薄毛ケアを始めるとき、多くの人が最初に試すのが「育毛剤」です。しかしその種類は多く、「どれを選べばいいかわからない」と悩んでしまう方もいるかもしれません。選び方を間違えると、薄毛が改善するどころか悪化してしまうこともあります。しかし、ご安心ください。たった5つポイントを知っておくだけで、そのような事態は避けることが可能です。
本稿では失敗しない育毛剤の選び方についてご紹介します。
そもそも育毛剤とは?発毛剤や養毛剤とどう違う?

薄毛ケアアイテムにも
- 育毛剤
- 発毛剤
- 発毛促進剤
- 養毛剤
など種類があり、それぞれ目的が異なります。薄毛対策を成功させるにはまず、ヘアケア商品の分類とそれぞれの違いを把握しておくことが肝心です。
育毛剤:血行促進や栄養補給などで頭皮環境を整え毛の発育を促す

育毛剤は頭皮環境を整え、髪の毛を強く太く育てることを目的とするものです。誤認されがちですが、育毛剤には発毛作用はありません。
そのほとんどが医薬部外品である育毛剤は、医薬品に比べて効果はマイルドで、副作用リスクも低い傾向にあります。
発毛促進剤:栄養補給や血行促進などで髪の成長機能を高める

発毛促進剤は育毛剤のうち、第二類医薬品・第三類医薬品に分類されるものです。栄養補給や血行促進などにより髪本来の成長機能を高める作用を持ちます。
あくまで育毛を目的としたもので発毛効果はありません。
発毛剤:毛母細胞に働きかけて発毛を促す

発毛剤は新しい毛を生やす「発毛効果」が認められている医薬品です。毛母細胞に働きかけて発毛を促します。
発毛剤には内服薬と外用薬があり、いずれも医薬品のため医師の処方もしくは薬剤師のいる薬局でしか買うことができません。高い効果が期待できる反面副作用のリスクがあり、未成年の使用が禁じられています。
現在、日本で市販の医薬品として認められているのは、発毛成分としての「ミノキシジル」を含んだ外用薬のみです。
養毛剤:頭皮や髪に栄養を与え、頭皮を健康に保つ

養毛材は頭皮や髪に栄養を与え、健康な状態に保つものです。頭皮のコンディションを整えることを目的とし、薬機法上は化粧品に分類されます。ヘアトニックとも呼ばれ、頭皮の保湿、抗菌、抗炎症、ターンオーバー促進などが期待できます。
生えている毛に働きかける点では育毛剤と同じですが、効果は育毛剤よりも穏やかです。
効果は「発毛剤」>「育毛剤」>「発毛促進剤」>「養毛剤」となります。
あなたに必要なのは育毛剤?発毛剤?薄毛のレベルによって選ぶべきアイテムは異なる

育毛剤選びに入る前に、あなたの薄毛の進行度合いを知っておく必要があります。たとえばAGA(男性型脱毛症)などで既に毛が無い状態なら、選択肢は発毛剤一択です。育毛剤が有効なのは軽度の薄毛であり、進行した薄毛に対しては効果が期待できません。
1脱毛レベル(発毛剤がおすすめ)
- 頭皮の地肌が見えてしまっている
- 生え際がかなり後退している
かなり薄毛が進行している状態です。AGAの症状が進んでたり、地肌が見えてしまっているといった重度の薄毛には育毛剤では太刀打ちできません。育毛剤ではなく発毛剤の使用がおすすめです。
2薄毛レベル(育毛剤・発毛剤がおすすめ)
- 毛が薄くなってきた
- 髪にボリュームがない
「ややおでこが広くなったかな?」「なんだか最近ボリュームがなくなってきた」と感じるレベルです。育毛剤を使って頭皮に栄養を与えケアしたり、発毛剤で発毛を促してあげましょう。
3軟毛・細毛レベル(育毛剤がおすすめ)
- 毛はあるが細く・柔らかい毛が増えてきた
- 全体的に細く短い毛ばかり
はっきりと「薄毛になった」「はげてきた」とは感じられないものの、細くて短い、柔らかい髪の毛が増えてきた状態です。
育毛剤で頭皮環境を整え、髪の土台作りをして薄毛の進行を止めてあげましょう。
4頭皮トラブルレベル(養毛剤・ヘアトニックがおすすめ)
- 頭皮が油っぽくなっている
- 痒みがある
- フケが出る
頭皮がギトギト油ギッシュになってきたり、逆にカサついてフケがでてきたり痒みをもよおしたりと、頭皮にトラブルが起きている状態です。
ただちに育毛剤を使う必要はありませんが、薄毛予備軍ともいえる段階で、放置していると薄毛になる可能性があります。
ヘアトニックやスカルプケア商品で頭皮環境のケアを始めるのがおすすめです。
押さえておきたい!失敗しない育毛剤の選び方

ここからは育毛剤が適していると分かった人に向けて、育毛剤の選び方について解説していきます。
原則1:薄毛の原因を知る

育毛剤は薄毛や抜け毛の原因に合わせて選ぶ必要がありますが、薄毛や抜け毛の原因は人によって異なります。
まずは原因を知ることが肝心です。薄毛の原因にはたとえば以下のものが挙げられます。
- AGA
- 睡眠不足
- 偏った食生活
- 運動不足
- ストレス
- 喫煙
- 遺伝
AGA

薄毛に悩む男性の9割以上が、AGA(男性型脱毛症)といわれています。AGAの発症に深く関係するのは、GHT(ジヒドロテストステロン)と呼ばれる悪玉男性ホルモンです。
毛髪は伸びては抜け、伸びては抜けを繰り返しています。この生え換わりの周期をヘアサイクルと呼び、「成長期」「退行期」「休止期」に分かれます。
・成長期 毛母細胞が分裂を繰り返す
・退行期 細胞の活動が弱まり、毛乳頭や毛母細胞の増殖スピードが落ちる
・休止期 完全に髪の成長が止まる
GHT(ジヒドロテストステロン)の影響でこのヘアサイクルが乱れることにより、徐々に薄毛になるとされてます。
睡眠不足

睡眠時間がたりないと髪の成長に必要な成長ホルモンが分泌されず薄毛の原因になるといわれています。注意したいのが、睡眠時間が長ければいいわけではない点です。睡眠は長さよりも質が大切です。
偏った食生活

栄養バランスが偏った食事ばかりしていると、育毛に必要な栄養分が頭皮に届きません。
結果として薄毛になってしまうことがあります。
運動不足

運動不足は血行不良に繋がります。
血行不良になると育毛に必要な栄養分が頭皮に届かず、結果的に髪の毛の成長が妨げられてしまうことになります。
ストレス
ストレスがたまると血行不良を起こし、毛が育ちにくくなります。
また自律神経が乱れることで汗や皮脂が過剰に分泌され、毛穴が詰まりやすくなり結果として薄毛に繋がる可能性があります。
喫煙

近年喫煙と薄毛との関係が指摘されています。
タバコに含まれるニコチンには、血管を収縮させる作用があり、血行不良を起こすことで薄毛に繋がるといわれています。
また喫煙は自律神経の乱れを引き起こし、脱毛の原因になる可能性があります。
遺伝
遺伝も大きな要因です。
男性ホルモンが過剰に分泌されることで薄毛・抜け毛を引き起こすとされています。
お父さんやおじいちゃんが薄毛の方は、遺伝的要素が関係している可能性があります。
原則2:育毛剤の種類を知る

育毛剤の種類は大きく分けて、以下の3つがあります
- 血行を良くするタイプ
- 男性ホルモンの働きを抑制するタイプ
- 毛母細胞に栄養を補給するタイプ
薄毛の原因に合わせて選ぶことが大切です。
運動不足の人は血行を促進するタイプ、一人暮らしで栄養が偏りがちな人や食生活が乱れている人は栄養を補給するタイプがおすすめでしょう。お父さんやおじいちゃんが薄毛の場合、遺伝的要因が影響している可能性が高いので男性ホルモンの働きを抑制するタイプが良いかもしれません。
原則3:女性は女性向けの育毛剤を
ひと昔前までは薄毛といえば男性の悩みとのイメージが一般的でした。しかし近年では女性の薄毛が取りあげられることも増えてきました。女性が育毛剤を使う際は。必ず女性用の育毛剤を使いましょう。
女性が男性用の育毛剤を使うと思わぬ重篤な健康被害が生じることもあるためです。
たとえばミノキシジルは女性でも使用できますが、推奨配合量が異なります。「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017版」ではミノキシジルに関して男性は5%、女性は1%の配合量のものが推奨されています。
育毛剤の選択基準1:育毛剤の成分

育毛剤は含まれる成分やその量によって効果に差がでるので、成分は重要な評価ポイントです。外箱に記載された成分表示をチェックしましょう。育毛剤の成分表示は【有効成分】【その他の成分】というように分けて表記されています。
育毛剤に含まれる代表な有効成分は以下の通りです。
- ミノキシジル
- リデンシル
- キャピキシル
- M-034
【ミノキシジル】
厚生労働省に発毛効果が認められた成分です。
薄毛への効果が立証されていて、多くの発毛剤に用いられます。
頭皮の血管を拡張させ頭皮に十分な栄養分を送りこむことで発毛・育毛を促進します。
ただミノキシジルには副作用も認められていて場合によっては注意が必要かもしれません。
国内の市販発毛剤は、「1%」と「5%」が販売されています。選ぶ際の目安は以下の通りです。
・ミノキシジル1%の発毛剤
▶副作用の心配がある、軽度の薄毛の人向き
・ミノキシジル5%の発毛剤
▶副作用の心配がない、深刻な薄毛の人向き
【ミノキシジルの働き】
・毛母細胞を活性化し、発毛・育毛促進因子を増加させる
・血管を拡張する
【リデンシル】
休止期の髪を減らし抜け毛を防ぎます。
リデンシルの薄毛への効果はミノキシジルの2倍に及ぶとする臨床結果が出ており、育毛効果の高さが評価されています。
【リデンシルの働き】
・ヘアサイクルの正常化を促す
・休止期の髪を減らし抜け毛を防ぐ
【キャピキシル】
カナダで開発された育毛成分です。
カナダの化粧品関連会社「Lucas Meyer Cosmetics」が販売しています。
ミノキシジルと比べて3倍の効果があるといわれ、期待が寄せられています。
現段階では副作用は確認されていません。
【キャピキシルの働き】
・抜け毛を減らす
・髪の毛の成長を促す
・毛包の固定を促す
・頭皮の炎症を軽減する
【M-034】
藻のネバネバに含まれる成分の一種で、育毛に対して高い効能があるとされています。
M-034はミノキシジルと同等の効果があると言われており、ミノキシジルと同様に厚生労働省から認可が下りています。
天然の海藻から抽出されたエキスで作られているため副作用も少ないのが特徴です。
【M-034の働き】
・抜け毛を減らす
・髪の毛の成長を促す
育毛剤の選択基準2:添加物の有無

添加物には刺激性のものがあり、肌トラブルの原因になることがあります。肌が弱い人は要確認です。
添加物は【その他成分】の欄に記載されています。育毛剤に含まれる添加物の内、代表的なものを押さえておきましょう。
- アルコール成分
- 香料
- 合成着色料
- 防腐剤
- 酸化防止剤
- 合成ポリマー
- 界面活性剤
- 鉱物油
【アルコール成分】
アルコール成分は殺菌・抗菌、成分の分離防止、血行促進などを目的に配合されます。
アルコール濃度が高いと、頭皮を守る「常在菌」が失われ、頭皮が乾燥したり、髪が傷む可能性があります。肌が弱い人、敏感肌の人はアルコール濃度が低いものがおすすめです。
「アルコール濃度○○%」と表記されている場合もありますがエタノール類の濃度は記載義務がないため、表記されていないことが多いです。
表記されていない場合は、エタノール類が成分表示の後ろの方に記載されている商品を選ぶようにしましょう。成分表示は含有量が多い順に記載することになっているからです。
成分表示には「アルコール」ではなく「エタノール」や「無水エタノール」と表記されています。
【香料】

香りつけのために香料が使われることがあります。香料は植物を原料とした「植物性天然香料」と化学処理を施した「合成香料」に分けられます。
- 天然香料…植物を原料としたもの
- 合成香料…主成分のみ抽出したもの、または化学処理を施したもの
ごく稀に皮膚に炎症を起こすケースがありますが、過剰に気にする必要はありません。アレルギー体質や敏感肌の方など、心配な場合は香料不使用のものを選ぶといいでしょう。
【合成着色料】

色を付けるため添加物です。
タール系の着色料は、かぶれやかゆみなどの皮膚炎や、色素沈着(皮膚の色が色素によって濃くなる症状)を引き起こすおそれがあります。
赤色2号、黄色5号など「〇色○○号」と表記されます。
【防腐剤】
雑菌が繁殖するのを防ぐ目的で配合されます。
育毛剤によるかぶれなどのトラブルの多くが防腐剤ともいわれ、アレルギー反応を起こしやすい添加物です。
「パラベンフリー」「防腐剤不使用」などと表記されていれば、危険な防腐剤は使用されていません。
・安息香酸
・安息香酸Na
・サリチル酸(殺菌剤)
・サリチル酸Na
・パラベン
・水酸化K
・デヒドロ酢酸Na
・ヒノキチオール
・フェノキシエタノール
【酸化防止剤】
育毛剤の成分が空気に触れると変質し、皮膚炎やかゆみなどの肌トラブルを誘発したり悪臭を発生させたりします。それを防ぐために用いられるのが酸化防止剤です。
酸化防止剤には肌荒れなどのトラブルを起こすリスクがあります。
・dl-α-トコフェロール
・トコフェロール
・クエン酸
このうち、
・トコフェロール
・クエン酸
は植物性です。植物性の酸化防止剤は健康に与える影響がほとんどないといわれています。
【合成ポリマー】

液剤にとろみを出す目的で配合されます。
粘着性の高い合成ポリマーは毛穴を密閉し、頭皮環境を悪化させるため薄毛を悪化させる要因になり得ます。
・アクリル酸~ / メタクリル酸~、AMP
・加水分解コラーゲン
・カルボマー
・シロキサン
・セルロース
【界面活性剤】

育毛剤成分には水と油が含まれます。「あの二人は水と油だ」などといいますが、本来混ざることのない水と油を馴染ませるのが「界面活性剤」です。
界面に作用して、性質を変化させます。「界面活性剤=有害なもの」とのイメージが持たれがちですが、育毛剤に使われるのは低刺激なものがほとんどです。過度に心配する必要はないでしょう。
・キサンタンガム
・~オキシド
・~DEA / ~MEA
・~ベタイン
【鉱物油】
鉱物に属する石油から得られる油です。皮膚に油膜でカバーし、水分の蒸散を防ぐ目的で配合されることがあります。
鉱物油は毛穴を塞ぐので頭皮環境を悪化させ、薄毛を引き起こす恐れがあります。
とはいえ、さほど気にする必要はありません。精製技術が今ほど発達していなかった頃は不純物を多く含む化粧品が出回り、鉱物湯=有害とされていましたが、最近では精製度も高くなっているからです。
・ミネラルオイル
・ポリブテン
・スクワラン
・スクワレン
育毛剤の選択基準3:価格

育毛剤の効果を得るには継続的な使用が必須です。
「2本目が欲しいけど、出費がキツい」となってしまわないいよう、リピート購入できる価格帯であることも確認しましょう。
購入後には香りや使用感をチェック

どんなに吟味して選んでも、買った後になって
- 「サラサラすぎてうまく使えない」
- 「スースーしすぎて苦手」
- 「においが気になる」
など不満が出てくる可能性はあります。使用感をチェックし、香りや爽快感が合わないと感じたら無理をして使い続けるのではなく、別のものに切り替えましょう。
自分に合ったものでないと継続して使用できず、結果効果も得られなくなってしまいます。「せっかく買ったのに」と思う気持ちもわかりますが、合っていないと思ったら潔く使用を中止し、新しく育毛剤を購入する心構えが肝心です。
育毛剤を使用するときの注意点

用法用量を守る
用法用量をきちんと守らないと、十分な効果が得られないことがあります。使い方はもちろん保管方法や注意事項など細かな点も記載されている場合があるので、説明書は最初から最後までキチンと読みたいところです。
肌トラブルが現れたら使用を中断する
効果が高い育毛剤ほど、副作用も強く、肌トラブルを引き起こすケースがあります。
赤味、はれ、かゆみ、刺激、色抜け(白斑等)や黒ずみといった異常が現れたら即刻使用を中止し、医師に相談しましょう。
他の育毛剤と併用しない
育毛剤は単体で効果が出るよう成分が調合されています。
「朝用と夜用で2種類使っているよ」
といった方がたまにおられますが、これはNGです。他の育毛剤と併用しても効果は高まりません。それどころか成分同士が競合して効果が下がる危険性もあります。
他の育毛剤との併用は避けるようにしてください。
育毛剤は自分に合ったものを選ぶことが大切

育毛剤は高いものでは数万円する場合もあります。しかし必ずしも、価格が高い=良い育毛剤ではありません。もちろん高い育毛剤には、有効成分が多く含まれているものもありますが宣伝費が上乗せされているケースもあるからです。育毛剤選びで肝心なのは、自分に合ったものを選ぶことです。
コメント