そういうことか!|薬機法規制の8割をしめる3つの禁止行為と罰則

気づき

「薬機法って難しくてよくわからない…」「なにをしたら違反で、どんな罰があるのか、いまいち曖昧…」

実は一流のマーケターでさえ、薬機法をぼんやりとしか理解できていない人は少なくありません。

そこで本稿では

  • 薬機法で規制されている3大NG行為
  • 薬機法の罰則
  • 薬機法違反にならないためのポイント

などをシンプルに解説していきます。最後まで読んでいただけば、ヘルスケア広告に関する薬機法規制の8割以上を理解したことになります。

なお情報の信ぴょう性については

  • 景品表示法務検定アドバンス(消費者庁、公正取引協議会主催)
  • 食品の適正表示推進者(東京都福祉保健局主催)などを所有する専業薬機ライターが執筆しておりますのでご安心ください。

詳しい規制を学びたい!という方はこちらの記事がおすすめです。

目次

薬機法規制の3大NG行為

NG違法

薬機法は正式名称を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といい、2014年の薬事法改正により名前が変更となりました。

薬機法で禁止されている行為は大きく分けて次の3点です。

  1. 医薬品的な効果効能をうたう=未承認医薬品の広告(第68条)
  2. 大げさな表現を使う=誇大広告(第66条)
  3. 医薬品でないものを医薬品として売る、貯蔵する、授与する=未承認医薬品等の販売、授与(第14条1項、9項、第55条等)

1:医薬品的な効果効能をうたう=未承認医薬品の広告(第68条

薬機法では医薬品でないものが医薬品的な効果効能をうたうことを禁止しています。

医薬品的な効果効能にあたる標ぼうとは以下の事項にあたるものです。なお暗示的な表現でも不可

とされています。

  1. 病気の治療・予防を目的とする効能効果の標榜
  2. 身体の構造・機能に作用する標榜
  3. 特定部位の改善、増強効果の表現

1病気の治療・予防を目的とする効能効果の標榜

糖尿病、高血圧、動脈硬化の方におすすめ、胃・十二指腸潰瘍の予防、肝障害・腎障害をなおす、ガンがよくなる、眼病の人のために、便秘気味の方に、身体がだるく疲れのとれない方に、生活習慣病の予防

2身体の構造・機能に作用する標榜 

疲労回復、強精(強性)、強壮、体力増強、食欲増進、老化防止、勉学能力を高める、回春、若返り、新陳代謝を盛んにする、内分泌機能を盛んにする、解毒機能を高める、心臓の働きを高める、血液を浄化する、病気に対する自然治癒能力が増す、胃腸の消化吸収を増す、健胃整腸、病中・病後に、成長促進

3特定部位の改善、増強効果の表現

目の栄養補給に、目の老化・疲労に良い、脳の老化防止、毛が生える、肌あれのないみずみずしいお肌になる、バストアップ、加齢による関節の悩みに、神経を刺激して活性化する、歯を丈夫にする、血管を強くする

医薬品的な効果をうたうことことはなぜ禁止?

顎に手をあて考える男性

そもそもなぜ医薬品的な効果をうたうことことは禁止されているのでしょうか。本質を知るためには医薬品とはなにかを理解する必要があります。

医薬品とは治療を目的とした薬です。医薬品として製造販売するためには厚生労働大臣の許可が必要になります。

薬機法上、医薬品的な効果目的」としているもの(=医薬品的効果をうたうもの)はすべて医薬品とみなされます。実際に効果があるかどうかにかかわらず、です。

たとえば、ブルーベリーサプリがあったとします。

サプリは医薬品ではありませんよね。

しかし「視力回復」など、医薬品的な効果をうたうと、薬機法という枠組み上では医薬品とみなされてしまうのです。ところが、医薬品として販売するために必要な厚生労働大臣の許可を得ていません。

そのためブルーベリーサプリで「視力回復」などをうたった場合厚生労働大臣の許可を得ていない「未承認医薬品」となり、広告するとペナルティをうけおそれがあります(未承認医薬品の広告の禁止(第68条))

どこからが医薬品的な効果効能となるかは難しい

岐路

もっとも、「医薬品的な効果効能」の明確な線引きはできません。例外もありますし前後の文脈などによっても判断が異なるからです。

白黒の基準は薬機法条文に明記されているわけではなく、厚生労働省から出される「通知」により決まります。通知が出されるタイミングは決まっておらず、なおかつすべての通知が公開されるわけではありません。

さらに一度決まったルールが変更になるケースもあります。

たとえば以前は化粧品広告においてビフォーアフターの写真の掲示は不可とされていました。しかし薬機法における広告ルールを定めた「医薬品等適正広告基準」が平成29年9月に改訂され、現在では一定の範囲であればビフォーアフターの掲示は可能です。

2:大げさな表現を使う=誇大広告(第66条)

薬機法はその第66条に誇大広告の禁止を規定しています。

誇大広告等

何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。

2.医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。

3.何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。      (第66条)

誇大広告は商品やサービスの効果効能などが実際よりも著しく良いものであるとの誤認を消費者に与えないようにするための規定です。

そのためいわゆる「大げさな表現」「誇張表現」だけでなく

  • 医師などによる推薦表現
  • 「強力」「強い」などの表現
  • 「業界初」「No.1」など最上級の表現

なども誇大広告とみなされます。

注意したいのが誇大広告の規制対象は、製造業者や販売業者に限定されない点。「何人も」とあるように、広告を掲載するメディアやアフィリエイターも取り締まり対象となります。

もちろん個人であっても関係なく罰則を科されます。

3:医薬品でないものを医薬品として売る、貯蔵する、授与する=未承認医薬品等の販売、授与(第14条1項、9項、第55条等)

AGA治療薬

薬機法では第14条1項、9項、第55条等で未承認医薬品等の販売、授与を禁止しています。

簡単にいうと、「医薬品でないものを医薬品として売ったり、貯めたり誰かに渡したりしてはいけませんよ」というものです。

(医薬品、医薬部外品及び化粧品の製造販売の承認)

第十四条 医薬品(厚生労働大臣が基準を定めて指定する医薬品を除く。)、医薬部外品(厚生労働大臣が基準を定めて指定する医薬部外品を除く。)又は厚生労働大臣の指定する成分を含有する化粧品の製造販売をしようとする者は、品目ごとにその製造販売についての厚生労働大臣の承認を受けなければならない。

 9第一項の承認を受けた者は、当該品目について承認された事項の一部を変更しようとするとき(当該変更が厚生労働省令で定める軽微な変更であるときを除く。)は、その変更について厚生労働大臣の承認を受けなければならない

(販売、授与等の禁止)

第五十五条 第五十条から前条までの規定に触れる医薬品は、販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列してはならない。

ポイントは実際に売ったりあげたりしなくても、所有しているだけでアウトとなる点です。所有しているのは売ったりあげたりする目的があるからとみなされるんですね。

罰則

では薬機法に違反した場合どのようなペナルティをうけるのでしょうか。違反行為とその罰則を順番に見ていきましょう。

未承認医薬品の広告

未承認医薬品の広告をした場合、「2年以下の懲役または200万円以下の罰金もしくはその両方」が課せられるおそれがあります。

誇大広告

誇大広告をした場合も同じく「2年以下の懲役または200万円以下の罰金もしくはその両方」が課せられるおそれがあります。

誇大広告については2019年の薬機法改正で、令和3年8月1日より課徴金制度がスタートすることが決定しています。対象額は違反行為をしていた期間の売上額の4.5%です。

未承認医薬品等の販売、授与

未承認医薬品等の販売、授与をした場合、「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはその両方」が課せられるおそれがあります。

最近の摘発事例とその傾向

2020年の摘発事例

2020年 3月31日「新型コロナウイルスの増殖を抑える」で逮捕

<概要>

「新型コロナウイルスの増殖を抑える」と医薬品としての効能があるように装ってサプリメントを宣伝したとして健康食品販売会社「日本ホールフーズ」(東京都千代田区)の佐藤格社長(72)と社員の男(44)、法人としての同社を医薬品医療機器法違反(未承認医薬品の広告、販売目的貯蔵)で逮捕。

<内容>

2月3~28日、同社の通信販売サイトで、サプリメントについて「新型コロナ対策」などと宣伝し、3月16日、無許可のまま事業としてサプリメント175個を販売目的で貯蔵していた。

2020年 6月8日「コロナウイルスの感染予防」で書類送検

<概要>

大阪市東成区の薬局運営会社長の男と法人としての同社を医薬品医療機器法違反(未承認医薬品の広告、販売目的陳列)の疑いで書類送検。

<内容>

4月中旬~下旬、厚生労働省からの承認を得た医薬品ではないのに、植物の根から精製した漢方薬を含むとうたう健康食品を、「コロナウイルスの感染予防に」と書かれた説明文を掲示するなどして宣伝したほか、商品を並べた疑い。

2020年7月20日「肝臓疾患の予防効果」で逮捕

<概要>

医薬品ではない健康食品について「肝臓疾患の予防などに効能効果がある」という旨の内容を記事LP内に記載した健康食品販売会社「ステラ漢方」(福岡市博多区)の広告担当の従業員の男(29)=同市中央区=と、広告代理店など3社の役員ら男女5人、計6人を医薬品医療機器法違反(未承認医薬品の広告)容疑で逮捕。

<内容>

2019年9月~2020年3月、6人は共謀し、ステラ社のサプリメント「肝パワーEプラス」について、「『無敵の肝臓』を手に入れる方法を入手」「ズタボロだった肝臓が半年で復活…?!」などと標ぼうした。

2020年11月24日 未承認医薬品の販売目的所持で逮捕

<概要>

未承認の医薬品を販売目的で所持したとして、愛知県警は24日、自称フリーカメラマンの沢田海成容疑者(21)を医薬品医療機器法違反(未承認医薬品の販売目的所有)容疑で逮捕。

<内容>

沢田容疑者は8月20日、未承認の妊娠中絶薬や避妊薬など計12錠を所持した疑い。

2020年12月3日未承認医薬品の広告で逮捕

<概要>

未承認の医療機器の広告をネット上に出稿した中国籍の陳天賜容疑者(35)を医薬品医療機器法違反(未承認医薬品の広告)容疑で逮捕

<内容>

医療機器として承認されていない非接触タイプの体温計などの広告をネット上に出したとして、中国籍の陳天賜容疑者(35)=東京都江戸川区北小岩3丁目=を医薬品医療機器法違反(未承認医薬品の広告)容疑で逮捕

ここに挙げた事例はほんの一部です。最近の摘発事例について詳しくはこちらの記事で解説しています。

最近の摘発傾向

昨年から今年にかけてはコロナ関連の事例で総数としても多いですが、それを差し引いてもかなりの数の摘発がされています。

厚生労働省は「医薬品医療機器法の広告に関する規制」のなかでインターネットパトロール事業を平成26年度よりスタートしており、広告規制を強化する指針を示しています。規制強化の流れにあることは間違いなさそうです。

平成26年4月より、国内外のインターネット販売サイトに対する能動監視(キーワードによる検索等)を行う委託事業を開始。

 医薬品医療機器法違反が発見された場合には、インターネット関連事業者(レジストラ等)に対し、サイト閉鎖等の依頼を行う。

引用元:医薬品医療機器法の広告に関する規制|厚生労働省

実際、薬機法(医薬品医療機器法)違反の取り締まりは範囲、基準共に年々厳しいものになっています。

たとえば前述の2020年7月のステラ漢方の事例。

本件では、代理店が作成した広告で広告主まで責任を問われているのです。厳しい判断といえますが、ご説明のとおり国も積極的に監視する方向性を示していますから今後同様のケースでも容赦なく摘発されるものと思われます。

わけても誇大広告については

景品表示法の「優良誤認表示の禁止(第5条1項)」「有利誤認表示の禁止(第5条2項)」、健康増進法の誇大表示の禁止(第31条1項)でも規定されており、注意が必要です。

薬機法上セーフとなるためのコツ

成功 POINT ポイント 鍵

では、薬機法で違反にならないためにはどのようなことに配慮すればよいのでしょうか。

医薬品的な効果効能とみなされないためのポイント

代替表現をうまくつかう

摘発事例のなかでも多いのが、「シワ改善」「ニキビが治ります」など医薬品的な効果効能の標ぼうをしてしまうケースです。ですからヘルスケア業界の実務においてまず注力すべきが、”いかに医薬品的な効果効能とみなされないよう効果効能をアピールするか”といえます。

具体的なテクニックとしては、たとえば次のようなものがあります。

1.状況にフォーカスする

免疫力向上(NG)→「仕事を絶対に休めないあなたに」

2.どうとでも解釈できる(どうとでもいい逃れできる)表現を使う

○○改善(NG」→「○○ケア」「○○対策」

3.ぼかした表現を使う

滋養強壮(NG)→「活き活き」「ハツラツ」

ED改善(NG)→「男の自信に」

4.オノマトペ(擬態語、擬音語)を使う

冷え症改善(NG)→「寒さで手足がジンジンする方へ」「ポカポカに導く」

詳しく書きすぎることで違反となるケースが多いですから、むしろ「端的に書く」ことを心掛けましょう。

認められた効能の範囲内で表現する

誤認されやすい点なのですが、化粧品や医薬部外品、健康食品などの非医薬品も、何ひとつ効果をうたえないというわけではありません。認められた範囲であれば効果効能の標ぼうはできます。

ですから化粧品や医薬部外品、健康食品、それぞれどこまでがいえるのかをキチンと把握しておくことも大切です。

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誇大表現とみなされないためのポイント

ポイント

最大級の表現を使わない

薬機法では最高・最大といった最大級の表現は認めていません。以下の表現はすべてNGとなります。

NG表現

  • 「最高のききめ」
  • 「無類のききめ」
  • 「肝臓薬の王様」
  • 「胃腸薬のエース」
  • 「世界一を誇る○○KKの○○」
  • 「比類なき」
  • 「売上げNo.1(注)」

効果や売り上げについてだけでなく、製造方法や成分についても最大級の表現は不可です。

NG表現

  • 「近代科学の枠を集めた製造方法」
  • 「理想的な製造方法」
  • 「家伝の秘法により作られた・・・」
  • 「特許取得の」

他社批判をしない

誇大広告のうち、特に摘発されやすいのが他社批判を伴っているケースです。広告表現における薬機法の考え方などをまとめた医薬品等適正広告基準9「他社の製品の誹謗広告の制限」では他社の製品を誹謗する広告を禁止しています。

医薬品等の品質、効能効果、安全性その他について、他社の製品を誹謗するような広告を行ってはならない。

(引用元:医薬品等適正広告基準)

他社の製品を誹謗する広告とは次のようなものです。

①他社の製品の品質等について実際のものより悪く表現する場合
②他社の製品の内容について事実を表現する

注意しなければならないのが事実であってもNGとなる点。以下のような表現は他社誹謗になります。

・「他社の口紅は流行おくれのものばかりである。」

・「どこでもまだ××式製造方法です。」

ヘルスケアビジネスでは薬機法の知識は「キホンのキ」しっかりと把握しておこう

成功アイデア

美容健康業界にかかわるビジネスをしている場合、法人・個人問わず薬機法を必ず知っておかなければなりません。

特に昨今は規制強化の流れにあります。現段階では問題のある広告も取り締まられておらず野放し状態ですが、アフターコロナに一挙摘発ということも十分あり得ます。

また薬機法の規制はどんどん変わっていくので、普段から法の動きに注意し、情報を最新の状態にアップデートし続けることが大切になります。

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