化粧品の包装やパッケージに、「ポリフェノール」「グリセリン」のように、特定の成分を目立たせて表示することは原則として認められていません。 今回は化粧品の特記表示のルールや特記表示が認められるケース、特記表示の対象などを「化粧品における特定成分の特記表示について」「化粧品における特記表示に関するルールの再確認のお願い」などに基づき解説します。
情報の信ぴょう性については
- 日本でただ一人消費者庁に公的文書の誤りを指摘・改善させた実績
- 消費者庁及び公正取引協議会主催「景品表示法務検定」アドバンス(合格者番号APR22000 32)
- ハウス食品、エーザイ、NTTDoCoMo、徳間書店など上場企業との取引実績多数
- 東京都福祉保健局主催「食品の適正表示推進者」
- 民間企業主催の薬事法関連資格(薬事法管理者資格、コスメ薬事法管理者資格、薬機法・医療法遵守認証広告代理店、美容広告管理者など)
- わかさ生活に薬機法広告の専門家としてインタビューを受ける
をもつ専業薬機ライターが解説します。
薬機法(薬事法)における「特記表示」とは
薬機法(薬事法)では、化粧品の製品の容器やパッケージにに、「ポリフェノール」「グリセリン」のように、特定の成分を目立たせて表示することは原則として認められていません(医薬品等適正広告基準第4 (3))。
そもそも「特記表示」とは
特記表示とは、商品に配合されている成分のなかで、特に訴求したい成分を目立つよう表示することです。具体的には他の文字と離す、枠で囲む、色や字体、サイズを変えることなどが該当します。
特定成分を強調=特記表示にあたる
- 他の文字と離す
- 枠で囲む
- 色を変える
- 字体を変える
- 大きな文字を使う
特定成分を強調していない=特記表示にあたらない
- 文中に表示
- 全成分を表示
対象は商品の包装、パッケージ|広告は対象外
特記表示のルールが適用されるのは、商品の包装やパッケージで、webサイトや広告は対象外です。誤って記載している記事が多いですが、勘違いしないようにしましょう。
特定成分を特記表示することの問題点
では、特定成分を特記表示することはなぜ問題なのでしょうか。「化粧品における特定成分の特記表示について」をもとに解説していきます。
- 成分が有効成分であるかのような誤解を与える
- 通常の化粧品より効能や安全面で優れているかのような誤解を与える
- その成分が主な成分であるとの誤解を与える
①成分が有効成分であるかのような誤解を与える
まず化粧品であるにもかかわらず、医薬品的な印象を与える可能性があります。
薬機法(薬事法)では非医薬品が医薬品のような効能をうたうことを規制していますが、その本質は消費者が医薬品的な効果があると誤認した結果、健康被害が生じることを防ぐことにあります。
(承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止)
第六十八条 何人も、(中略)第二十三条の二十五第一項若しくは第二十三条の三十七第一項の承認又は第二十三条の二の二十三第一項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。
薬機法第68条|e-gov
②通常の化粧品より効能や安全面で優れているかのような誤解を与える
特定成分を目立つように表示すると、通常の化粧品より効能や安全面で優れているとの誤解を与える可能性があります。
③その成分が主な成分であるとの誤解を与える
その成分が主な成分であるとの誤解を与える可能性があります。
全成分表示についてはこちらで詳しく解説しています。
特定成分を特記表示するにはどうすればいい?
しかし特定成分の特記表示も、一定の条件を満たせば認められます。以下では「化粧品における特定成分の特記表示について」をもとに、特記表示が認められる条件について、紹介します。
配合目的を明記する
まずは配合目的を明記することです。
ただし配合目的は、次の条件を満たす必要があります。
- 事実である
- 化粧品の効能効果・製造技術に基づく表現
なお個別の成分名称でない場合は配合目的は不要です。
個別の成分名称でない場合配合目的は不要!
- 植物成分
- 植物抽出液
- 海藻エキス
- ハーブエキス
「アロエ」は、配合目的を記載する必要がありますが「植物成分」は、配合目的を記載しなくてもよいということです。
写真やデザインについては、同一視野内に「〇〇(△△として配合)」と記載
写真やデザインで特定成分を強調する場合、近くに「〇〇(△△として配合)」と記載すれば認められます。
この「近く」とは同一視野内を指します。
薬理作用を暗示するような配合目的は不可
薬理作用を暗示するような配合目的は認められません。
たとえば有効成分であるかのような印象を与える表現は不可です。
次のような表現は、有効成分であるかのような誤解を与えたり、効能効果の逸脱等となったりするため、配合目的として認められません。
- 抗酸化成分
- 肌あれ改善成分
- 美肌成分
- 美容成分
- エイジングケア成分
また名称に「薬」の文字を含む等、医薬品的な印象を与える表現は認められません。
- 「芍薬」
- 「シャクヤク」
特記表示する成分の名称は一般の消費者が理解できるように記載する
特記表示する成分の名称は、専門用語や略称を用いてはいけません。
- 成分名称は一般的な名称で記載
- 正式名称を付記する
など、一般の消費者が理解できるように記載する必要があります。
- 保湿成分EGF (対応する成分名称が不明)
- 保湿成分 タンパク質
特定成分の特記表示のOK例とNG例
以上から、特定成分の特記表示のOK例とNG例をまとめましょう。
特記表示のOK例
化粧品において特定成分の特記表示が認められるのは、以下の条件を満たす場合でした。
- 配合目的を付記し
- 配合目的が化粧品の効能効果・製造技術に基づくもので
- 配合目的が薬理効果の標ぼうにも暗示にあたらず
- 一般人が分かるように記す
つまり、以下のような表記は認められます。
- ビタミンC( 整肌成分)
- ポリフェノール(美容成分)
- コラーゲン(保湿剤)
- 肌にハリを与えるヒアルロン酸
- コラーゲンが肌にうるおいを与え、乾燥を防ぎます。
- 肌にうるおいを与えるアロエエキスを配合しました。
- ビタミンC(製品の酸化防止剤)配合のクリームです
特記表示のNG例
逆に、
- 配合目的を付記しない
- 配合目的が化粧品の効能効果・製造技術を逸脱している
- 配合目的が薬理効果の標ぼうまたは暗示にあたる
- 一般人には理解できない
次のような表現はNGです
- コラーゲンを贅沢に配合
→配合目的の記載がない - ビタミンC(皮膚保護剤)
→薬理効果を暗示している - ポリフェノール(抗酸化成分)
→薬理効果を暗示している - 保湿成分EGF (対応する成分名称が不明)
- グリチルリチン酸(たるみ改善)
→化粧品で謳える効能効果の範囲を超えている - ヒアルロン酸は、肌へのうるおいを与える成分となっています。
→配合目的の記載がない - ホホバ油配合のクリームです
→配合目的の記載がない
特記表示には注意が必要!正しい知識を身につけよう
化粧品の配合成分を表示する場合、その成分が有効成分であるかのような誤解を与えないように記載することが必要です。ただし特記表示のルールが適用されるのは、商品の包装やパッケージで、webサイトやweb広告は対象外です。誤って記載している記事が多いですから、しっかりとおさえておきましょう。
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