今、男性美容市場が活性化しています。メンズ向け化粧水や保湿クリームも販売されるようになり、習慣的にスキンケアをする男性が増えています。コロナ渦で市場はますます拡大していくでしょう。
本稿では
- メンズ美容市場調査結果(インテージ社)
- 学生のネット通販利用の実態―平成 30 年度経営・経済調査実習報告書
- 日本のキャッシュレス決済比率、決済事業者及び国の開示の在り方について|経済産業省
をもとに
メンズ美容市場の推移やコロナによる影響、アフターコロナのメンズ美容市場で事業者がとるべき戦略などを紐解いていきます。
コロナ渦のメンズ美容市場
メンズ美容市場は右肩上がり
近年男性の美容意識が高まり、男性でスキンケアをする人も増えています。インテージの調査によると市場規模は過去5年で右肩上がり、2019年度は2015年と比較して109%です。
男性化粧品が浸透してきた背景には、女性の社会進出があります。昔と比べ働く女性も増え、職場で女性と接するシーンが増えました。
その結果、清潔感・好印象を与えるために化粧品を使うようになったと考えられます。とくに今般のコロナ渦ではオンライン会議も増加し、自分の顔を見る機会も多くなりました。ニキビや肌荒れなど肌トラブルが目に付くようになりスキンケアを始める人も増えたのでしょう。
主に使うのは基礎化粧品「40代から60代」が最も上昇
男性が自分用に使うのは主に洗顔クリームや化粧水などの「基礎化粧品」です。男性用基礎化粧品の利用割合を年代別に見ていくと「40代から60代」が特に上昇しています。
しかし意外にも10代はほぼ横ばい、20代は下がっています。
若年層の男性ほど女性用の基礎化粧品を選ぶ傾向
そこで男性の基礎化粧品購入金額に占める「女性用」の割合を見ると、10代では66%、20代では55%と、「男性用・基礎化粧品」よりも「女性用・基礎化粧品」が上回っています。
つまり若年層では男性が女性用・基礎化粧品を選ぶケースも少なくありません。
背景には、男性化粧品市場が拡大しているとはいえ、現段階では女性向けの方がラインナップも豊富で口コミも多いことが考えられます。自分の悩みを解決してくれる化粧品を見つけやすいため、男性が女性用のものに求めることがあるのでしょう。
出典:「インテージ 知る Gallery」2020年10月7日公開記事
今後のメンズ美容市場はネット販売が鍵
ただし男性が店頭で女性向けの化粧品を買うのは、やはり抵抗があります。
コロナ渦でテスターも置けません。今後メンズ美容市場はインターネット販売をどれだけ伸ばせるかがキーポイントになるでしょう。
ネットで売り上げを伸ばすために欠かせない7つの施策|調査データから紐解く
ネットでの売り上げを伸ばすために重要な施策として、たとえば以下のようなものが考えられます。
- 商品認知をあげるための施策
- 「返品無料・後払い」などでネット特有のリスクを排除
- コンビニ決済の設定
- スマホ向けにページを最適化
- できれば送料無料に
- 誇大表現を用いない・コンプレックスを刺激しない
- ターゲットに合わせた広告出稿
1:商品認知をあげるための施策
インターネット販売では口コミやブランドが重視される傾向にあります。
わけても化粧品は肌に直接つけるものなので無名の商品は敬遠されます。ブランド力が低い場合、まず消費者に知ってもらうための施策が必要です。
広告でブランディング
認知拡大の手段として即効性が高いのがネット広告です。
SNS広告やリスティング広告、ディスプレイ広告など種類がありますが、闇雲に出稿したのでは広告費ばかりかかってしまいます。
市場分析をきっちり行って、ターゲット層が多いところに集中して出稿することが大切です。
口コミが集まる工夫を
実際の体験談は購入を決めかねている消費者の背中を押してくれます。購入者のリアルな口コミを掲載し、安心させてあげることが重要です。
口コミ投稿を条件とした割引キャンペーンなど、口コミが集まりやすい工夫をすると良いでしょう。
言わずもがなですが、自作自演やステルスマーケティングはNGです。ステルスマーケティングは違法ではありませんが、発覚すると炎上・クレームにつながる可能性があります。
2:「返品無料・後払い」などでネット特有のリスクを排除
インターネット通販ならではのリスクに次のような点があります。
- 現物を確認できない
- 代金を支払ったのに商品が届かない
- クレジットカード情報の流出
こうしたリスクがネックとなり購入を断念する可能性は十分に考えられます。
- 返品保証をつける
- 後払い方式も選択できるようする
など、消費者の不安を払拭し、買わない理由をつぶしていくことが重要です。
返品保証をつけても実際に返品されることはほとんどない
「返品保証をつけるというけど、もし大量に返品されたら赤字になってしまう…」
そんな風に思われる方もいるでしょう。
しかし返品保証をつけても、実際に返品されることはほとんどありません。
返品保証をつけることによる売り上げ効果が返品による損失を打ち消します。それほど返金保証の効果は大きいのです。
希望する決済方法がないと7割以上がサイトから離脱
ある調査では、ネットショッピングで希望する決済方法がない場合、ショッピングサイト閲覧者の73.7%が「サイトから離脱する」と回答した結果が出ています。
可能な限り多くの支払い方法を用意することが重要です。
後払い決済は売り上げUPに効果大
なかでも売り上げに大きく貢献するのが「後払い決済」です。
商品到着後の支払いが可能な「後払い決済」を選択できれば、消費者は安心して購入できます。
後払い決済は事業者にとっては代金未回収リスクや手数料などのデメリットもありますが、売上を左右するので是非導入しておきたいところです。
3:コンビニ決済の設定
現在、ネット通販の決済手段でもっとも使われているのはクレジットカード決済です(※)。ただ、サイバー犯罪の巧妙化によりクレジットカードの不正利用被害額は増加していて、若年層ではクレジットカード決済を避ける傾向にあります。
学生のネット通販利用の実態―平成 30 年度経営・経済調査実習報告書によると学生のインターネット決済手段はコンビニ払い(64.7%)が最も多く、クレジットカード(31.7%)の2倍以上です。
若年層向けの商品はコンビニ払いを選択できるようにしておきましょう。
※第一回の議論の振り返り、日本のキャッシュレス決済比率、決済事業者及び国の開示の在り方について|経済産業省
4:スマホ向けにページを最適化する
同調査によれば、ネット通販利用時の端末は圧倒的にスマホが多く、パソコンの2倍以上です。スマートフォン向けにページを最適化することが欠かせません。
- レイアウト
- フォントの大きさ
- リンクボタンの大きさ
- デザイン
- 操作性
などスマホからでも閲覧しやすいページになるように調整しましょう。
スマホからパソコン版のページを閲覧したい人もいるので、パソコン版ページへの切り替えができるようにしておくことも大切です。
5:できれば送料無料に
更に、ネット通販で不便に感じることとして「送料・手数料がかかること(71.2%)」が上位にあがっています。これは「価格が安い」ことがネット通販利用の大きな理由であることに関係していると思われます。
またマクロミルが2019年におこなった調査によると、送料がかかる場合半数以上が購入を断念することが分かっています。
送料がかかっても購入するケースも
一方、ケースによっては送料負担も問題ないとする声もあります。
ある調査で以下のような結果が出ています。
- 46%は欲しい商品であれば送料を払った。
- 45%は送料を含めた全体の価値を考慮して、最終的に送料を払ちつった。
- 他のサイトでは販売されていない商品であれば、36%が送料を払った。
- 28%は送料にお金を払うことに対して、論理的な理由を持っていた。
注目したいのは、半数近くの46%が欲しい商品であれば送料を支払うと回答している点です。消費者は送料にお金を払うかどうかを決める際、トータルのコストを考慮します。
送料無料に変わる魅力的なオファーがある場合、送料は問題ありません。その他の事務手数料にも同じことがいえます。
6:誇大表現を用いない・コンプレックスを刺激しない
現在のトレンドは「法に触れず、消費者の気持ちに配慮した広告」です。昨年「外見上の特徴を蔑視する広告、やめませんか」と訴える署名キャンペーンが炎上しましたが、コンプレックス広告やあおり系コピーは逆効果です。
誇大広告の規制も厳しくなっていて、法と人の心の両方に配慮した広告作成が求められます。
誇大表現の法規制は年々厳格化
消費者の誤認を招く誇大広告は景品表示法第5条の優良誤認表示・有利誤認表示に該当するおそれがあります。
景品表示法に違反した場合、まずは消費者庁から措置命令が下ります。措置命令の内容は、
- 広告差し止め
- 違反の事実の周知徹底
- 再発防止策の徹底
です。
景品表示法の措置命令は社名公表となるケースも多いですから注意しなければなりません。
行政指導に従わない場合「2年以下の懲役又は300万円以下の罰金あるいはその両方」が科されることがあります(景品表示法36条)。さらに法人には、「3億円以下の罰金」が科される可能性があります。
「違反期間の売り上げ×3%」の課徴金も原則科されることとなります。
薬機法でも課徴金制度がスタートすることが決定しています。
薬機法の課徴金制度は2021年8月1日から、額は「違反期間の売り上げ×4.5%」です。
消費者の心情にも配慮することが求められる
日本広告審査機構(JARO)によると2020年上半期の広告に対する相談7,969件のうち、「苦情」が6,147件(前年比136.6%)を占めます。なかでも多いのが「広告のような効果が得られない」「不快」といった「健康食品や化粧品の虚偽誇大広告、肥満や薄毛などのコンプレックスに訴える広告に対するものです。
これは広告が浸透し、見る人たちの目も厳しくなった結果といえます。
ただ苦情件数の内、法的に問題があると判断されたのはわずか0.4%。にもかかわらず苦情が多いのは品位あるホワイトな広告が求められていることに他なりません。
法律だけでなく、消費者の心情にまで配慮した広告作成が求められます。
7:ターゲットにあわせた広告出稿
ネットの特性を活かした施策も大切です。たとえばターゲットに合わせた広告作成です。
広告にもリスティング広告やYouTube広告、SNS広告など種類がありますが、ターゲットのモチベーションによって効果的なものは異なります。
ターゲット層に合わせて広告を出稿することが重要です。
顕在層をターゲットする場合
顕在層(ニーズもあり自社を知っているがまだ購入には至っていない層)は購入のモチベーションが高いです。
背中を押してあげることが重要なので
- リターゲティング広告
- リスティング広告
など能動的な広告が適しています。
通常のランディングページや純広告を配信するとよいでしょう。
ただ、cookie規制により行動ターゲティングができなくなっていくことに配慮が必要です。
潜在層をターゲットにする場合
潜在層(商品・サービスを知らない層)は購入モチベーションが低いです。潜在層がいきなり購入をすることは少ないので、まず認知してもらう必要があります。
- YouTube広告
- Facebook広告
など幅広い層へ見てもらうための広告を選びましょう。
とくにSNS広告は、ユーザーのタイムライン上に広告を表示させられるという特徴を持っています。タイムラインのなかに広告を自然と溶けこませることができるため、今の消費者が嫌う「押し付け感」「売り込み感」がありません。
そんなSNS広告と抜群に相性が良いのが、記事広告(記事LP)です。
記事広告(記事LP)はネイティブ広告の一種で「広告臭」を感じさせず、潜在層のニーズを自然に引き上げるのに適してます。
ただコンバージョンさせるには興味関心のない消費者の心をうまくとらえることが求められます。ですからある程度のスキル・経験が必要です。
記事広告(記事LP)はアフィリエイトでもよく用いられますが、アフィリエイターの違反で広告主が摘発される事例(2020年7月20日ステラ漢方の事例など)もでています。
アフィリエイト広告のチェック依頼もよく頂くのですが、なかでも群を抜いて多いのが「権威付け」の仕方に問題があるケースです。
たとえば次のような表現は医薬品等適正広告基準(5)や化粧品ガイドライン(F11)などに抵触するリスクがあります。
- 「雑誌〇〇」で紹介されました!
- 「医師も推薦!」
- 「芸能人の〇〇」も愛用!
- 「○○と共同開発」
アフターコロナのメンズ美容市場|カギを握るのはネット通販
メンズ美容市場は以前から伸びていましたが、コロナ渦でより一層市場拡大しました。今後はネット通販が主流になることが予想されますが、「ネット通販で売るためのポイント」は店舗販売のそれとは異なります。今のうちから対策を講じて備えておきましょう!
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