「半額セール」と強調表示をしたいが、半額でないものもある。この場合、半額セールをキャッチにすることは可能か。これは実際にクライアント様からいただいたご相談内容です。
今回は例外がある場合の強調表示の考え方を
- 打消し表示に関する実態調査報告書
- スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書
- 広告表示に接する消費者の視線に関する実態調査報告
などに基づき解説していきます。なお情報の信ぴょう性については
消費者庁発出の公的文書の誤りを指摘・改善させた実績があり
景品表示法務検定アドバンス(消費者庁、公正取引協議会主催)
食品の適正表示推進者(東京都福祉保健局主催)など
を所有する専業薬機ライターが解説しますのでご安心ください。
「打消し表示」を大きく表示すれば可能
結論からいうと、例外がある場合に強調表示をすることは不可能ではありません。ただし、「一部セール対象外」などの例外を示す表示(=打消し表示)を半額セールのキャッチと同じくらい大きく表示することが必要になります。
打消し表示のルール
打消し表示の考え方を深く理解するために、現在のルール「打消し表示は強調表示と同じくらい目立つように表示しなければならない」がどのようにして決まったのか、時系列で見てみましょう。
2008年6月「見えにくい表示に関する実態調査報告書―打消し表示の在り方を中心に―」公表
2007年6月、公正取引委員会(現消費者庁)は消費者モニター及び消費者取引適正化推進員のうち、50 歳以上の消費者モニター445 人を対象に打消し表示に関するアンケート調査を実施しました。
内容は調査対象者に「見づらい表示」「読みにくい表示」がなされている表示物の収集を依頼し、同時にどの部分を見にくいと思ったのか、なぜ見づらい、読みにくいと感じたのかについて意見を聞くものです。調査結果に基づき、2008年6月13日に公正取引委員会は打消し表示の景品表示法上の考え方についてまとめた「見えにくい表示に関する実態調査報告書―打消し表示の在り方を中心に―」を公表します。
この段階では、打消し表示は文字サイズを8ポイント以上にすれば問題ないとされていました。
当時はスマートフォンはおろかパソコンも一般には普及しておらず、「文字サイズを8ポイント以上」とする取り決めだけで十分だったのです。(調査で見づらい、読みにくいと感じたとの回答が最も多かったのが新聞折込(56.2%)、次いで新聞広告(23.0%)でした)
この調査報告書は中高年の消費モニターを対象になされたものでしたが、より幅広い年代の消費者を対象とした調査について、2017年7月14日に「打消し表示に関する実態調査報告書」を公表しました。
2018年5月「スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書」を公表
2016年頃からスマートフォンの普及が進み、パソコンは持っていないがスマホは持っているといった消費者が増加します。そうしたなかスマホでの広告に特有の問題点が出てきました。
ex.
- スマートフォンなどのモバイル端末はディスプレイそのものが小さく、読みにくい(特に中高年の消費者は見落とすケースが多い)
- 動画広告では打消し表示の大きく表示されていても、画面が切り替わるまで時間が短いと認識できない
つまりスマートフォンの普及や広告態様の変化などにより、「打消し表示の文字サイズが8ポイント以上であれば全部OK」では消費者を守りきれなくなってきたわけです。
そこで消費者庁はスマホに関する打消し表示の調査をおこないました。その結果に基づき2018年5月16日に景品表示法上の考え方や求められる表示方法等を整理した「スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書」を公表します。
2018年6月「広告表示に接する消費者の視線に関する実態調査報告」打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点(実態調査報告書のまとめ)」公表
その後消費者庁は、科学的に消費者の視線を分析するアイトラッキング機器を用いた調査を実施しました。広告媒体が動画へと移りつつあることなどを踏まえてのことです。
その結果に基づき2018年6月7日に「広告表示に接する消費者の視線に関する実態調査報告書」を公表。同日に「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点(実態調査報告書のまとめ)」を発出します。
現在は打消し表示は強調表示と同じくらい目立つように書かなければならない
現在では「キャッチコピーと打消し表示は同じくらい目立つように書かなければならない」とされています。
ただし場合によっては倫理上の問題が生じる
つまり半額対象外のものがあるケースでも強調表示と同じくらいの大きさで打消し表示をつければ、違法とはなりません。とはいえ、打消し表示は例外的といえる範囲についてのみ指すべきです。
例外がいくつもある場合、そもそも「すべて半額」とキャッチを打つことが妥当かどうかを考える必要があるでしょう。ことによってはクレームにつながりかねません。
過去の販売価格と比較する場合打消し表示だけでは不十分
打消し表示と強調表示の関係とは別の問題として、以下のように過去の販売価格を用いる場合、一定の要件を満たす必要があります。
- 「当店定価〇〇」今なら〇〇円
- 「
〇〇円」→期間限定〇〇円
たとえば、最近相当期間にわたって販売されていた価格(最近相当期間価格)であることが求められます。
過去の販売価格を比較対照価格に用いる二重価格表示の考え方について、こちらで詳しく解説しています。
ルールを守ってクリーンな広告を
強調表示と打消し表示は同じくらい目立つように書かなければならないとされています。
打消し表示に関するルールはあくまでも指針です。法的拘束力はなく、守らなければそれだけで罰則を科されるものではありません。ただ、行政に与えるイメージが悪くなります。つまり他にグレーな箇所があった場合、打消し表示のルールを守っていれば摘発されないが、守っていなければ摘発となるといったケースがあり得るということです。摘発リスクを下げるためにも、クリーンな広告に徹することが需要です。