健康食品で「糖の吸収」「糖質カット」はどこまでいえる?

薬機法の専門家 橋本 駿

「糖の吸収を抑える」といった表現は、体内の消化・吸収に作用する医薬品的効能にあたるため、健康食品では原則認められません。実際に「糖ダウン」などの商品名や、「糖の吸収を抑える」との広告が行政指導を受けた事例もあります。特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品であれば、許可・届出の範囲内で糖に関する表示が可能です。健康食品では「甘いものが好きな方に」「糖が気になる方に」「低糖タイプ」など、消化作用に触れず曖昧な表現にとどめる必要があります。

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目次

薬機法(薬事法)とは

薬機法(薬事法)とは、医薬部外品や化粧品などに関するルールを定めた法律です。

正式名称を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といい、2014年に「薬事法」から改正され、内容の一部変更とともに名称も薬機法になりました。

薬機法(薬事法)の目的は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品といった製品の品質や安全性を確保し、効果がきちんとあることを確かめて、私たちの健康を守ることです。

薬機法の基本規制

薬機法(薬事法)では、医薬品でないものが医薬品のような効果効能(改善、治る、筋力アップなど)をうたうことや、安全性や効果効能を保障する表現(副作用はありません、安心です、必ず効きます)などを禁止しています。

薬機法(薬事法)で禁止される表現の例

医薬品でない商品の医薬品的効果

  • 化粧水で「シワ改善」
  • サプリメントで「肝機能障害が治る」
  • 育毛剤で「発毛」

安全性や効果効能を保障する表現

  • 絶対に安全な商品です。
  • 確実に効きます。
  • 副作用はありません。

健康食品で「糖の吸収は」薬機法上基本的にはNG

糖の吸収はヒトの身体の消化過程でおこなわれるものです。消化という体内作用に何らかの影響を及ぼすとうたうことはすなわち医薬品的な効果効能をうたうことになります

したがって原則糖の吸収訴求は認められません。

糖に関しては実務かなり厳しく、取り締まり例も多いです。たとえば2007年に

「糖ダウン」「糖値」「健糖」という商品名に対して改善命令が出されたケースがあります。

2017年には医療品メーカーの太田胃散含が機能性表示食品「葛の花イソフラボン 貴妃」において

「葛の花イソフラボンは、食事に含まれる糖や脂肪などに由来する脂肪前駆物質から中性脂肪の生成を制御し、BMIの上昇を抑えます」

とし薬機法および景表法違反で行政指導を受けています。

このケースで注目したいのが、糖や脂肪などに”由来する物質から脂肪の生成を制御し結果として“BMIの上昇を抑えるという間接的なロジックをとっているにもかかわらず、摘発されている点です。

つまり直接的に「糖の吸収」を標ぼうしなくても摘発されるリスクがあるわけです。

OK表現とNG表現


では実務上、どのような表現が認められ、どのような表現が不可となるのでしょうか。

NG表現

糖の吸収表現は健康食品として訴求できる範囲は非常に限られます。ただ、特保(トクホ)や機能性表示食品の許可を得ている場合は、許可の範囲内であれば認められます。

【NG表現】

  • 糖分をとっても問題ない
  • 糖分摂取のその前に!
  • 糖の吸収を抑える(特保なら可)
  • 糖分の摂取を抑えます
  • 糖に作用する
  • 糖バリア
  • 糖をカット(機能性表示食品なら可)
  • 糖質ケア(機能性表示食品なら可)
  • 糖分の吸収を抑えてポッコリおなかをスッキリ
  • 糖と上手に付き合いたい方に
  • 糖をブロック

このうち「糖分の吸収を抑えてポッコリおなかをスッキリ」や「糖分の摂取を抑えます」については摘発事例があます。

糖の吸収を抑える」に関しては特保の許可を受けていればOK、「糖をカット」「糖質ケア」は機能性表示食品でもOKです。

[su_box title=”特保(トクホ)とは” box_color=”#003f66″]

特保(特定保健用食品)とは個々の製品ごとに消費者庁長官の許可を受け保健の効果(許可表示内容)を表示することのできる食品です。特保の管轄は消費者庁であり、表示については「薬事法」ではなく、「健康増進法」のルールに従います

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[su_box title=”機能性表示食品とは” box_color=”#003f66″]

科学的根拠に基づいた機能性を事業者の責任において表示できる食品です。2015年4月から始まった「機能性表示食品制度」によりトクホに続き保健機能食品に新たに加わりました。

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健康食品でも「糖質のバランスを整える」など糖質の多い食事をしている人のために糖分を調整するというロジックなら即アウトとはいいきれません。とはいえ「糖質」とすると医薬品的な印象を与えるのでNGとなる可能性もなきにしもあらずです。別の表現を使うのがベターでしょう。

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OK表現

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「糖の吸収を抑える」「糖質カット」といった表現は、薬機法(薬事法)で規制されている医薬品的効能に該当するため、健康食品では原則認められません。行政指導事例も複数ありますから、「甘いもの好き」になど、別の角度から攻めるのが賢明でしょう。

Life-lighterは、薬機法や景品表示法、健康増進法などの広告法務に関する深く網羅的な知見があります。特に景品表示法については国内でただひとり消費者庁発出の文書の誤りを指摘・是正させた実績があるほか、消費者庁の資格「景品表示法務検定(アドバンス)」を所有するなど、高度な専門性を有しております。

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橋本 駿
消費者庁の誤りを指摘した薬機法の専門家
【この記事の著者】
薬機法や景品表示法などの専門家。NTTDocomoやハウス食品、富士薬品など大手企業との取引実績多数。
2023年には消費者庁の公的文書の誤りを指摘・改善、2024年にはわかさ生活に薬機法広告の専門家としてインタビューを受ける。
現在は専業薬機法ライターとして記事制作や表現のチェック、広告に関するコンサルティング、法務研修、講演活動などをおこなう。
消費者庁・公正取引協議会の「景品表示法務検定アドバンスクラス(合格者番号APR22000 32)」や東京都福祉保健局の資格を有する。その他薬機法関連の民間資格ももつ(薬事法管理者資格など)。

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