あなたはコラーゲンにどんな印象を抱いていますか?
きっと「ぷるぷる」「美肌効果」などどちらかというと「女性のための成分」とのイメージをお持ちではないでしょうか。もちろんそれも間違いではありません。しかし男性の永遠の悩み「薄毛」にコラーゲンが効果的であることが近年の研究でわかってきたのです。
本稿では景品表示法務検定アドバンス(消費者庁、公正取引協議会主催)食品の適正表示推進者(東京都福祉保健局主催)などを所有する専業薬機ライターの観点から、コラーゲンの薄毛への効果を解説します。
コラーゲンがなぜ薄毛に効果的なのか
コラーゲンは肌や骨、臓器など体内のいたるところに存在し、私たちの健康を支えてくれる存在です。けれどもコラーゲンといえば、美容成分のイメージが強いですよね。
なぜ薄毛に良いといわれるのでしょうか。
髪の毛の8割はタンパク質
コラーゲンが薄毛対策に効果的である理由を知るためには、髪の構造について理解することが必要です。
【髪の構造】
毛髪は大きく3つの部分で構成されます。
- キューティクル(毛小皮)
- メデュラ(毛ずい質 )
- コルテックス(毛皮質)
外側を覆っているのが「キューティクル(毛小皮)」、中心部に芯のように通っているのが「メデュラ(毛ずい質 )」キューティクルとメデュラの間にあるのが「コルテックス(毛皮質)」です。
毛髪成分の80~85%はアミノ酸で生成された「ケラチン」と呼ばれるタンパク質で構成されます。次に多いのが水分(約12%)で、メラニン色素・NMFなど(約4.5%)CMC脂質(約.5%)と続きます。
つまり髪の成分のほとんどがタンパク質なんです。
タンパク質が不足すれば、コルテックスが痩せ細り、髪が細くなる原因にもなります。
コラーゲンもタンパク質の一種
髪の大部分がタンパク質であることは分かりました。でも、それがコラーゲンが薄毛によいこととどのように関係しているのでしょうか。
実はコラーゲンはタンパク質の1種なのです。つまりコラーゲンを摂取することは髪の原料であるタンパク質を摂取することと同じであるため、薄毛対策に有効といえるわけですね。
コラーゲンは薄毛に具体的にどう効くの?
髪の主成分がタンパク質なので、タンパク質の一種であるコラーゲンを摂取することは薄毛に効果があるとお伝えしました。
「なんだ、そんな単純なことか」と思われた方もいるかもしれませんね。ご安心ください。それだけではありません。実はコラーゲンが薄毛に有効とされているのにはもっと深い別の理由があるのです。
コラーゲンの効果1:17型コラーゲン(Col17a1)が脱毛を抑える
コラーゲンの薄毛への効果には、直接的なものと間接的なものがあります。
薄毛予防に直接的な効果をもたらすコラーゲンとして近年注目を浴びているのが「17型コラーゲン(Col17a1)です」。
17型コラーゲン(Col17a1)とは
細胞の結合組織(ヘミデスモソーム)を構成する成分です。ヘミデスモソームの構成分子の一つ。表皮においては基底細胞が発現する膜貫通性蛋白。その先天性の欠損により表皮真皮接合部が不安定化し、接合部型表皮水疱症を発症し、皮膚の萎縮、脆弱性、びらん、色素異常、脱毛などを引き起こす。(皮膚の若さの維持と老化のメカニズムを解明」【西村栄美 教授】|東京医科歯科大学)より」
専門用語がずらりと並び、やや難しく感じた方もいるでしょう。
要は
- 17型コラーゲン(Col17a1)は、皮膚の健康や色素異常にかかわるタンパク質
ということだけ押さえておいていただければ大丈夫です。
17型コラーゲンが不足すると毛包幹細胞や色素幹細胞の働きが低下し、薄毛や白髪になる
髪の毛は、毛穴の奥の「毛包」にある「毛包幹細胞」が分裂を繰り返し、角質化したものです。17型コラーゲンが不足すると、髪を作りだす毛包幹細胞の働きが低下し新しい毛を作れなくなってしまうことが研究(※)で分かりました。
さらには17型コラーゲンの欠乏で色素幹細胞の働きが低下し、メラニン色素が生成されなくなり、白髪を招くことも判明しています。
※東京医科歯科大学難治疾患研究所幹細胞医学分野の西村栄美教授、松村寛行助教、劉楠氏らの研究。研究ではマウス皮膚の幹細胞の動態と運命を生体内で長期にわたって解析したところ、17型コラーゲンが欠損しているマウスで脱毛が顕著に見られた。研究結果は2019年4月3日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表。
出典:毛をつくる幹細胞を維持する17型コラーゲンの役割を解明した|株式会社アデランス 研究開発
コラーゲンには約30種類あるといわれ、それぞが違った役割を担っています。
普通のコラーゲンは皮膚の形をつくり、クッションのような役割も果たしますが、この17型コラーゲンは、毛包幹細胞を幹細胞の居場所につなぎ止める役割を担っています。毛包幹細胞が機能するためにはつなぎ止められてることが必要で、このつなぎの役割が白髪や脱毛をおさえていることがわかったのです。
加齢に伴いてDNAの遺伝情報が損傷されると、17型コラーゲンが分解され、つなぎの役割を果たせなくなります。解き放たれた17型コラーゲンは表皮の角化細胞となり、やがて、皮膚の表面から落ちてフケや垢として皮膚の外に排出されます。
参考:毛をつくる幹細胞を維持する17型コラーゲンの役割を解明した|株式会社アデランス 研究開発
17型コラーゲンは、薄毛対策に有効なコラーゲンとして、研究が進められていますが未知の部分が多く詳細なところは分かっていません。今後の発展に期待です。
ただし17型コラーゲン(Col17a1)の摂取では薄毛や白髪予防はできない
「それなら17型コラーゲン(Col17a1)をどんどん摂取すればいいじゃないか!」と思われる方もいるかもしれませんが、そうは問屋が卸しません。残念なことに17型コラーゲン(Col17a1)を経口摂取しても薄毛や白髪の改善は一切できないのです。
17型コラーゲン(Col17a1)は通常のコラーゲンとは性質を異にするもので、サプリメントなどで経口摂取しても体内で吸収される前に、分解されてしまうためです。
したがって、薄毛や白髪に対する効果を謳った17型コラーゲンのサプリメントや健康食品はすべて詐欺なのでご注意ください。
現在17型コラーゲン(Col17a1)の減少を抑制する方法が模索されています。
コラーゲンの効果2:コラーゲンペプチドが毛髪を太くする
また低分子コラーゲンである「コラーゲンペプチド」の摂取で、毛髪の直径が増すことがわかっています。北里大学の研究では、1日5,000mgのコラーゲンペプチドを被験者の女性に8週間とらせたところ毛髪の直径が増加する結果がでました。
検証ではコラーゲンペプチドの摂取から4週間後で約0.003mm、8週間後でなんと約0.006mmの増幅が認められています。メカニズムは今のところ明らかになっていないものの、この研究結果は薄毛に悩む方にとっては希望の光といえるでしょう。
コラーゲンの効果3:コラーゲンの皮膚軟化作用と血行促進作用が頭皮環境を整える
髪が健康に育つには、頭皮環境が整っていることが大切です。
コラーゲンは皮膚にうるおいを与え、柔らかくする働きがあります。コラーゲンの摂取により頭皮が柔かくなると、毛穴の汚れも落ちやすくなり、間接的に抜け毛予防につながります。
血流も促進され、毛髪の発育に必要な栄養素が届きやすくなるので結果として育毛も期待できるでしょう。
コラーゲンを効率よく摂取するには?
体内での細胞合成は、血管や臓器など生命の維持に必要なところから優先しておこなわれます。髪の毛は生命維持に必須ではないので、十分な栄養が揃っていなければ合成されにくいと推測できます。
コラーゲンは体内合成されますが、合成量は歳を重ねるごとに減っていき、減少を食い止める手段は現時点ではわかっていません。ですからコラーゲンを体外から摂取することが重要です。
ただ、栄養素にはそれぞれに相性というものがあり、組み合わせ次第で相乗効果を発揮したり、逆効果になるものがあります。コラーゲンにも相性のいい栄養素、相性の悪い栄養素が存在するので、以下にご紹介します。
コラーゲンの効果を上げる栄養素
ビタミンC/ビタミンA
コラーゲン分子は、3本のペプチド鎖が集まって緩い右巻きの螺旋構造をしています。この螺旋構造の維持には「水素結合」が必要です。
コラーゲンの末端は他の螺旋体と「アルドール結合」で結ばれ、コラーゲン繊維を構成しています。
水素結合にはアミノ酸「ヒドロキシプリン」、アルドール結合にはアミノ酸「ヒドロキシリジン」がそれぞれ欠かせません。
「ヒドロキシプリン」と「ヒドロキシリジン」の合成に必要となるのがビタミンCです。つまりりビタミンCが不足すると水素結合もアルドール結合もできず、コラーゲンの合成が滞ってしまいます。
ビタミンAもコラーゲンの再構築に関わっています。
参考:コラーゲン|Wikipedia|
【ビタミンCが豊富に含まれる食物】
ビタミンCは果物や野菜に多く含まれます。
100g中に含まれるビタミンC量
- 赤ピーマン:170mg
- 黄ピーマン:150mg
- ブロッコリー:120mg
- キウイフルーツ(黄):140mg
- 菜の花:110mg
- キウイフルーツ(緑):69mg
- イチゴ:62mg
- ネーブル:60mg
- レモン果汁:50mg
- キャベツ:41mg
- ジャガイモ:35mg
- サツマイモ:29mg
【ビタミンAが豊富に含まれる食物】
ビタミンAはレバーや緑黄色野菜に多く含まれます。
食品に含まれているビタミンAの量は、「レチノール活性当量(μgRAE)」として示されます。
100g中に含まれるビタミンA量
- 豚レバー:13,000(生)μgRAE
- 鶏レバー(生):14,000μgRAE
- うなぎかば焼き:15,00μgRAE
- 全卵(生):140μgRAE
- 牛乳:38μgRAE
- プロセスチーズ:260μgRAE
- トマト(生):45μgRAE
- ホウレンソウ(ゆで):450μgRAE
- ブロッコリー(ゆで):64μgRAE
エラスチン
エラスチンは肌の真皮でコラーゲンの構造を支える成分です。コラーゲンと一緒に摂取すると美肌効果がアップするといわれています。コラーゲンと同時にとると、線維芽細胞1個当たりのヒアルロン酸産生量が増えるとの実験結果もあります。
ただしエラスチンは身近な食品から摂取するのは困難です。サプリメントで摂取するのが良いでしょう。
タンパク質
タンパク質が不足すると新しいコラーゲンの合成や古くなったコラーゲンの分解がスムーズにできず、コラーゲン代謝に悪影響を及ぼしてしまいます。
タンパク質摂取のポイントは、アミノ酸バランスのよいタンパク質を摂取すること。
というのも、タンパク質が有効に働くためにはアミノ酸が必要で、いくらタンパク質を摂取したところで、アミノ酸が豊富に含まれていなければ十分な効果を得られないからです。
タンパク質のアミノ酸バランスを示す指標を「アミノ酸スコア」と呼びます。
アミノ酸スコアの高い食材を摂取することが重要です。
【アミノ酸スコアの高い食材】
- 豚肉
- 鶏肉
- 牛乳
- 大豆
コラーゲンの効果を下げる栄養素
脂肪
糖分
糖分をとりすぎると高血糖の状態になります。
高血糖の状態が続くとコラーゲン中の「アルギニン」と呼ばれるアミノ酸が糖化されます。
肌は
- 「コラーゲン」
- 「エラスチン」
- 「ヒアルロン酸」
で構成されていますが、これら3大成分を生成する役割を担うのが、真皮に「線維芽細胞」と呼ばれる細胞です。
高血糖によりアルギニン酸が糖化すると線維芽細胞がうまく働かなくります。結果として、皮膚を支えるコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸を生成できず、弾力を保持できなくなってしまうのです。
コラーゲンの副作用については、いろいろな情報が飛び交っていますが、実際のところどうなのでしょうか。
コラーゲンに副作用があることを裏付ける医学的データは今のところ存在しません。ただし、ご説明のようにコラーゲンはタンパク質です。過剰摂取は内臓に負担をかけますから、肝疾患や肥満の原因になる可能性もなきにしもあらずでしょう。
とり過ぎは控えることが大切です。
コラーゲンは薄毛に有効である可能性大!サプリメントで上手に補おう
17型コラーゲン(Col17a1)の摂取は薄毛にも白髪にも効果はありませんが、その他のコラーゲンの摂取は薄毛に有効と考えられます。
コラーゲンの推奨摂取目安は5g~10gといわれているところ、日本人女性の一日平均摂取量は、1900㎎(平成26年調査)と大幅に足りていません。男性に関しての調査結果は現段階ではないものの、不足していることはほぼ間違いないでしょう。足りない分はサプリメントなどで上手に補うことが大切です。
参考:
20代から50代日本人女性における食事由来コラーゲン推定摂取量の特徴|J-Stage