化粧品や医薬部外品の広告で「うるおい24時間キープ」といった表現をよく見かけます。薬機法(薬事法)では効能効果の保証表現を禁止していて、保湿効果の持続表現が認められない場合もあるため注意が必要です。今回は保湿効果の持続表現について文言やイラストの注意点を、最新の知見を交えて解説していきます。
情報の信ぴょう性については
- 日本でただ一人消費者庁に公的文書の誤りを指摘・改善させた実績
- 消費者庁及び公正取引協議会主催「景品表示法務検定」アドバンス(合格者番号APR22000 32)
- ハウス食品、エーザイ、NTTDoCoMo、徳間書店など上場企業との取引実績多数
- 東京都福祉保健局主催「食品の適正表示推進者」
- 民間企業主催の薬事法関連資格(薬事法管理者資格、コスメ薬事法管理者資格、薬機法・医療法遵守認証広告代理店、美容広告管理者など)
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をもつ専業薬機ライターが解説します。
薬機法(薬事法)上の「保湿効果の持続」の位置づけ
まずは薬機法(薬事法)上の「保湿効果の持続」表現の位置づけを確認しておきましょう。
保湿効果の持続そのものは化粧品でいえる
「保湿効果の持続」は化粧品でいえるのでしょうか。
「保湿」と「持続」のそれぞれについて見ていきましょう。
まずは「保湿」表現について見ていきます。
化粧品で認められる表現は、原則化粧品の効能効果56の範囲内です。(24)(25)に
(24)皮膚にうるおいを与える。
(25)皮膚の水分、油分を補い保つ。
があります。したがって、保湿効果そのものは問題ありません。
化粧品で認められる表現についてこちらで詳しく解説しています。
次に、「持続」表現についてです。「持続」に該当する効能効果は56の項目にはありません。
しかしそもそも化粧品とは身体をキレイにしたり、魅力を増したり、健やかに保ったりすることを目的として使用されるものです。
薬機法(薬事法)では化粧品を以下のとおりに定義しています。
この法律で「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌ぼうを変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。
医薬品医療機器等法
「(うるおいの)持続」は化粧品の定義の範囲内といえますから、問題はありません。つまりうるおい持続そのものは事実の範囲内で認められますす。
保証表現に当たる場合はNG
一方化粧品や医薬部外品、医薬品などの広告表現ルールをまとめた医薬品等適正広告基準では効能効果や安全性を保証する表現を禁止しています。
(5)効能効果等又は安全性を保証する表現の禁止
医薬品等の効能効果等又は安全性について、具体的効能効果等又は安全性を摘示して、それが確実である保証をするような表現をしてはならない。
医薬品等適正広告基準
つまり
うるおいの持続表現そのものは認められるものの、効能効果の保証表現にあたる場合は認められないことになります。
臨床データや実験例を見せるのはNG
保湿効果の臨床データや実験例を掲示してうるおい効果を標ぼうすることは、効能効果等について誤解を与えるおそれがあるため、認められません。
医薬品等適正広告基準の(5)のなかで、臨床データ等の例示について以下のとおり示されています。
(3)臨床データ等の例示について一般向けの広告にあっては、臨床データや実験例等を例示することは消費者に対して説明不足となり、かえって効能効果等又は安全性について誤解を与えるおそれがあるため原則として行わないこと。
医薬品等適正広告基準
図面や写真はケースによる
ではイラストや図面、写真を用いてうるおい効果の持続時間を表すことは可能でしょうか。
医薬品等適正広告基準の(5)のなかで、効果持続時間の表現についての記述があります。
4)図面、写真等について使用前、後に関わらず図面、写真等による表現については、承認等外の効能効果等を想起させるもの、効果発現までの時間及び効果持続時間の保証となるもの又は安全性の保証表現となるものは認められない。
医薬品等適正広告基準
化粧品等の適正広告ガイドライン【2020年版】でも次のようにあります。
F7.2 図面、写真等について
使用前後に関わらず、図面、写真による表現については、承認等外の効能効果等を連想させるもの、効果発現までの時間及び効果持続時間の保証となるもの又は安全性の保証表現となるものは認められない。
化粧品等の適正広告ガイドライン【2020年版】
つまり図や写真、イラストを使ったうるおい効果の持続表現は以下に該当する場合は、認められないことになります。
- 効能効果を逸脱するもの
- 発現時間、効果持続時間の保証
うるおい効果の持続表現OK表現とNG表現
以上から、うるおい効果の持続表現が認められるのは、次の要件を満たす場合ということがわかります。
- 化粧品の効果を逸脱しない
- 化粧品の定義の範囲内
- 保証表現にもあたらない
では、具体的に認められるケースと認められないケースを見ていきましょう。
NG
化粧品でいえる範囲を超えていたり、うるおい持続効果の保証にあたる場合は認められません。
- 乾燥肌を改善→化粧品の効能を逸脱
- うるおう肌質へ→化粧品の効能を逸脱
- 渇きを知らない肌を作る→化粧品の効能を逸脱
- 一瞬でうるおう→うるおい効果の保証
- うるおい、ずーっと続く→うるおい持続効果の保証
- 保湿力24時間キープ→うるおい持続効果の保証
- 抜群のうるおい持続力→うるおい持続効果の保証
- 実験データでうるおい効果の持続時間を表現→うるおい持続効果の保証
- イラストでうるおい効果の持続時間を表現→うるおい持続効果の保証
- うるおい持続効果を保証するビフォーアフター→うるおい持続効果の保証
「24時間」など単に効果がでるまでの時間や持続期間を示す場合も効果の保証とみなされるリスクがあります。
OK
たとえば以下のような表現は可能でしょう。
- うるおい長持ち
- うるおい持続
- うる肌続く
- しっとり肌が持続
- みずみずしさを長時間キープ
- 一晩中うるおいキープ
- 長時間しっとり
「一晩中」や「長時間」の表現は昔からよく使われていますが、摘発されておらず、指導も入っていません。
「一晩」や「長時間」は抽象的表現であり、効能効果の保証に当たらないとの判断なのでしょう。
ただし、念のため注釈をつけて補足しておくのが安全です。
【抽象的表現なら可能だが保証表現とみなされないよう配慮する】
一晩中(※)※就寝から翌朝まで
長時間(※)しっとり※つぎの化粧直しまで
化粧品の「うるおい持続」は不可ではないが注意が必要
今回は「うるおい持続」表現のポイントについて紹介してきました。うるおい効果の持続表現そのものは、事実の範囲で認められます。ただし、効能効果の保証とみなされないよう、配慮が必要です。
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