法的にセーフ?「夫医師”え?シミならアレで一瞬だよ?”」系の広告

景品表示法
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ここ数年、webサイトのレコメンドウィジェット欄や記事下などで「夫の医師”え?シミならアレで一瞬だよ?”」「夫”何事?トイレが脂まみれだけど…”」といった調子の広告をよく見かけるようになりました。具体的な内容にこそ言及していないものの、医薬品的な効果、著しい効果を想起させます。果たして主・目的語を代名詞に置き換えたり、省いたりすれば、薬機法や景品表示法上問題ないのでしょうか。薬事法管理者が解説します。

「夫の医師”え?シミならアレで一瞬だよ?”」系の広告の違法性は

記事下などにでてくる「夫の医師”え?シミならアレで一瞬だよ?”」といったテイストの広告(以下「アレで一瞬だよ?系広告」)。具体的な内容にこそ言及していないものの、医薬品的な効果、著しい効果を想起させます。アレで一瞬だよ?系広告は法的に問題はないのでしょうか。

薬機法や景品表示法に抵触するおそれがある

結論から申し上げますとケースによっては薬機法や景品表示法に抵触すると考えられます。

薬機法や景品表示法では

  • 医薬品的な効能効果
  • 具体的変化
  • 他の製品と比較し優れているかのような表現

などの標ぼうは禁止されています。

誤認されがちですが、禁止表現を直接標ぼうしなければ大丈夫というわけではありません。

薬機法や景品表示法の違法性は広告全体の印象で決まる

広告表現における薬機法や景品表示法の違法性は、「当該表示が消費者を誤認させうるか否か」で決まります。そして消費者を誤認させうるか否かは暗示や間接的表現を含め表示全体から判断されるとの判例があります。

つまり部分としては医薬品的な効果効能、具体的変化などを標ぼうしていなくても全体としてみたときに医薬品的な効果効能があったり、他商品と比較して著しく優れていたりするかのような印象を消費者に与えるものは違反となる可能性があるけです。

実際、過去に数字も変化も一切うたっていないのに景品表示法違反で摘発された事例があります。(2017年のだいにち堂事件)

だいにち堂はサプリ「アスタキサンチンアイ&アイ」について

・「ボンヤリ・にごった感じに!!」

・「ようやく出会えたクリアでスッキリ!!」

などと広告していました。

 

ですが医薬品的な効果効能はおろか、数値や変化も一切表示していませんでした。ところが、2017年3月、優良誤認表示にあたるとして消費者庁から措置命令を受けたのです。

当時だいにち堂はこれら表現は抽象的表現であり、商品の優良性を示すものではないと主張し措置命令撤回を求め2018年8月に提訴しました(2020年3月に棄却されています)。

このだいにち堂事件は「抽象的な表現でも摘発対象になりうる」ことを示し、当時広告業界を震撼させました。

規制されている表現を直接的に掲示しなくても、広告表示全体から判断して消費者にを誤認を与えかねない(と消費者庁がみなした)場合、不当表示となり、薬機法や景品表示法に抵触することがあります。

違反となるのはどんな場合?

では「アレで一瞬だよ?」系の広告が違反となるのはどのようなケースなのでしょうか。よく見られるケースについて解説していきます。

しばり表現を省略しているケース

たとえば冒頭の「夫医師”え?シミならアレで一瞬だよ?”」について。

シミについて化粧品で認められているのは「日焼けによるシミ・くすみを防ぐ」のみです。しばり表現は省略できず、必ず「日焼けによる」を付さなければなりません。したがってシミをうたっている時点で薬機法違反となります。

 

シミを増やすものを販売することはありませんから、シミについて言及する広告では

  • シミを消す
  • シミを薄くする

などすべて「シミ改善効果」をうたっているとみなされます。

 

単独では使用できないものには他に「くすみ」や「ソバカス」「シワ」などがあります。

また「医師」「一瞬」は薬機法違反第68条「誇大広告」の他、景品表示法第5条「優良誤認表示」に抵触するおそれがあります。

医薬品的な効果効能を連想させるケース

たとえば

 

「え?ニキビならお風呂でアレをすればそっこーだよ?」といった表示。

 

目的語を代名詞に置き換えてぼかしていますが、ニキビも増やす商品というのも通常はありえません。ニキビ改善を想起させるのでアウトとなるおそれあります。

 

では「妻、涙。「長年の宿便が…」」はどうでしょうか。

目的語を省いているパターンです。こちらも薬機法上の問題があります。宿便とはお腹にたまった便です。同じ理屈で、宿便について言及する広告はすべて便秘解消をうたっていると判断されます。

 

「解消」「改善」といった目的語を省略したところで、医薬品的な効果をうたっていることになり、薬機法上の問題が生じます。

暗示的な表現を用いてもアウト

禁止表現そのものは使わず、抽象的な表現に替えるパターンはどうでしょうか。

たとえば次のようなものです。

 

「毎日お風呂でアレをするだけで黒ずみにサヨウナラ!」

「カラスの足跡を消す」

 

「黒ずみにサヨウナラ」は「ソバカスやくすみの改善」を想起させるので不可です。

「カラスの足跡」もシミを連想させるため認められません(昭和62年11月25日厚生省通知)。

 

つまり代名詞に置き換えたり、一部省略したりして禁止表現そのもを避けても、広告を全体としてみたときに効果を想起させるような広告内容は違法となりうるということです。

大げさな表現を用いているケース

ビフォーアフター

過剰な表現を用いているものも不可となります。たとえば以下のようなものです。

「アレを使うだけで1週間で‐10キロ!」

「塗った翌朝ツルッツルに」

 

そもそも1週間で食事制限なしで10キロ減量することはあり得ません。運動や食事制限なしでの痩身効果は、認めることはできないというのが行政の考えです。

 

「肌に弾力を与える」

「滑らかにする」

までなら化粧品の効能56の範囲内(化粧品の効果効能「32肌を滑らかにする」「30肌にハリを与える」「31肌にツヤを与える」が該当)なので認められます。しかし「モッチモチ」とすると認められた範囲を逸するので不可となる可能性が高いでしょう。

 

過剰な表現は誇大広告(薬機法第66条、健康増進法第32条)、優良誤認表示(景品表示法第5条)に該当するおそれがあります。

 

留意したいのが、写真や図で示すのもアウトとなる可能性があること。平成29年9月に医薬品等適正広告基準に改訂され、現在ではビフォーアフターの掲示そのものは認められるようになりましたが、効能を逸脱しない範囲内に限られます。

抽象度が高いものは必ずしもアウトではない

とはいえ、「アレで一瞬だよ?」系の広告がすべて違法となるわけでもありません。

たとえば

「夫”何事?トイレが脂まみれだけど…”」

など湾曲的で、抽象度が高いパターン。よく見かけますがこちらは薬機法上も景品表示法上も問題ないでしょう。なぜなら薬機法や景品表示法上問題となるワードも使っておらず、効果効能についても触れていないからです。

おそらく”商品の摂取により代謝が促進され体内の脂肪が落ちる”ことをいわんとして”トイレが脂まみれ”と表現しているのでしょう。あるいは脂肪分解作用をPRしたいのかもしれません。いずれにせよ「夫”何事?トイレが脂まみれだけど…」の文章からは医薬品的な効果効能があったり、他商品と比較して著しく優れていたりするかのような印象を受けないので違反とはなりません。

何故摘発されてないのか

「しかし、代名詞に置き換えているだけの広告を出しているところは今もたくさんあるじゃないか!なぜ許されているんだ?」と思われる方もいるでしょう。

この種の広告はなぜ摘発されないのでしょうか。

薬機法違反では摘発されているが社名公表されないため分からないだけ

おそらく薬機法違反としては摘発されていると思われます。薬機法上は完全にアウトだからです。

実は薬機法違反で摘発を受けても、よほど悪質なケースを除いて行政指導レベルで事業者名が公表されることはありません

取り締まられていないように感じるのは、現実には取り締まりもあり摘発を受けている事業者も存在するものの、その情報が入ってこないためと考えられます。

 

景品表示法は個人主体の広告は規制対象外

一方、景品表示法としては取り締まりすらされていない可能性があります。というのも景品表示法は事業者を規制する法律であり、個人はさばけないからです。

景品表示法はその基本の考え方を以下のとおりに規定しています。

「景品類の提供若しくは自己の供給する商品又は役務についての一般消費者向けの表示をする事業者に対して必要な措置を講じることを求めるもの」

 

つまり景品表示法は事業者を罰する法律で、広告の主体が誰であるかが問題になるわけです。

販売業者自らが広告を作成し配信していれば違反となりますが、アフィリエイターのような第三者が広告の主体であれば規制の対象にはなりません

「アレで一瞬だよ?」系の広告の多くは記事LPに誘導するものですが、そのほとんどが個人としてのアフィリエイターが主体となってつくられているため、取り締まりができないものと考えられます。

表現には細心の注意を

注意してください

「アレで一瞬だよ?」系の広告は薬機法や景品表示法上に抵触するリスクがあるので注意が必要です。とくに「え?まだ○○使っているの?」など特定の業界・商品の批判にあたるものは不正競争防止法違反となる可能性があります。また法律違反とはならなくても、この手の広告を不快に感じているユーザーは少なくありません。反感を買うおそれもありますから、表現には細心の注意を払うことが肝要です。

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