2023/8/23消費者庁は「送料無料表示の見直しに関する意見交換会第6回」を実施。消費者庁が主催となり、公益社団法人全日本トラック協会や公益社団法人 日本通信販売協会(JADMA)、新経済連盟事務局などにより送料無料表示の法規制化などが議論されました。今後「送料無料」表示はなくなるのでしょうか。所見を述べます。
送料無料表示の見直しに関する意見交換会とは
送料無料表示の見直しに関する意見交換会とは、「送料無料」表示の廃止、別表示の推奨などについて議論する検討会です。消費者庁が主催となり、公益社団法人全日本トラック協会や公益社団法人 日本通信販売協会(JADMA)、新経済連盟事務局などが参加しました。送料無料表示の見直しに関する意見交換会は2023年6月23日に第一回が開催され、今回で六回目です。
なぜ「送料無料」送料無料表示の見直しが必要?
「送料無料」は今や通販業界では当たり前となっています。「送料無料」でないと買わないという方もいるかもしれません。
では、なぜ送料無料表示の見直しが必要なのでしょうか。
大きく関係しているのが、配送コスト最適化の必要性の高まりです。
物流業界では、ドライバー不足による輸送量の減少が懸念されています(いわゆる物流の2024年問題)。
ドライバー不足が深刻化するなかでは、運賃・料金が消費者向けの送料に適正に転嫁・反映される必要があります。
その点「送料無料」表示は運賃・料金の消費者向け送料への適正な転嫁・反映を妨げ、荷主との適正な料金交渉を難しくしているとの声が上がっていたのです。
実際、「送料無料」表示をみると次のような認識を抱く方もいるのではないでしょうか。
- 「送料無料」表示をみると、送料を誰かが負担していることは理解しているが、どのくらいのコストを誰が負担しているのかまでは、(消費者は)考える必要がない。
- 商品価格に送料が含まれている場合と、送料別の場合で、消費者の選択が異なる場合がある(例えば、商品価格5,000円+「送料無料」と、商品価格4,500円+送料500円だと、何となく商品価格5,000円+「送料無料」の方が商品価値が高くて得だと思ってしまうなど。)
- 安価な商品であってもまとめ買いすることなく単品で購入し、何回配達してもらっても気にならない(例えば、100円のボールペンを必要な時に1本ずつ購入するなど。)
- 配達日時に不在にして再配達をしてもらっても、ドライバーさんには悪いと思うが、「送料無料」だからそこまで気にしない。
さらに近年では燃料価格、車両価格、人件費等が上昇をして、価格転嫁が必要になっています。価格転嫁に納得してもらうためにも、消費者に、コストがかかっていますよということを理解してもらう必要があるわけです。
そこで、「送料無料」表示を法律で禁止したり別の表示にすることを推奨する議論がなされているわけです。
「送料無料」がなくなる可能性は低い
ただ、送料無料の表示が売り上げや顧客満足度の向上、物流コストの削減に寄与しているのも事実です。
また表示そのもの規制したところで「送料1円」「送料分ポイント還元」などと不当競争となるだけで意味がありません(意見交換会のなかでも同様の意見がでています)。
送料無料表示の置き換えは現実的には難しく、法規制も別表示の推奨もされない可能性が高そうです。