いいかえ例付|化粧品の「浸透」はどこまでOK?薬機法(薬事法)のルールをわかりやすく

化粧品で「肌の奥深くまで浸透」「真皮層に届く」といった表現をみかけますが、これらは薬機法上認められるのか、解説していきます。

薬機法の専門家 橋本 駿

化粧品の浸透効果は、角質層までしか認められません。注釈などで角質層までの浸透であることを明記する必要があります

以下のような表現は、基本的にNGです。
「肌の奥まで浸透」
「角質層の奥までケア

なお、医薬部外品で承認を受けている場合は、角質層を超えた浸透表現(基底層、真皮層など)も認められます。

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目次

薬機法(薬事法)とは

薬機法(薬事法)とは、医薬品や化粧品、医薬部外品などの販売や製造、表現方法などに関するルールを定めた法律です。正式名称を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といいます。

2014(平成 26)年 11 月25日の薬事法改正により、法律名も薬事法から「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」へと改められました。

薬機法(薬事法)における化粧品の浸透表現

では化粧品における浸透表現は、薬機法(薬事法)上、どのような扱いになっているのでしょうか。

薬機法(薬事法)では、法律の条文とは別に、医薬品などの広告表現の基準などをまとめた「医薬品等適正広告基準」というものが厚生労働省から出されています。そのなかで効能効果や安全性を保証する表現が禁止されいてます。

(5)効能効果等又は安全性を保証する表現の禁止

医薬品等の効能効果等又は安全性について、具体的効能効果等又は安全性を摘示して、それが確実である保証をするような表現をしてはならない。

医薬品等適正広告基準

また化粧品等の適正広告ガイドライン【2020年版】では浸透の表現を、原則禁止しています

E3 「肌・毛髪への浸透」等の作用部位の表現

浸透等の表現は、化粧品の効能効果の発現が確実であるかのような暗示、及び効能効果の範囲を逸脱した効果を暗示するおそれがあるため、原則として行わないこと。

化粧品等の適正広告ガイドライン【2020年版】

つまり化粧品における浸透表現は基本的には認められません

化粧品の浸透表現は角質層までならOK!

薬機法(薬事法)上、化粧品の浸透表現については、「角質層まで」なら可能です。

薬機法(薬事法)において、浸透表現は基本的には認められませんが、浸透の表現は「角質層までなら認められます。

ガイドラインは以下のように続きます。

ただし、作用部位が角質層であることを明記した場合であって、かつ、広告全体の印象か ら効能効果の保証や効能効果の範囲の逸脱に該当するものでない場合に限って表現するこ とができる

化粧品等の適正広告ガイドライン【2020年版】

また「肌・毛髪への浸透」等の作用部位の表現 」の箇所では以下のとおり規定しています。

E3 「肌・毛髪への浸透」等の作用部位の表現 」
 
①「肌への浸透」等の表現
「肌への浸透」の表現は「角質層」の範囲内であること

化粧品等の適正広告ガイドライン【2020年版】

要するに、

化粧品広告における浸透表現は「角質層まで」の浸透効果であることが明記されていて②効能効果の保証にあたらず化粧品の効果効能を超えるような印象も与えない場合に限り、認められます。

【化粧品の浸透表現が認められる3つの条件】

  • 浸透が角質層までであることを明記する
  • 効能効果の保証にあたらない
  • 効能効果の範囲を越えない

化粧品の浸透表現|OK表現とNG表現

NG表現

【NG】

  • 肌の奥深く
  • 肌の奥から美容効果
  • 真皮にまで浸透
  • 角質層の奥へ
  • 「肌内部のいくつもの層*  (*角質層)」
  • 「肌*の奥深く (*角質層)」
  • 「肌の内側(角質層)から・・・」
  • 「ダメージを受けた角質層へ浸透して肌本来の肌に回復」(回復的)

肌の奥深くまで浸透する印象を与える表現もNG

注意したいのが「角質層まで」と注釈すればよいわけではない点です。

たとえば「肌内部のいくつもの層* (*角質層)」の表現。”肌の内側”とすると医薬品的な印象を与えるので不可です。ガイドライン内でも以下のようにあります。

① 「肌への浸透」等の表現


「肌への浸透」の表現は「角質層」の範囲内であること。


[表現できる例]
「角質層へ浸透」、「角質層のすみずみへ」


[表現できない例]
「肌へ浸透」(「角質層」の範囲内であることが明記されていない)
「肌内部のいくつもの層*  *角質層」、「肌*の奥深く *角質層」
(注釈で「角質層」とあっても「肌内部」「肌の奥深く」という表現は、角質層の範囲
を越えて浸透する印象を与えるため不適切)
「肌の内側(角質層)から・・・」(医薬品的)

化粧品ガイドライン(2020年版)

OK表現

化粧品で浸透表現についていえる範囲は非常に限られます。

たとえば「肌へ浸透」としても、角質層の範囲内であることを明記しなければ不可となるので注意が必要です。以下の表現であれば認められます。

【OK表現】

  • 肌へ浸透(浸透に※つけ「角質層」までと明記)
  • 内側にアプローチ
  • 角質層へ浸透
  • 角質層のすみずみへ
  • 角層の奥まで

浸透表現は医薬品的になりやすく、同じ表現でも文脈によって違法性が変わってきます。

薬機法の専門家 橋本 駿

近年、浸透表現は厳しく見られるようになっています。
いっそのこと「うるおい補給」や「キメ」など別のアプローチでPRしていくのも手でしょう。

医薬部外品で、承認を受けていれば角質層を越えた浸透表現も可能

また、医薬部外品の場合は承認を受けていれば角質層を越えた浸透表現も認められます。

ガイドラインは以下のように規定しています。

E3 「肌・毛髪への浸透」等の作用部位の表現
ー(中略)ー

なお、医薬部外品の有効成分の浸透等の表現を行う場合は、事実に基づき、承認を受けた 効能効果の範囲を逸脱しないこと。

化粧品等の適正広告ガイドライン【2020年版】

医薬部外品で、有効成分の浸透効果角質層よりも奥の「基底層」まで承認されている場合には、以下のような表現も認められます。

  • 「基底層まで浸透」
  • 「角質層の奥深くまで」

医薬部外品で、有効成分の浸透効果が基底層よりもさらに奥の「真皮層」までの承認されている場合には加えて以下のような表現も可能です。

  • 「真皮層まで浸透」

浸透表現のルールは今後変わる⁉

浸透表現のルールは近い将来変わる可能性があります。

化粧品広告の細かな表現ルールは、日本化粧品工業連合会(粧工連)などが決めています。

ルールの内容は、時世やニーズ、違反状況などによって変わっていくのです

たとえば現在「乾燥による小ジワを目立たなくする」は一定の要件を満たした場合化粧品でも認められていますが、以前は化粧品でシワに関する表現は一切認められていませんでした。

しかし2011年7月11日に、シワ対策化粧品への消費者ニーズ化粧品会社からの強い要望を踏まえて化粧品の効能効果表に「乾燥による小ジワを目立たなくする」が追加されたのです。

薬機法の専門家 橋本 駿

逆に認められていた表現がある時を境に認められなくなるケースもあります。

そして現在

角質層への浸透表現について日本化粧品工業連合会における広告審査会のなかで議題にのぼっています

現時点では化粧品の浸透表現も以下の条件を満たす場合は認められます。

  • 浸透が角質層までであることを明記する
  • 効能効果の保証にあたらない
  • 効能効果の範囲を越えない

「角層の奥まで」は 現状ではNGではありませんが、今後不可となる可能があります。

薬機法(薬事法)における化粧品の浸透表現のQ&A

質問:薬機法(薬事法)で化粧品の「浸透」表現は認められる?

回答:薬機法では、化粧品の浸透作用が「皮膚の表面や角質層までの作用」にとどまることが求められています。浸透表現は必ずしも不可ではありませんが、⓵浸透効果が「角質層まで」であることを明記すること、②効能効果の保証になるような表現を使わないこと、③化粧品の効果効能を超えるような印象も与えないことが必要です。

質問:「浸透力が高い」の広告表現は問題ない?

回答:「浸透力が高い」という表現は、消費者に医薬品のような効能を連想させる可能性があるため、薬機法の観点から注意が必要です。特に「深く浸透」「細胞レベルで浸透」などは、化粧品の範囲を超えるとみなされる可能性があるため避けるべきです。「角質層まで浸透」など、化粧品として認められる範囲を明確にすると安全です。

質問:化粧品の「浸透」を示すエビデンスは必要?

回答:「角質層まで浸透」など、化粧品の範囲での浸透を表現する場合でも、根拠(裏付けとなる試験結果など)が必要です。根拠がない場合、薬機法や景品表示法の観点から問題視される可能性があります。

質問:「ナノ化成分が浸透する」と書いても問題ない?

回答:「ナノ化成分が浸透する」という表現は、成分が皮膚の深部まで入り込む印象を与えるため、薬機法に抵触する可能性があります。そのため、「ナノ化技術で角質層まで浸透しやすい」など、化粧品の範囲内にとどめることが推奨されます。また、実際にナノ化がどの程度効果を発揮するのか、根拠資料の準備も必要です。

質問:「浸透」を使わずに肌への浸透を表現する方法は?

回答:「浸透」という言葉を使わずに肌への浸透効果を表現する方法として「なじむ」「広がる」「潤いを届ける」など、他の言葉を使う方法があります。(「角質層までうるおいを届ける」「肌になじみやすい処方」など)

化粧品の浸透表現は今後変わる可能性有!

薬機法(薬事法)や景品表示法の規制は、時代とともに変化していきます。角質層への浸透表現についても、当局の広告審査会のなかで議題にのぼっていて、今後変更になる可能性があります。現状では「角層の奥まで」は NGではありませんが、今後不可となるかもしれません。しっかりとフォローアップしていくことが大切です。

Life-lighterでは、日本でただ一人消費者庁の公的文書の誤りを指摘・改善させた実績をもち、消費者庁と公正取引協議会の資格「景品表示法務検定」のアドバンスクラスを取得済(合格者番号APR22000 32)、わかさ生活に薬機法の専門家としてインタビューをうけた実績をもつ専業薬機法ライターが広告法務をサポートしています。

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橋本 駿
消費者庁の誤りを指摘した薬機法の専門家
【この記事の著者】
薬機法や景品表示法などの専門家。NTTDocomoやハウス食品、富士薬品など大手企業との取引実績多数。
2023年には消費者庁の公的文書の誤りを指摘・改善、2024年にはわかさ生活に薬機法広告の専門家としてインタビューを受ける。
現在は専業薬機法ライターとして記事制作や表現のチェック、広告に関するコンサルティング、法務研修、講演活動などをおこなう。
消費者庁・公正取引協議会の「景品表示法務検定アドバンスクラス(合格者番号APR22000 32)」や東京都福祉保健局の資格を有する。その他薬機法関連の民間資格ももつ(薬事法管理者資格など)。

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