競合ひしめくヘルスケア業界では、他社との差別化は必須です。有効な戦略のひとつが他社との違いを打ち出す「比較広告」です。しかし、比較広告は薬機法や景品表示法で細かな規制があり、場合によっては違法となってしまいます。
今回は消費者庁発出の「比較広告に関する景品表示法上の考え方」に基づき、健康食品や雑貨、医薬部外品、化粧品で比較広告をおこなう場合の注意点を解説します。
筆者は、以下の実績を持つ専業ライターです。情報の信ぴょう性についてはご安心ください。
- 日本でただ一人景品表示法に関する消費者庁の文書の誤りを指摘・改善させた実績
- 消費者庁及び公正取引協議会主催「景品表示法務検定」アドバンス(合格者番号APR22000 32))
- ハウス食品、エーザイ、NTTDoCoMo、徳間書店など上場企業との取引実績多数
- 東京都福祉保健局主催「食品の適正表示推進者(健康増進法・食品表示法の資格)」
- その他民間企業主催の薬事法関連資格(薬事法管理者資格、コスメ薬事法管理者資格、薬機法・医療法遵守認証広告代理店、美容広告管理者など)
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比較広告とは


比較広告とは「自社のサービスや製品を競合他社のものを比較し、自社の優位性をアピールする広告手法」を指します。
国民性からか、日本では他社製品との比較広告はあまり見かけませんが、アメリカなどでは多用されている手法です。
景品表示法と薬機法で規制されている


比較広告そのものは違法ではありません。
しかし比較広告はやり方によっては、消費者の適正な商品選択を妨げる可能性があります。
たとえば実際にはそうでないのに
「A社の製品はB社よりも安い」
と掲示されていた場合、消費者はB社製品を買う機会をなくしてしまうおそれがあります。
そこで景品表示法や薬機法では比較広告について細かなルールが定められています。
比較広告の3要件


景品表示法では公正取引委員会(現在の消費者庁)が「比較広告に関する景品表示法上の考え方(比較広告ガイドライン)」を出しています。そのなかで比較広告が適正な広告といえるための要件として次の3要件をあげています。
<比較広告が適正な広告といえるための要件>
- 比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること。
- 実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること。
- 比較の方法が公正であること。
薬機法に関しては、化粧品や医薬部外品広告における留意事項を示した「医薬品等適正広告基準(適正広告ガイドライン)」があります。
比較広告に焦点を当てたものではありませんが、行政処分の判断基準にもなる指針であり通常広告は適正広告ガイドラインに沿って作成されます。
つまり比較広告を打ち出す場合、
- 景品表示法上のルールである「比較広告に関する景品表示法上の考え方(比較広告ガイドライン)」
- 薬機法上のルールである「医薬品等適正広告基準(適正広告ガイドライン)」
の両方を考慮する必要があるわけです。
健康食品や雑貨、化粧品、医薬部外品で比較広告はどこまで可能?|注意点を解説


以上を踏まえたうえで健康食品、雑貨、化粧品、医薬部外品のそれぞれについて比較広告の注意点を見ていきましょう。
健康食品や雑貨は比較広告の3要件を満たせば可能


薬機法の規制対象は医薬品、医療機器等、化粧品、医薬部外品です。健康食品や雑貨は薬機法の対象ではありません。
ですから
比較広告に関する景品表示法上の考え方(比較広告ガイドライン)の規定する条件
- 比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること。
- 実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること。
- 比較の方法が公正であること。
を満たすだけで足ります。健康食品や雑貨は医薬品等適正広告基準を守ることは求められません。
医薬部外品も比較広告の3要件を満たせば可能


次に医薬部外品や化粧品はどうでしょうか。
医薬部外品や化粧品は薬機法と景品表示法、いずれの規制も受けます。
- 比較広告に関する景品表示法上の考え方(比較広告ガイドライン)
- 医薬品等適正広告基準(適正広告ガイドライン)
の両方を守ることが必要です。
医薬部外品の比較広告については医薬品等適正広告基準(適正広告ガイドライン)のなかで言及されていません。したがって医薬部外品も3要件を満たせば比較広告も可能です。
他社製品の誹謗になると不可
ただし、他社製品の誹謗広告については厳しい取り決めがありますから、他社批判にならないように注意が必要です。
医薬品等適正広告基準では他社批判にあたるケースとして以下を例示しています。
他社批判にあたるケース
①他社の製品の品質等について実際のものより悪く表現する場合
例:「他社の口紅は流行おくれのものばかりである。」
②他社の製品の内容について事実を表現した場合
例:「どこでもまだ××式製造方法です。」
医薬品等適正広告基準第4(9))
化粧品では「他社製品との比較」は薬機法上NG


化粧品は他社製品と比較することそのものが認められません。「医薬品等適正広告基準の留意事項」では
明示的、暗示的を問わず他社製品との 比較広告は行わないこと
としています。
注意しなければならないのが漠然と比較する場合も制限されていることです。
(2)「比較広告」について
1 漠然と比較する場合であっても、本基準第4の3(5)「効能効果等又 は安全性を保証する表現の禁止」に抵触するおそれがあるため注意する こと。
(医薬品等適正広告基準の留意事項)
漠然と比較する場合とは
漠然と比較する場合とは
- 間接的な比較
- 特定成分の未配合表現
などです。
間接的な比較
“一般的な” “かつてない”といった表現は業界全体への批判ととられ、不可になる可能性があります。
NG例
- 「これまでの化粧水とは違う」
- 「かつてない〇〇」
- 「一般的な〇〇より」
特定成分の未配合表現
特定成分を含んでいないことも強調しすぎると不可になるおそれがあります。
その成分を含む他社商品の批判となる、とみなされるからです。医薬品等適正広告基準では次のように規定しています。
<医薬部外品・化粧品>
(1)指定成分・香料の未含有表現について
化粧品及び薬用化粧品において、「肌のトラブルの原因になりがちな指定成分・香料を含有していない」等の表現は不正確であり、また、それらの成分を含有する製品の誹謗につながるおそれもあるので、「指定成分、香料を含有していない」旨の広告にとどめ、「100%無添加」、「100%ピュア」等のごとく必要以上に強調しないこと。(医薬品等適正広告基準の留意事項)
特定成分を配合していないことを表現する場合は必要以上にアピールせず、他社の批判にならないように注意しなければなりません。
NG例
- 100%無添加
- 待望の「〇〇」未使用化粧水ついに誕生!
- 「○○」未使用だからこそ実現できた××
製造方法などでの間接的な他社批判にも注意
製造方法などの比較にも注意が必要です。
医薬品等適正広告基準では製造部門、品質管理部門、研究部門等の優秀性についての比較を制限しています。とはいえ、ただちに不可となるわけではありません。事実であり、かつ製造方法等の優秀性などにつ いて誤認を与えない場合、製造方法などについての比較広告も認められます。
製造方法などの比較が認められる要件
- 事実である
- 製造方法等の優秀性や他社・他製品との比較にお いて誤認を与えない
化粧品でも「自社製品との比較」は可能


化粧品は他社製品との比較はNGとご説明しましたが、自社製品と比較するのは問題ありません。ただ、自社製品と比較する場合においても、以下の点に留意が必要とされています。
化粧品の広告で自社製品との比較広告が認められる条件
- 対象製品の名称を明示する
- 説明不足にならないようにする
例
- 「これまでの洗顔料とは違います(※当社従来品 ◎◎◎(商品名)と比較)」
→“何がどう違うのか”が説明示されておらず、説明不足 - 「今までの洗顔料※とは洗浄力が違います。(※当社従来品 と比較)」
→対象製品の名称が明示されていない
- 「今までの洗顔料※とは洗浄力が違います。※当社従来品 ◎◎◎(商品名)と比較}
→対象製品の名称が明示されていて、“何がどう違うのか”も説明されている
ルールを守って適正広告を


比較広告そのものは不可ではありません。しかし薬機法や景品表示法の取り決めがあり、違反した場合処罰対象になることがあります。
比較広告の内容が虚偽の場合、不正競争防止法の信用棄損に抵触するおそれもありますから、他社・他社製品について言及する際は細心の注意が必要です。
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