今世界中で新型コロナウィルスによるパンデミックが起きています。日本も例外ではなく消毒液の売り切れは続出、マスクの買占め、転売も横行しています。
そうしたなか、にわかにでてきたのが「コロナウィルス予防」を訴求した商品です。
しかしコロナウィルスは未解明の部分が多く、予防効果を謳うとすべて景品表示法および薬機法違反になります。新型コロナウイルスに対する予防効果を標榜した場合の罰則などを消費者庁の改善要請事例とともに解説します。
新型コロナウイルスへの効果を標榜すると薬機法・景表法・健康増進法違反に
今世界中で騒ぎになっている新型コロナウィルス。日本も例外ではなく消毒液の売り切れは続出、マスクの買占め、転売も横行しています。
そうしたなかで「コロナ対策」と銘打った商品を売り出せば、多くの人の興味を引くこと可能です。売り上げも見込めるでしょう。
しかし「コロナウィルスに効く」かのごとき表記は、現段階ではすべて、景品表示法および健康増進法違反になるので注意が必要です。
コロナウイルスは未知の部分が多く予防効果の立証は不可能
コロナウイルスの性質や特性は現段階では明らかになっていません。メカニズムが解明されていないものに対して、予防効果を立証することはそもそも不可能です。
したがって新型コロナウイルスに対する予防効果を標ぼうするウイルス予防商品については、現段階ではすべて客観性・合理性を欠くものであると考えられます。
ですから新型コロナウイルスに対する予防効果を標ぼうすると、一般消費者の商品選択に著しく誤認を与えるものとして、景品表示法第5条の「優良誤認表示」、健康増進法第31条の「誇大表示の禁止」の規定に違反します。
新型コロナウイルスの効果訴求で改善要請が出た事例
2020年3月10日、消費者庁から「新型コロナウイルスに対する予防効果を標ぼうする商品の表示に関する改善要請等及び一般消費者への注意喚起」が発表されました。
新型コロナウイルスに対する効果の訴求について、36の企業に改善要請を示しています。
1、いわゆる健康食品(カプセル、錠剤、粉末等)【23事業者40商品】
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違反するとどうなる?景品表示法・健康増進法違反のリスクを解説
景品表示法の「優良誤認表示」や健康増進法の「虚偽・誇大表示」の規定に違反した場合、行政処分や課徴金、場合によっては刑事罰に処されることがあります。
景品表示法違反のリスク
行政処分
措置命令
景品表示法はその第7条の2項で、広告の事業者に対して表示の裏付けとなる合理的資料を提出するよう求めることができると規定しています(不実証広告規制)。
15日以内に合理的根拠を示せない場合不当表示とされ、措置命令をうけることとなります。
【措置命令で下される命令】
- 違法な広告であったことを一般消費者に周知徹底
- 再発防止策を自社の役員や従業員に周知徹底
- 広告の停止
薬機法違反の行政指導では基本的に社名公表されませんが、景品表示法違反の場合は社名公表になるケースが少なくありません(悪質と判断された場合社名公表となります)。
課徴金(対象商品の売上額の3%)
原則として課徴金も課されます。
額は売上額の「3%」
対象期間は最長で摘発時からさかのぼって3年間(除斥期間)
です。
刑事責任
措置命令に従わなければ「最大2年の懲役および最大300万円の罰金」が課せられます
損害賠償責任
景品表示法の罰則ではありませんが、不法行為等により消費者に損害を与えた場合、損害を被った消費者に対して損害賠償責任を負うとする規定があります。(民法第709条「不法行為責任」)
健康増進法違反のリスク
行政処分
勧告
健康増進法に違反する表示を行った場合、厚生労働省よりその表示に関し必要な措置をとるべき旨の勧告を受けます(健康増進法第32条1項)。
措置命令
勧告を受けても措置をとらなければ、措置命令が出されます(健康増進法第32条2項)。
健康増進法の措置命令では多くの場合事業者名が公表されることとなります。
刑事処分
措置命令に従わなければ「6ヶ月以下の懲役、または100万円以下の罰金」に処せられます(健康増進法第36条2項)。
このほか信用失墜による売り上げの低下も免れないでしょう。
コロナ効果の訴求は感染拡大を招きかねない
また企業は利益云々ではなく「コロナウィルス効果を謳う商品の販売は感染拡大を招きかねない」ことも肝に銘じておかなければなりません。
効果を信じた消費者は対策の手を緩める
「コロナウィルスに効く」とされた商品を個入した消費者は、
- 感染予防できる
- 感染しても治る
と思い込みます。張りつめていた緊張は一気に解け、対策の手を緩めるでしょう。
安心して自粛期間中にできなかった食事会や飲み会に参加します。カラオケや夜の店、「3密」の場所にも積極的に出向くようになるかもしれません。
しかし実際には効かないので感染拡大する
ところが実際にはコロナウィルスに対する効果はありません。感染者が動き回ればあっという間に二次感染、三次感染と感染は拡がっていくでしょう。無症状感染もありえるコロナウィルスです。ひとたび感染拡大すれば、収拾がつかなくなってしまうことは容易に想像できます。
お隣の国で「塩水がコロナウィルスに効く」とのデマを信じ込んだ宗教団体が集団感染しましたが、今回の消費者庁の発表は、こうした事態を防ぐための措置です。
コロナウィルス効果の訴求は、自社に対する法的リスクにとどまらず社会全体に甚大なダメージを及ぼす可能性があることを忘れてはなりません。
コロナ効果を謳う広告は長期的に考えると悪手
現時点で、健康食品、マイナスイオン発生器、空間除菌剤等の商品についてはコロナウィルスに対する効果の根拠は認められません。
企偽広告が明るみになれば、信用を失墜します。一度失った信頼を取り戻すのは並大抵のことではありません。コロナ対策商品に限らず、消費者心理に付け込む悪質な販売手法は、短期的には利益が出ても、長い視野で見れば必ず損失になると心得ておきましょう。