2024年10月1日にスタートする「確約手続」とは?手続きの流れや認定要件などを詳しく解説

2024年10月1日より、改正景品表示法が全面施行されます。本改正は課徴金割増規定や直罰規定の新設など複数の変更を含みますが、なかでも注目されているのが、「確約手続」です。こちらの記事では確約手続とはなにか、手続きの流れや認定要件、利用できないケースや確約計画の例まで詳しく解説します。

情報の信ぴょう性については

  • 日本でただ一人消費者庁に公的文書の誤りを指摘・改善させた実績
  • 消費者庁及び公正取引協議会主催「景品表示法務検定」アドバンス(合格者番号APR22000 32)
  • ハウス食品、エーザイ、NTTDoCoMo、徳間書店など上場企業との取引実績多数
  • 東京都福祉保健局主催「食品の適正表示推進者」
  • 民間企業主催の薬事法関連資格(薬事法管理者資格、コスメ薬事法管理者資格、薬機法・医療法遵守認証広告代理店、美容広告管理者など)
  • わかさ生活に薬機法広告の専門家としてインタビューを受ける

をもつ専業薬機ライターが解説します。

  • 景品表示法本文
  • 確約手続に関する運用基準

などを基に解説していきます。

目次

確約手続とは

確約手続とは、違反行為(優良誤認表示と有利誤認表示)をしても、表示示の是正計画を事業社自ら内閣総理大臣に申請をし、認められた場合、措置命令や課徴金納付命令を受けないことにする制度です。2024年10月1日より、改正景品表示法が全面施行されますが、この「確約手続」はなかでも注目されています。独占禁止法などではすでに導入されている制度です。

確約手続の流れ

画像引用:消費者庁資料

確約手続通知

一定の要件(後述)を満たした場合、景品表示法違反が疑われる行為の概要や法令の条項等が通知(確約手続通知)されます。

確約計画の作成・申請

確約手続通知を受けたら、事業者が消費者庁長官へ確約計画を作成・申請します。

確約計画の申請は、通知を受けてから60日以内に行う必要があります。

(60日以内に申請しなかった場合通常の手続きに移行します)

確約手続の認定・公表

認定基準(後述)をクリアした場合、確約計画が認定され消費者庁のHPで公表されます。

(クリアしなかった場合、却下され、通常の手続きに移行します)

確約計画の履行状況の報告

確約計画の履行状況を報告しなければなりません。

(確約計画の履行状況を報告しないときや、認定を受けた確約計画に従って確約計画が実施されていないときなどは取消となり通常の手続きに移行します)

措置命令・課徴金納付命令が行われない

確約計画が認定を受けた確約計画に従って実施されていると見なされれば、措置命令や課徴金納付命令が行われません。

消費者庁のHPに社名も記載される

確約手続が認定された場合、確約計画が消費者庁のHPに掲載されるわけですが、その際一緒に事業者名も掲載されることになります。

消費者庁担当者によると、手続きの透明性の確保の観点から、事業者名を公表することにしたとのことです。しかし社名が公表された場合、一般の消費者に「不正をした会社」との印象を与えてしまいます。

つまり社会的制裁を受けることになり、措置命令を下されるのと実質的に変わりません

実際、改正前のパブリックコメントでも、社名が公表されるのであれば社会的な信用に傷がつくので措置命令を受けるのと大差ないのでは、との意見がありました。

これに関して消費者庁は、「違反を認定した事業者ではないことを併せて記載することでバランスをとる」としています。

ただいくら違反を認定した事業者でないことを併記しても、社名が公表される以上、ブランド価値が棄損されることは避けられないでしょう。

確約計画が認定されるための要件は?確約措置の具体例とともに解説

では、確約計画が認定されるにはどのようなことが必要なのでしょうか。確約計画の認定要件や確約措置について見ていきましょう。

確約計画の認定の要件 (法第27条第3項・第31条第3項)

確約手続に関する運用基準では確約手続が認定されるための要件として「措置内容の十分性」と「措置実施の確実性」を掲げています。

確約措置が認定されるためには「措置内容の十分性」と「措置実施の確実性」の両方を満たさなくてはなりません。

  • 措置内容の十分性……違反行為(不当表示など)の改善と、違反行為による影響(消費者被害・社会的影響など)の是正をするのに十分なものであること
  • 措置実施の確実性……確実に実施される見込みがあること

措置内容の十分性

では「措置内容の十分性」は、どのようなケースで満たされるのでしょうか。確約手続に関する運用基準では以下のとおりに示しています。

「(ア) 措置内容の十分性

 (中略)確約措置が措置内容の十分性を満たしているか否かについて、(中略)過去に法的措置で違反行為が認定された事案等のうち、行為の概要、適用条項等について、確約手続通知の書面に記載した内容と一定程度合致すると考えられる事案の措置の内容を参考にする。 (確約手続に関する運用基準6⑶ア)

措置内容の十分性の判断について、「過去に法的措置で違反行為が認定された事案等のうち、行為の概要、適用条項等について確約手続通知の書面に記載した内容と一定程度合致すると考えられる事案の措置の内容を参考にする。 」とあります。

つまり少なくとも過去の類似ケースで命じられた措置と同等の措置を講じなければなりません。

措置実施の確実性

「措置実施の確実性」については、確約手続に関する運用基準では以下のように示しています。

(イ) 措置実施の確実性

「 措置内容の十分性を満たしても、確約措置が実施されないのであれば、違反被疑行為等を是正することはできない。よって、消費者庁は、確約措置が実施期限内に確実に実施されると判断できなければ、確約計画の認定をすることはない。(確約手続に関する運用基準6⑶イ)

確約措置が実施期限内に確実に実施されることが必要です。

確約措置の典型例

では、具体的にはどのような措置が「措置内容の十分性」と「措置実施の確実性」の両方を満たす措置と見なされるのでしょうか。

確約手続に関する運用基準では、確約手続の典型例として以下を列挙しています。

  1. 違反被疑行為を取りやめること(必須)
  2. 一般消費者への周知徹底(必須)
  3. 違反被疑行為及び同種の行為が再び行われることを防止するための措置(必須)
  4. 履行状況の報告(必須)
  5. 一般消費者への被害回復(重要な事情として考慮される措置)
  6. 契約変更(有益な措置)
  7. 取引条件の変更 (有益な措置)

①違反被疑行為を取りやめること(必須)

ストップの標識

違反が疑われる行為を継続している場合には、それを取りやめる措置です。違反被疑行為の取りやめは必ず確約手続に定めなければなりません。(確約手続に関する運用基準6(3)イ(ア))。

②一般消費者への周知徹底(必須)

一般消費者を誤認させないように違反行為の内容について一般消費者へ周知徹底する措置です。一般消費者への周知徹底も、必ず確約手続に定めなければなりません(確約手続に関する運用基準6(3)イ(イ))。

一般消費者への周知徹底の具体例

  • 自社HPに違反行為の内容について記載
  • 新聞で違反行為の内容について告知

③違反被疑行為及び同種の行為が再び行われることを防止するための措置(必須)

法律

再び違反行為が行われることを防止するために、コンプライアンス体制の整備違反内容について事業者の役員及び従業員に周知徹底をする措置です。(確約手続に関する運用基準6(3)イ(ウ))

違反被疑行為及び同種の行為が再び行われることを防止するための措置も、必ず確約手続に定めなければなりません。

コンプライアンス体制の整備の具体例としては次のようなものがあります。

コンプライアンス体制の整備の具体例

  • 景品表示法の考え方の周知・啓発 (景品表示法についての研修、勉強会の開催など)
  • 法令遵守の方針等の明確化(社内規範に法令遵守方針を定める、マニュアルを作成する)
  • 表示等に関する情報の共有(各部門間で、表示等の内容と実際の商品・サービスを照合するなど)
  • 景品表示法の知識を有する「表示管理担当」の設置

    事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針(平成 26 年内閣府告示第 276 号)より

④履行状況の報告(必須)

確約計画を確実に実施するため、履行状況を消費者庁に報告する措置です(確約手続に関する運用基準6(3)イ(エ)。履行状況の報告も確約手続に必ず含めなければなりません。

報告は事業者自ら、または第三者が行います。

この場合の第三者とは過去に取引のない弁護士等、事業者と利害関係にない者が想定されます。

⑤一般消費者への被害回復(重要な事情として考慮される措置)

不当表示などがあった商品を購入した消費者に対して、返金する措置です。

一般消費者への被害回復は「措置内容の十分性」を満たすために有益であり、重要な事情として考慮されます(確約手続に関する運用基準6(3)イ(オ))。

ただし課徴金制度における返金措置と異なり、現金に限られます。また返金の方法や受付期間、周知期間等が適切でない場合には、「措置内容の確実性」を満たしません(確約手続に関する運用基準6(3)イ)。

⑥契約変更(有益な措置)

不当表示などが起こった要因が、取引先にもある場合、取引先を変更したり、取引先との 契約内容(委託業務の内容等)を変更したりする措置です。

契約変更は「措置内容の十分性」を満たすために有益な場合があります(確約手続に関する運用基準6(3)イ(カ))。

⑦取引条件の変更 (有益な措置)

 取引条件を変更する措置です。

通常、不当表示の是正措置は「表示内容」を実態に合うように変更します。

たとえば「○○の実績1位です」と表示していたがそれが事実と異なっていたとして優良誤認の措置命令を受けた場合、「○○の実績1位です」の表示を改善します。

  • 「○○の実績1位です」の表示を削除する
  • 「○○の実績が豊富です」と変更する

他方、取引条件が実態と異なる不当表示である「有利誤認表示」では、「実態」を表示内容に合わせて変更することも可能です。

取引条件の変更は、措置内容の十分性を満たすために有益な場合があります(確約手続に関する運用基準6(3)イ(キ))。

「表示内容」を実態に合うように変更するのではなく、「実態」を表示内容に合わせて変更する措置をとった事例として2015年のRIZAP(ライザップ)の事例があります。

実態を「全額返金保証」の表示に合わせて変更したRIZAP(ライザップ)のケース

健康コーポレーショングループのRIZAP(ライザップ)は広告で「30日間全額返金保証制度」をうたっていたが、実際には例外もあった。

ただ注釈「※」で「詳しくは会則をご確認ください」と例外規定を含むことを示しており、会則には会社の承認があると規定していた。利用者の「転勤」や「引っ越し」「仕事の都合」「妊娠」などを理由とした返金は認められないとし、この間の物品購入も返金の対象外と規定していた。

これに対し、適格消費者団体が2015年5月18日、景品表示法の有利誤認にあたるとして削除を要請。

RIZAP(ライザップ)は一か月後の2015年6月18日、会則を変更し、いかなる理由でも30日以内なら全額返金に応じると発表した。

その他有益な措置も認められる

 ①~⑦の確約措置の典型例はあくまでも例示であり、これら以外の措置であっても有益な措置であれば評価されます。

確約手続ができないケース

確約手続はどんなケースでも行えるわけではありません。

確約手続に関する運用基準では、確約手続ができないケースとして以下をあげています。

  • 必要性が認められない
  • 弁明の機会の付与の通知がされている
  • 悪質性の高い事業者
  • 悪質性の高い違反被疑行為

必要性が認められない

確約手続を利用するには、一般消費者による自主的かつ合理的な商品及び役務の選択を確保する上で必要性が認められていることが求められます。(法第26条・第30条)

必要性があるか否かは、ケースに応じて次のような観点から判断されます。

  • 不当表示等を速やかに是正する必要性
  • 不当表示等を行った事業者の提案が、実態に即した効果的な措置となる可能性

またこの判断においては、次のような事情が総合的に考慮されます。(確約手続に関する運用基準(1)(2))

  • 不当表示等を行うに至った経緯
  • 不当表示等の規模
  • 一般消費者への影響
  • 確約計画の実施によりどういったことが見込まれるかなど

たとえば、次のようなケースは必要性が認められない可能性があります。

  • 事業者に義務付けられている「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置(改正法第22条)」をとっていない(悪質な事業者と見なされる)
  • 何年間にもわたって不当表示をしているなど不当表示等の規模が大きい(確約計画を実施しても、効果が見込めない)
  • 一般消費者への影響が小さい(確約計画を実施しても、効果が見込めない)

弁明の機会の付与の通知がされている

確約手続を利用するには、弁明の機会の付与の通知がされてないことが求められます(法第26条・第30条)

弁明の機会の付与の通知とは

景品表示法の表示事件において行政処分が出されるときは、事前に調査が入ります。そこで違反が疑われる場合、弁明の機会が与えられます。具体的には表示の根拠となる資料の提出が要求されるものです(15日ルール)

そして(仮に根拠なく表示をしていた場合)弁明の機会の付与の通知は、間もなく行政処分を受けることを意味します。

確約手続の趣旨は、事業者の自主的な取り組みを評価しようというものです。行政処分を受けることがほぼ確実となってから改善措置をおこなうのはこの趣旨と相容れないため、認められないわけです。

悪質性の高い事業者

悪質性の高い事業者も、確約手続の対象外です。悪質性の高い事業とは、たとえば過去10年間に措置命令・課徴金納付命令を受けている事業者などを指します。

行政処分というのは「以後不正をしないように」と再発防止策を命じるものです。

にもかかわらず、10年以内に不当表示を繰り返すような事業者の自主的な取り組みを評価するのは難しいため、対象にはなりません(確約手続に関する運用基準5(3))。

悪質性の高い違反行為

悪質性の高い違反行為も確約手続の対象外です。表示に根拠がないことを把握しながら売上のために表示を行っているなど、故意に違反するようなケースを指します。

こうしたケースも事業者の自主的な取り組みを促進するという確約手続の趣旨にそぐわないため、認められません(確約手続に関する運用基準5(3))。

確約手続の詳細は未定|今のうちコンプライアンス体制の構築を

確約手続の詳細はまだ決まっていません。たとえば悪質性の高い違反行為は手続きの対象外ですが、そのラインは未定です。今後、確約手続きが運用されれば、概要が公表されるため、そこから見当をつけることができる可能性はあります。いずれにしても、普段からうっかり景品表示法に違反しないよう、コンプライアンス体制を整えておくことが重要です。Life-lighterは景品表示法や薬機法をはじめとする広告法務をサポートしています。「好かれて売れる訴求」と「高い専門性」で貴社の利益を守ります。広告審査返金保証も実施しておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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