景品表示法の不実証広告規制とは?摘発されない4つのポイントも紹介

景品表示法
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令和3年1月19日に、萬祥とNature Linkが空気清浄機の広告表現について景品表示法に基づく措置命令を受けました。いずれも空気清浄機機能の合理的根拠を提出できなかったことが原因です。景品表示法では表示の真偽を判断するために、根拠資料の提出を求める「不実証広告規制」と呼ばれるルールが設けられています。不実証広告規制はヘルスケア分野においても、確実に押さえておかなければならない、極めて重要な規制です。

本稿では

  • 不実証広告規制
  • 15日ルール
  • 措置命令を受けないために用意すべき資料

などについて解説していきます。

 

不実証広告規制とは

景品表示法は優良誤認表示や有利誤認表示などの虚偽表示を禁止しています。しかし、第三者からは表示が虚偽かどうかの判断できません。

そこで、これら不当表示に該当するかどうかを判断するために作られた規制が、不実証広告規制です。

表示の合理的根拠を示す資料の提出が求められる

不実証広告規制も当初から合理的根拠の提出を求められるケースはあったのですが、義務はありませんでした。しかし食品のみならず多くの分野にわたり不当表示事案が発生したため、平成26年の景品表示法改正で、要求された場合表示のエビデンス資料を提出しなくてはならない決まりになりました。

合理的根拠を示せない場合不当表示とされ、行政処分をうけることとなります。

 

「内閣総理大臣は、前項の規定による命令に関し、事業者がした表示が第五条第一号に該当するか否かを判断するため必要があると認めるときは、当該表示をした事業者に対し、期間を定めて当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。この場合において、当該事業者が当該資料を提出しないときは、同項の規定の適用については、当該表示は同号に該当する表示とみなす。

                                    (景品表示法第7条2項)

15日以内に合理的根拠の提出が求められる「15日ルール」

条文に「期間を定めて」とあるように、不実証広告規制では消費者庁から不当表示の疑いをかけられた場合、期間内に当該表示を客観的に裏付ける資料を提出しなければなりません。この期間というのが「15日以内」で、“15日ルール”と呼ばれます。

15日ルールでは

 

(1)15日以内に

(2)表示している効果、性能と適切に対応し

(3)客観的に実証された内容の根拠資料の提出

 

が求められます。

15日以内に合理的なエビデンス資料を提出できなければ措置命令が出されます。また15日以内に提出できても、表示内容と合致していない、もしくは合理的な根拠とみなされない場合措置命令となる可能性があります。

 

 

大事なのは標ぼうしている効果が事実であったとしても、「15日以内に根拠資料を提出できなければ違法な広告と判断される」ということです。

 

合理的な根拠資料と認められるには?4つのポイントを解説

不実証広告規制で根拠資料と認められるには以下の4つの資料のどれかを提出する必要があります。

  1. 「試験結果」
  2. 「調査結果」
  3. 「専門家・専門機関の見解」
  4. 「専門家の学術文献」

 

ただし形式的に満たせばOKというわけではなく、信頼に足りるものである必要があります。具体的なポイントは以下の通りです。

POINT1:「試験結果」を根拠とする場合、一般的に認められた試験方法でおこなったものでなければならない

POINT2:「調査結果」を根拠とする場合、調査方法・対象は客観性を保っていなければならない

POINT3:専門家・専門機関の特異な見解や持論などは合理的根拠として認められない

POINT4:広告表示が試験結果や専門家の見解で根拠づけられた内容に適切に対応していなければならない

 

POINT1:「試験結果」を根拠とする場合、一般的に認められた試験方法で、おこなったものでなければならない

「試験結果」を根拠とする場合は、公正性を保つため表示された商品・サービスの効果、性能に関連する学術界・産業界において般的に認められた試験方法おこなったものであることが必要です。企業が独自におこなっている試験方法などは認められません。

消費者の文書では関連する学術界又は産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法について次を例示しています。

・ 日用雑貨品の抗菌効果試験について、JIS(日本工業規格)に規定する試験方法によって実施したもの。
・ 自動車の燃費効率試験の実施方法について、10・15モード法によって実施したもの。
・ 繊維製品の防炎性能試験について、消防法に基づき指定を受けた検査機関によって実施したもの。

不実証広告ガイドライン

POINT2:「調査結果」を根拠とする場合、調査方法・対象は客観性を保っていなければならない

「調査結果」を根拠とする場合、その方法対象は統計的に客観性が確保されていなければなりません

 

客観性を担保するためには

  1. 無作為抽出で
  2. 相当数のモニターを選出する

など、作為が生じ得ないような配慮が必要になります。

たとえば、調査対象が関連企業従業員の家族などの場合、公正な結果とならない可能性が高いですよね。消費者の体験談モニターの意見なども主観的なものが多く、認められにくいです。

ただし、必ずしも当該企業や利害関係にある機関で行った試験や、消費者の体験談やモニターの意見が客観性のあるエビデンス資料として認められないわけではありません。社会通念上及び経験則上妥当と認められる試験や無作為抽出法で相当数のサンプルを選定し、作為が生じないように考慮して抽出した体験談やモニター調査によって得られた結果であれば当該表示の裏付けとなる根拠として提出することも可能です。

 

消費者庁発出の文書では次のように示されています。

・ 自社の従業員又はその家族等、販売する商品・サービスに利害関係を有するものの体験談を収集して行う調査は、サンプルの抽出過程において作為的な要素を含んでおり、自社に都合の良い結果となりがちであることから、統計的に客観性が確保されたものとはいえず、客観的に実証されたものとは認められない。

・ 積極的に体験談を送付してくる利用者は、一般に、商品・サービスの効果、性能に著しく心理的な感銘を受けていることが予想され、その意見は、主観的なものとなりがちなところ、体験談を送付しなかった利用者の意見を調査することなく、一部の利用者から寄せられた体験談のみをサンプル母体とする調査は、無作為なサンプル抽出がなされた統計的に客観性が確保されたものとはいえず、客観的に実証されたものとは認められない。

不実証広告ガイドライン

 

資料は提出されたものの、その調査方法が客観性に欠けるとして、合理的根拠と認められず措置命令が発出された事例に株式会社RAVIPA(ラヴィパ)の事例があります。

令和元年株式会社RAVIPA(ラヴィパ)満足度表示で摘発

株式会社RAVIPA(ラヴィパ)は自社ウェブサイトにおいて、「自社調べ n=194」「顧客満足度91.3%」と表示するなど、あたかも、本件商品に対する顧客の満足度が非常に高いものであるかのように表示していた。  しかし同社の行った調査は商品モニター等を対象としたものであり、試験方法・対象ともに客観性に欠くと判断され埼玉県庁が令和元年8月20日に措置命令を出した。

 

POINT3:専門家・専門機関の特異な見解や持論などは合理的根拠として認められない

見解や学術文献は、その業界で一般的に認められている必要があります。専門家のものであっても自説や特異な学術文献では、やはり客観性に欠けるからです。

特定の専門家による特異な見解の場合や、新しい分野で専門家が存在しないようなケースについては、「専門家・専門機関の見解」、「専門家の学術文献」を根拠とすることはできません。

 

POINT4:広告表示が試験結果や専門家の見解で根拠づけられた内容に適切に対応していなければならない

表示している効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していることも求められます。提出資料自体は客観的に実証された内容のものであっても、広告表示の内容が根拠資料によって裏付けられる効果を超えたものである場合は、その根拠資料だけでは十分とはいえません。

 

表示内容と提出資料によって裏付けられる効果が適切に対応していないものとして不実証広告ガイドラインは以下を例示しています。

・ 家屋内の害虫を有効に駆除すると表示する家庭用害虫駆除器について、事業者から、公的機関が実施した試験結果が提出された。

しかしながら、当該試験結果は、試験用のアクリルケース内において、当該機器に
よって発生した電磁波が、害虫に対して一時的に回避行動を取らせることを確認したものにすぎず、人の通常の居住環境における実用的な害虫駆除効果があることを実証するものではなかった。

・ あらゆる種類のエンジンオイルに対して10%の燃費向上が期待できると表示する自動車エンジンオイル添加剤について、事業者から、民間の研究機関が実施した試験結果が提出された。

しかしながら、その試験結果は、特定の高性能エンジンオイルについて燃費が10%向上することを確認したものにすぎず、一般的な品質のエンジンオイルについて同様の効果が得られることを実証するものではなかった。

 

表示内容とエビデンス資料の非対応で措置命令が出ているいケースは多い

実は広告とエビデンス資料のミスマッチを指摘され、措置命令が出ている事例は非常に多いです。

  • シャープの事例(2012年11月28日 掃除機のプラズマクラスター)
    「プラズマクラスターだからできることがあります。掃除機の中もお部屋の中も清潔、快適。ダニのフンや死骸の浮遊アレル物質のタンパク質を分解・除去」と表示していた。ダニのフンや死骸の浮遊アレル物質のタンパク質を分解・除去する効果のエビデンス資料は提出されたものの、その実験は1㎥(立方メートル)でおこなわれたものだった。

 

  • 二酸化塩素による空間除菌17社2の事例(2014年3年27日 空間除菌グッズ)
    使用することで、対象商品から放出される二酸化塩素が、生活空間において、ウイルス除去、除菌、消臭等するかのように表示していた。
    ウイルス除去、除菌、消臭効果のエビデンス資料は提出されたものの、その実験は狭い空間でおこなわれたものだった。

 

  • だいにち堂の事例(2017年3月9日 サプリメント)
    サプリメントの広告内で「目の症状が緩和した」ことを示す試験結果を標ぼうし、消費者庁が根拠資料を要求。だいにち堂は消費者庁の求めに応じて資料を提出したものの2つの試験結果において、実際の対象者はそれぞれ平均年齢26.6歳の10名、平均年齢32.6歳の20名であった。本品は「老眼の症状改善」をうたった高齢者をターゲットにした商品であり、これらの資料をもって表示の裏付けとなる合理的な根拠とすることはできないとされた。
    翌年2018年8月、だいにち堂はこれを不服として命令の取り消しを求め提訴。しかし2021年3月3日東京地裁はだいにち堂の措置命令取消請求訴訟を棄却した。

 

景品表示法の罰則

違反した場合、行政処分として措置命令課徴金納付命令、刑事処分として「2年以下の懲役又は300万円以下の罰金あるいはその両方」などが課せられることがあります。刑事事件になるケースはまれですが、行政処分でも億単位の課徴金納付命令が出ることも少なくありませんから注意が必要です。

行政処分

警告

1措置命令

景品表示法に違反した場合、まず消費者庁や都道府県から措置命令が出されます。

措置命令は

①行為の差止め

②違法行為が再び行われることを防止するために必要な事項

③これらの実施に関する公示

④その他必要な事項

を命じるものです(景品表示法第7条第1項柱書)

具体的には、原則以下が命じられることとなります。

【措置命令で下される命令】

違法な広告であったことを一般消費者に周知徹底

再発防止策を自社の役員や従業員に周知徹底

広告の停止

 

このほか、表示内容と実際の商品・サービスの内容を合致させるよう改善措置を求めた事例もあります。

 

2課徴金納付命令

平成27年度までは広告差し止めなどはあったものの、それ以外行政上の罰則はなく、実質上やったもの勝ち状態が続いていました。そこで平成28年度から「やり得」をなくすために課徴金制度も導入されたのです。

課徴金の額は、売上額の「3%」、対象となる期間は最長で最終取引日からさかのぼって3年間です(訴求期間)不当表示の終了日から5年を経過した場合、課徴金納付命令は発出されません(除斥期間)

 

ただし、事業者が課徴金対象行為(優良誤認・有利誤認)をした場合であっても、当該事業者が「課徴金対象行為をした期間を通じて自らが行った表示が不当表示に該当することを知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠つた者でないと認められるとき」は、消費者庁長官は、課徴金の納付を命ずることができません(景品表示法第条ただし書)

そして「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針指針(景品表示法第26条)」に沿った措置を講じている場合、知らないことにつき相当の注意を怠つた者でないと認められ、課徴金納付を免れることがあります。

刑事処分

懲役・罰金刑

措置命令に従わない場合、「2年以下の懲役又は300万円以下の罰金あるいはその両方」が科されることがあります。さらに、法人には、「3億円以下の罰金」が科されることがあります。

広告表現への配慮と根拠資料の準備が重要

景品表示法の広告規制では、客観的に実証された表示の根拠資料を15日以内に提出することが求められます。ただ、合理的な根拠と認められるための要件は厳しく、提出を迫られてから用意したのではとても間に合いません。表示に気を配るのはもちろん、いざ根拠資料の提出を要求されたときに迅速に対応できるよう前もって準備しておくことが大切です。

 

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