薬機法上、医薬品でないものについて医薬品的な効果効能をうたうことは認められません。たとえば健康食品で「血液サラサラ」とするとアウトです。しかし医薬品でなくても、医薬品的な効果効能をうたうことが認められているものがあります。それが「明らか食品」です。本稿では
を所有する専業薬機ライターが
- 明らか食品とはなにか
- 明らか食品に該当するもの、該当しないもの
- 明らか食品の該当性の判断基準
- 実務上の注意点など
を解説します。
明らか食品とは
明らか食品とは外観・形状などから食品であることが容易に判断できる食品(=明らかに食品であるもの)です。
薬機法では医薬品でないものが医薬品的な効果効能をうたうことを禁止しています。そのため通常健康食品は医薬品的な効果効能をうたうをことはできません。
しかし明らか食品であれば効果効能の標ぼうが可能です。
たとえば
- かぼちゃ
- バナナ
- 魚
などは誰がどう見ても食品ですよね。
薬機法の目的のひとつに、消費者が医薬品でないものを医薬品と誤認した結果、健康を害するリスクを防ぐことがあります。
つまりたとえば血糖値が高い人が、実際は医薬品の服用が必要なほどの状態であるのに「血糖値を低下させる」とうたったサプリメントを飲み続け、「自分はサプリを飲んでいるから血糖値は大丈夫」と思い込んだけっかみ、症状が悪化する事態を避けるということです。
その点明らかに食品であれば医薬品と誤認する人はいませんから、効果効能をうたうことが認められるわけです。
OK
- 血液サラサラ
- 免疫力UP
どんなものが明らか食品に該当する?
とはいえ、これだけでは「どんなものが明らか食品でどんなものがそうでないのか」は分からないでしょう。以下では、「明らか食品に該当するもの」「明らか食品に該当しないもの」の基準を解説します。
明らか食品に該当するもの
医薬品の範囲基準ガイドブック(じほう刊)では明らか食品について次のように説明しています。
通常人が社会通念上容易に通常の食生活における食品と認識するものとは、例えば次のような物が考えられる。
① 野菜、果物、卵、食肉、海藻、魚介等の生鮮食料品及びその乾燥品(ただし、乾燥品のうち医薬品として使用される物を除く)
② 加工食品
(例)豆腐、納豆、味噌、ヨーグルト、牛乳、チーズ、バター、パン、うどん、そば、緑茶、紅茶、ジャスミン茶、インスタントコーヒー、ハム、かまぼこ、コンニャク、清酒、ビール、まんじゅう、ケーキ、等
③ ①、②の調理品(惣菜、漬物、缶詰、冷凍食品 等)
④調味料
(例) 醤油、ソース 等
ご覧の通り、基本的に誰がどう見ても食品であるものが明らか食品です。
なお明らか食品であっても特定の成分を添加したもの、遺伝子組み換え技術を用いたものなど医薬品としての目的を持つことが疑われるものについては個別に判断することがある、とされています。
明らか食品に該当しないもの
では、誰がどう見ても食品とまではいえないものについてはどう判断すればいいのでしょうか。ポイントとなるのは一般に見て食品といえるかどうかです。
以下のケースは明らか食品には該当しないとされています。
- 有効成分が添加されている場合
- 一般性がない場合
- 主目的が食にない場合
1.有効成分が添加されている場合
明らか食品というためには特別な成分が添加されていないことが必要です。
- のど飴
- ビタミンCが強化されたハチミツ
- 鉄分が添加された牛乳
など、有効成分が添加されている場合は明らか食品に該当しません。
2.一般性がない場合
明らか食品は消費者が食品であることを”容易に”判別できるものです。つまり一般性がない場合、明らか食品とはいえません。
- 新種の果実
- 海外では一般に食べらているが日本では食べる習慣がないもの(ハト、カタツムリなど)
など日本において一般性がない場合、明らか食品には該当しません。
3.主目的が食にない場合
主目的が食にあることも求められます。
たとえば食用でない植物などに血圧低下作用があると判明したとします。主目的が食にないため、明らか食品とはいえず、血圧低下作用(=医薬品的な効果効能)をうたって販売するのはNGです。
明らか食品と誤認されやすいもの
続いて、明らか食品と誤認されやすい食品について説明します。
菓子
菓子は、以前は明らか食品とされていましたが現在は菓子は明らか食品には含まれません。
「乳酸菌入り」「GABA配合」など、医薬品的な効果効能を連想させる商品も多く流通するようになってきたことから、平成18年の厚労省通知で「菓子」は明らか食品からはずれました。
実際に、ガムの広告表示について、以下のような違反広告例が東京都福祉保健局より出されています。
出典:東京都福祉保健局
清涼飲料水
明らか食品の例として、緑茶、紅茶、ジャスミン茶があげられていますが、清涼飲料水も明らか食品には含まれません。これら緑茶、紅茶、ジャスミン茶は自然由来の茶葉を原材料として製造されていると一般的に考えられているため、明らか食品として例示されているのです。
飲料でも人工的に製造された清涼飲料水は、明らか食品に該当しないので注意しましょう。
明らか食品として販売する場合の注意点
最後に明らか食品として販売する場合の注意点を紹介します。
病名は訴求できない
明らか食品は薬機法の規制対象外ですので、効果効能をうたうことは可能です。しかし明らか食品でも病名の訴求は認められないことは頭に入れておきましょう。
NG
- 生活習慣病に
- 糖尿病の方に
- 花粉症に効く
特定の人向けの表示も不可
健康増進法で特別の用途に適する旨の表示をおこなう場合には、特別用途食品の許可が必要と定められています。
NG
- 乳児用
- 幼児用
- 高齢者用
- 嚥下困難者用
特別用途食品とは?
特別用途食品とは、病気の人や、乳幼児、高齢者など、通常の食事を食べることが出来ない人のための特別な用途を目的とした食品です。
大きく
- 病者用食品
- 妊産婦、授乳婦用粉乳
- 乳児用調製粉乳
- 嚥下困難者用食品
に分けられます。表示には厚生労働大臣の認可が必要です。
効果効能はいえるが景品表示法や健康増進法表現への配慮は必要
明らか食品は、薬機法の規制対象外です。ただし、健康増進法や景品表示法の規制は受けます。
効果効能をうたうことは可能ですが、誇張しすぎると景品表示法や健康増進法上問題となるおそれがあるので注意が必要です。