していたとしても、一般消費者が認識しにくい表記をしている場合、ステルスマーケティングとみなされることがあります。


  • 他の文字と比較して小さく表示
  • SNSの投稿において、大量のハッシュタグのなかに「#PR」と表記
  • 他の文字より薄い色を使用

(イ)一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっているものについて
一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっていると認められるためには、一般消費者にとって、表示内容全体から分かりやすい表示となっている必要がある。

一般消費者にとって分かりやすい表示の例としては、例えば、「広告」、「宣伝」、「プロモーション」、「PR」といった文言を使用することが考えられる。
・ただし、上記文言は例示であり、上記文言を使用していたとしても、表示内容全体から判断して一般消費者にとって事業者の表示であると認められない場合もあり得ることに留意することが必要。
・当該商品又は当該役務を購入しようとする一般消費者にとって、事業者の表示であることが分かりやすいものとなっている必要がある。
・また、例えば、「A社から商品の提供を受けて投稿している」といったような表示も考えられる

ステルスマーケティングに関する検討会 報告書

対策②:一般社団法人クチコミマーケティング協会のガイドラインを遵守する

画像出典:一般社団法人クチコミマーケティング協会

一般社団法人クチコミマーケティング協会が発出しているWOMJガイドラインと呼ばれる指針があります。

公的な文書ではありませんが、WOMJガイドラインに沿って表記をおこなえばステルスマーケティングとはみなされないとされています。一般社団法人クチコミマーケティング協会(WOMJ)運営委員会委員長の藤崎実氏は次のように発言しています。

「WOMJガイドライン」は、従来通り業界団体による自主規制のガイドラインであり、法的な効力はありません。

(中略)

しかし、景表法の法規制の内容を踏まえて策定されたガイドラインです。今までのガイドラインとは、その重みが異なります。

なお、新ガイドライン策定の議論では、このガイドラインを守れば、ステマにならない”というわかりやすい基準を示すことが重視されました。従って、景表法の指定告示や運用基準より厳しい内容になっている点に特徴があります。

一般社団法人クチコミマーケティング協会(WOMJ)運営委員会委員長 藤崎実|ADTIMES

ステルスマーケティング規制がついにスタート|対策が急務

2023年10月1日からステルスマーケティング規制が始まりました。事業者には早急な対応が求められます。

ポイントは第三者の自主的な意志に基づく表示か、事業者の表示かです。

ただしまだまだ詳細は決まっていない部分も多いです。

  • 「事業者が内容の決定に関与した」とされるライン
  • 対価が一切支払われない場合の扱いなど

今後運用指針が出されていくでしょう。

消費者庁の見解では『デジタル領域における表示は、技術の進歩等の変化が速く、現時点では想定しきれない新たな手法が将来的には生じることが考えられるため、取引の実態や社会経済情勢 の変化に合わせて運用基準の明確化 を図っていく』とのことです。

好かれて売れる薬機法ライターならLife-lighterでは、日本でただ一人消費者庁の公的文書の誤りを指摘・改善させた実績をもち、消費者庁と公正取引協議会の資格「景品表示法務検定」のアドバンスクラスを取得済(合格者番号APR22000 32)の専業薬機法ライターが広告法務をサポートしています。

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