ダイエット市場は莫大で、ダイエットサプリ関連の広告について表現のご相談やチェック・リライトのご相談をよくいただきます。実は「やせる」「減量」「痩身」「ダイエット」はすべてが薬機法違反になるわけではありません。本稿ではサプリメントや化粧品で「やせる」「ダイエット」はどこまでいえるのか、いいかえ表現の考え方を紹介します。信ぴょう性については以下です。
- 景品表示法務検定アドバンス(消費者庁、公正取引協議会主催)
- 消費者庁発出の公的文書の誤りを指摘改善させた実績
- 食品の適正表示推進者(東京都福祉保健局主催)など
を所有する専業薬機ライターが解説。
健康食品で「やせる」「ダイエット」そのものは不可とされていない
誤解されがちですが、単に「やせる」「ダイエット」と標ぼうすること自体は禁止されていません。
低カロリーロジックなら「やせる」や「ダイエット」も認められる
実は「やせる」「ダイエット」の語そのものが違反になるわけではありません。
厚生労働省が昭和60年に発出した通知「痩身効果等を標ぼうするいわゆる健康食品の広告等について(薬監第38号厚生労働省昭和60年6月28日)」内、「痩身効果等を標ぼうするいわゆる健康食品の広告等の注意点(チェックポイント)」には次のように記載されています。
医薬品的な効果効能の標榜がないこと。
ア 痩身効果について
単にカロリーの少ないものを摂取することにより、摂取する総カロリーが減少して、結果的に痩せることは医薬品的効能効果とはいえない
痩身効果等を標ぼうするいわゆる健康食品の広告等について(薬監第38号厚生労働省昭和60年6月28日)
商品に含まれるカロリーが低いことにより、結果的に摂取カロリーが減り、痩せる。このプロセスにおいて医薬品的な効果には触れていません。そのため低カロリーロジック「やせる」「ダイエット」「痩身」などの表現も薬機法上認められるということになります。
たとえば次のような表現は薬機法上問題となりません。
【OK】
- 「○○cal!スリムになりたいあなたにおススメ」
- 「食べたいけどカロリーが気になる…そんな方には○○(商品名)」
近年増えている「置き換えダイエット系の商品」はこの低カロリーロジックを使っているわけです。
痩身効果を標ぼうしても置き換えダイエット、すなわち低カロリーロジックであれば薬機法上の問題は生じません。
ただし、置き換えダイエットでも景品表示法には注意が必要です。置き換えダイエット系の商品でも措置命令が発出された事例があります。
例)
- 株式会社シエルに対する措置命令(2018/10/30)
- 株式会社シーズラボに対する措置命令(2021/11/24)
ひと昔前までは置き換えダイエット系の商材で摘発を受けるケースは皆無で、「置き換えダイエットは安全」と考えられていました。しかし近年では置き換えダイエット商材に対する措置命令が発出されています。
「ダイエット」の文言も薬機法上は問題ない
さらに健康増進法が規定する栄養表示基準では、栄養成分が低い旨の表示ができる食品は「ダイエット」といえるというル
ールがあります。
たとえばカロリーの場合、100 グラム当たり 40 キロカロリー以下のものについて、カロリーが低いという意味で「ダイエット」は標ぼう可能です。
体内の組織などへの作用による痩身効果は不可
他方、体内の組織への働きにより痩せるかのような表現は認められません。
上記痩身効果等を標ぼうするいわゆる健康食品の広告等について(薬監第38号厚生労働省昭和60年6月28日)内「痩身効果等を標ぼうするいわゆる健康食品の広告等の注意点(チェックポイント)は次のように続きます。
次のような人体に対する作用によって痩せるとすることは、医薬品的な効能効果に当たるので、このような効果を標榜することは認められない。
(ア)体内に蓄積された脂肪分等の分解排泄。
(イ)体内組織。体内組織。細胞等の機能の活性化。
(ウ)宿便の排泄。整腸、瀉下。
(エ)体質改善。
(オ)その他。
痩身効果等を標ぼうするいわゆる健康食品の広告等について(薬監第38号厚生労働省昭和60年6月28日)
成分の作用による痩身効果も認められない
成分の作用による痩身効果も、未承認医薬品広告(薬機法第68条)に該当しNGとなるおそれがあります。
(承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止)
第六十八条 何人も、(中略)第二十三条の二十五第一項若しくは第二十三条の三十七第一項の承認又は第二十三条の二の二十三第一項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。
薬機法第68条|e-gov
【NG】
- やせる
- 脂肪燃焼
- 代謝促進
認められない表現と認められる表現
では認められない表現と認められる表現をみていきましょう。
認められない表現
まずは認められない表現から見ていきましょう。変化だけでなく、体の部位について触れると薬機法上のリスクが生じます。
【NG表現】
- 痩せる
- スリムに
- おなかがへっこむ
- 脂肪を燃やす
- 脂肪撃退
- 代謝促進
- セルライトを撃退
- 減量
- サイズダウン
- ダイエットサポート
- スリミング
- フォーミング
- セルライト
- 体型キープ
- 太りにくい体に改善
ダイエットサポートは一見すると問題ないように思えますが、ダイエットをサポートできる効果がある=痩身効果があると認識されるので不可です。
「ダイエッターサポート」とすればダイエッター=「痩せようと頑張っている人」をサポートするというロジックが通るので不可にはならないでしょう。(ただ限りなく黒に近いグレーです。Life-lighterでは推奨しません。)
「燃えやすい体質」「基礎代謝をアップ」など代謝への言及も認められません。
以下の表現は化粧品等の適正広告ガイドライン【2020年版】でNGであることが明記されています。
- スリミング
- フォーミング
- セルライト
以下はダイエットサプリで処分対象となった表現の一部です(東京都福祉保健局・都庁見解含む)
ダイエットサプリ広告の薬事法違反表現事例
- 体脂肪や内脂肪に働きかけるので、ウエストを集中的に引き締めます。
- お通じも改善され、肌もキレイになりました。
- ○○成分が脂肪を燃焼します。脂肪を分解します。
- 糖分の吸収を抑えてポッコリおなかをスッキリ!
- 太りにくい体に改善。
- 脂肪がたまりにくい体へ
- 脂肪を燃えやすい体質に改善します。
- 食べたことを、なかったことに!
- 運動も食事制限も必要なし!毎日3粒飲むだけで理想のスタイルに。
- 飲むだけ簡単、脂肪がどんどん燃焼するのが分かる!
- ○○成分が基礎代謝をアップ!
- ガンコな脂肪がメラメラ燃える。
- 食欲が抑えられ、空腹感をあまり感じなくなりました。
- 医学博士が学会で発表した今話題の○○成分が、脂肪をどんどん燃焼させる。
- 糖分の摂取を抑えます。
認められる表現
では、どのような表現なら可能なのでしょうか。
【OK表現】
- くびれを目指す
- ボディメイク-
- 〇㎏を目指す
- 着たい服が着られるようになりました
- スキニーパンツが似合うように
- ダイエットに燃えるあなたへ
- 健康的な身体づくりのために
- ダイエット中の栄養補給
- きれいになったねといわれる
- きれいなシルエット
- 食べる喜びを取り戻す
痩せる・痩身効果のいいかえの考え方・いいかえテクニック
次に、やせる表現のいいかえの考え方やコツをいいかえテクニックと合わせて紹介していきます。
美容・健康・栄養補給にとどめる
サプリメントなどの健康食品や化粧品は医薬品の領域に踏み込むと薬機法違反になります。
美容・健康・栄養補給の範囲内であれば、基本的に医薬品的とみなされることはありません。そのため美容・健康・栄養補給をこえないような表現を使うのがポイントです。
- きれいなシルエット(美容)
- 健康的な身体づくりのために(健康維)
- ダイエット中の栄養補給(栄養補給)
【健康食品や化粧品のセーフゾーン】
- 美容
- 健康
- 栄養補給
OK
- きれいなシルエット(美容)
- 健康的な身体づくりのために(健康)
- ダイエット中の栄養補給(栄養補給)
ただ注意を要するのが、文字面だけ美容・健康・栄養補給の範囲内であればよいわけではない点です。
たとえば「理想の体型をキープ」は体型を「キープ」するといっているのだから健康の範囲内と思われるかもしれません。しかし医薬品効果効能の暗示にあたり不可となるおそれがあります。
「お腹のラインが気になって飲み始めました」も同様にNGリスクがあります。
未来に着目する
変化ではなく未来のベネフィットに着目するのもよいでしょう。
着たい服が着られるように、食べる喜びを取り戻す、きれいになったねといわれるなど、変化後の嬉しい未来にフォーカスするのがコツです。
OK
- くびれを目指す
- 着たい服が着られるように
- 食べる喜びを取り戻す
- きれいになったねといわれる
正しい知識でホワイトな訴求を
ダイエット関連の広告規制は今回紹介したもの以外にもいろいろなものがあり、非常に複雑です。
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