鍼・灸・整体院を規制する「あはき法」とは|摘発増の背景や罰則

整体

近年、整体院やマッサージ店の摘発事例が急激に増えています。あんまや鍼や灸、整体や整骨マッサージなどの施術は、医療行為ではありません。医業行為と明確に区分するため、こうした医業類似行為は「あはき法(あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律)」で広告できる表現などについて厳しく規制されています。
違反すると刑事責任を負うことになりかねません。

本項ではあん摩マッサージ・鍼・灸・整体業に携わる人に向けて、

  • あはき法とは
  • あはきの広告規制
  • 摘発増の背景
  • あはき法の罰則
  • 摘発されないためのポイント
  • 規制の動向など

について解説します。

情報の信ぴょう性については

  • 日本でただ一人消費者庁に公的文書の誤りを指摘・改善させた実績
  • 景品表示法務検定(消費者庁、公正取引協議会主催)アドバンスクラス(平均合格率2.9%)所有
  • 上場企業との取引実績多数
  • 食品の適正表示推進者(東京都福祉保健局主催)
  • その他薬事法関連民間資格ひと通り(薬事法管理者資格など)
  • 薬事広告実績9000件以上

をもつ専業5年目薬機ライターが解説しています。

目次

あはき法とは?

整体

あはき法は医業類似行為を規制する法律

あはき法は、あん摩マッサージ指圧や鍼・灸といった医業類似行為を規制する法律です。正式名称を「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律(以下あはき法)」といいます。

あんま鍼、灸の頭文字を合わせて「あはき」の名称です。

今や整体院やマッサージ店は、コンビニより多いといわれています。オフィス街や駅前、住宅など「指圧、マッサージ」や「接骨院、整体」の看板はいたるところにありますよね。

けれどもあん摩マッサージや指圧、お灸などは厳密には医療行為ではないため、医療行為であるかのように広告することは禁止されています。

あはき法は、戦後GHQがあん摩や鍼灸について「非科学的であり、不潔である」として禁止しようとしたため制定されました。

あはき法の規制内容は

あはき法が規制しているのは大きく次の3つです。

  1. 医業類似行為の法的資格制度についての規制
  2. 施術所開設時の届け出についての規制
  3. 広告についての規制

1、医業類似行為の法的資格制度についての規制

あはき法ではあん摩マッサージ指圧・鍼・灸といった医業類似行為の法的資格制度について定めています。

具体的には

医師でないものがあん摩マッサージ指圧・鍼・灸、マッサージを仕事として施術する場合

厚生労働省大臣が認定する専門学校または短大、大学などの学校・養成施設における3年以上の勉強
国家資格の取得

が必要

としています。

同じく医業類似行為である柔道整復の法的資格制度について定めているのが「柔道整復師法」です。「あはき法」や「柔道整復師法」は、あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう、柔道整復以外の医業類似行為禁止しています。

他方、法的資格制度のない医業類似行為も存在します。

  • 整体
  • カイロプラクティック
  • 骨盤矯正
  • 気功

などです。

あはき法や柔道整復師法は、あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう、柔道整復以外の医業類似行為を禁止していることをお伝えしました。

このことから考えれば、法的資格制度のない医業類似行為はすべて認められないないかのようにも思えますよね。

しかし実際はそうではありません。

というのも、過去の判例から無資格の医業類似行為として処罰の対象になるのは、医学的観点からして人体に害を及ぼすおそれのある医業類似行為に限定されるからです。(最高裁昭和35年1月27日大法廷判決)

したがって、人体に害を及ぼす恐れがない医業類似行為は無資格でも処罰対象になりません。(ただ、この辺りの事情が近年問題となっています)

2、施術所開設時の届け出についての規制

あはき法では施術所の開設について規定しています。

施術所を開設した者は、開設後十日以内に、開設の場所、業務に従事する施術者の氏名その他厚生労働省令で定める事項を施術所の所在地の都道府県知事に届け出なければならない(あはき法第9条2)

あん摩マッサージ指圧業、はり・きゅう業の施術所を開設する場合は開設後10日以内に施術所所在地の各区保健福祉センター保健業務担当までの届け出る必要があります。

一方、整体やカイロプラクティックなど法的資格制度のない医業類似行為については役所への届け出は義務付けられていません。

ポイント

✓「あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう」や「柔道整復」は、文部科学大臣の認定した学校または厚生労働大臣の認定した養成施設において3年以上の教育を受け、国家試験に合格した者のみ業として行うことができる

✓施術所を開設する場合は、所在地の都道府県知事への届け出が必要。

✓整体やカイロプラクティックなど法的資格制度のない医業類似行為は医学的観点から人体に危害を及ぼす可能性のない場合、規制対象外

✓整体やカイロプラクティックなど法的資格制度のない医業類似行為は施術所開設時に届け出義務はない

3:広告についての規制

あはき法では広告についても規制しています。鍼や灸、整体などの医業類似行為の広告でいえること、いえないことをみていきましょう。

<広告に当たるもの>

  • チラシ、パンフレット等(ダイレクトメール、FAXによるものを含む)
  • ポスター、看板
  • 新聞、雑誌その他出版物、放送、映写又は電光によるもの
  • Eメール、インターネット上のバナー広告等
  • インターネット上のホームページ(WEB上のページはすべて)
  • 不特定多数の者への説明会、相談会、キャッチセールス等において使用するスライド、ビデオ又は口頭で行われる演術によるもの

広告で使えない表現

医療と誤認を与えるおそれのある表現

あん摩やマッサージ、指圧、はりやきゅうなどの行為は施術であって医療行為ではありません。なので

  • 病院又は診療所との誤認を与える表現
  • 医療行為と誤認を与える文言

など医療を連想させる表記すると、違法になります。

たとえば以下に該当する表記はNGです。

病院又は診療所との誤認を与える表現

例)

「診」
「治療」
「○○療院」
「○○治療所」

医療行為と誤認を与える文言

例)

「治療」
「診察」
「診療」
「休診」
「科」

広告で使える表現

あん摩マッサージ、鍼灸整体業の広告で使用可能な表現は以下に限定されます。

1施術者である旨、施術者の氏名及び住所

2業務の種類・はり、きゅうのイラスト、英語表記

3施術所の名称、電話番号、所在地を表示する事項
・ロゴマーク(効果効能等を表すものは除く)
・FAX番号、電子メールアドレス、ホームページのURL・QRコード
・施術所(外観)の写真、地図、最寄り駅からの所要時間
・駐車場の写真

4施術日、施術時間
予約に基づく施術の実施(FAX、電子メールでの予約を受付けている場合は、その旨とFAX番号、電子メールアドレス、「完全予約制」の文言)

5その他厚生労働大臣の指定する事項
ⅰ)もみりようじ
ⅱ)やいと、えつ
ⅲ)小児鍼(はり)
ⅳ)施術所の開設・再開の届出のあること
ⅴ)医療保険療養費支給申請のできる旨
ⅵ)予約に基づく施術の実施
ⅶ)休日又は夜間における施術の実施
ⅷ)出張による施術の実施
ⅸ)駐車設備に関する事項

消費者が不利益を被らないように厳しく規制されている

このように、あはき法では怪我の回復を連想させる情報はおろか

  • 料金や施術所の写真
  • 症状名
  • 対象者

などについても一切表記できません。

これほどまでに厳格な規制が存在する理由は

  1. 治療ができる医療機関
  2. 治療ができない施術所

ふたつを明確に区分することにより、一般消費者が不利益を被るのを防ぐためです。

たとえば、症状の緩和(治療)のためにマッサージにいっても、マッサージは医療行為ではないので症状は緩和されません
にもかかわらず、通い続ければ費用がかかるばかりか、健康被害につながるリスクもあります。

そうであるならば、「はなから医療行為とは異なることを明示し、消費者に過度な期待を抱かせないようにしましょう」というわけです。

あはき法の罰則

フェンスと鎖

無資格・無届の医業類似行為に対する罰則

無資格・無届の医業類似行為については50万以下の罰金が課せられます。

法的資格制度のない医業類似行為については、医学的観点から人体に害を及ぼすおそれのある行為のみが処罰の対象です。

広告規制違反

広告規制違反は30万以下の罰金が課せられます。

あはき法は近く改正予定|背景には悪徳な業界実態

法律

あはき法は近く改正され、規制拡大することが決まっています。当初は2020年秋ごろに改正される予定でしたが、コロナの影響でいまだ改正されていません。

あはき法改正の背景には、看過できないさまざまな実態があります。

  1. 違法経営の蔓延
  2. 不適切広告の多さ
  3. 医業類似行為による事故の多発
  4. 頻発する契約トラブル

違法経営の蔓延

手錠をかけられる人

まず違法経営の問題です。

たとえば2004年には大手マッサージ師派遣業の「エーワン」が無資格のマッサージ師を全国の健康ランドやホテルに派遣していたとして摘発されています。

施設内の人間ならば、施術者が資格を持っていないことがわかるかもしれません。

しかしながら第三者、それも一般人が施術者の無資格を見抜くのは、事実上ほぼ不可能です。そのため、摘発事例は少ないものの水面下では無数の違法経営が蔓延っているといわれています。

厚生労働省も無資格での医業類似行為について、

「一般の人が適法なあん摩マッサージ指圧が行われていると誤認するおそれがあり、公衆衛生上も看過できないものである」

としています。

不適切広告の多さ

不適切広告も後を絶ちません。
治療を思わせる広告が多いのはご周知の通りです。

  • 「腰痛改善」
  • 「関節の悩みを治します」
  • 「むち打ち症に困っている方」

といった治療を思わせる謳い文句に

  • 「診察時間」
  • 「診療所」
  • 「クリニック」

など医療行為を想起させる表記。不当広告を掲げるマッサージ店や施術所は無数に存在します。

しかしながら違反事例が多く、取り締まりきれないのが実態です。

医業類似行為による事故の多発

怪我

医業類似行為による怪我や症状悪が多発している

あんまや柔道整復など法的資格制度のある医業類似行為の場合、施術方法・内容は定まっていますし、技術も一定の水準は担保されているといえます。

他方、法的資格制度のない整体、マッサージ、カイロプラクティックなどは施術者の技術水準や施術方法・内容がまちまちです。

そのため施術による怪我や症状悪化のトラブルが少なくありません。

消費者庁の事故情報データバンクには

  • 「整体」
  • 「カイロプラクティック」
  • 「リラクゼーションマッサージ」

などの法的資格制度がない医業類似行為の手技による施術で発生した事故の情報が1483件寄せられています。(平成21 年9月1日~平成 29 年3月末までの登録分)

多い最も件数が多いのは「神経・脊髄の損傷」で、以下「擦過傷・挫傷・打撲傷」「骨折」と続き、重傷のものも多いことがうかがえます。

しかし施術との因果関係を証明するのは困難

しかしながら、施術と怪我の因果関係を証明することは現実的に困難です。
施術による怪我であれば、業務上過失致傷罪を適用可能ですが、施術によるものと証明する術がありません。

業務上過失は立証が難しく、泣き寝入りになってしまうことがほとんどです。

頻発する契約トラブル

契約書

契約トラブルも多いです。

よくあるのが、次のようなケース。

継続的な施術を勧められ定期契約を結んだものの、一向に良くならないため解約を申し出たが解約できない(あるいは違約金が発生する)

「クーリングオフ制度があるのでは?」と思うかもしれません。

実はこのような場合、クーリングオフ制度は適用できないのです。
そももそもクーリングオフ制度は、契約内容を十分に吟味できないまま、一方的に契約させられてしまった消費者に対する救済制度です。

ですから通信販売など、消費者自ら契約を希望した場合契約内容を事前に検討可能な場合クーリングオフ制度の適用外となります。

つまり整体院等における契約も自ら施術を希望し締結したものについては、クーリング・オフ制度が適用されません。

参考文献:https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/release/pdf/consumer_safety_release_170526_0002.pdf

競争が激しいからこそ法の遵守が大切

今、過去にないほど整体院やマッサージ院は乱立しています。
地域に競合がひしめき合うなかでは「優位に立ちたい」が先に立ち、違法運営や虚偽広告をしたくなるのは無理からぬことかもしれません。

けれども長い目で見れば必ずマイナスに働きます。競争が激化している現在だからこそ、あはき法を順守した誠実な運営、ホワイトな広告が肝心といえるでしょう。

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