いまさら聞けない化粧品と医薬品、医薬部外品、薬用化粧品の違い

2022年 最新薬事法薬機法
薬機法の専門家 橋本 駿

医薬品・医薬部外品・化粧品は、人体への作用の強さや目的によって分類されます。医薬品は病気の診断・治療・予防を目的とし、厚生労働省の承認を受けた成分を含みます。医薬部外品は医薬品と化粧品の中間に位置し、作用は穏やかですが有効成分と効果効能の表示が認められます。薬用化粧品もこの一種です。化粧品は美容や清潔を目的とし、効果は限定的で「化粧品効能56」の範囲に限られます。いずれも医薬品的な「治療効果」を示唆する表現は認められません。広告では承認範囲内での正確な訴求が重要です。

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目次

医薬品、医薬部外品、化粧品の定義

分類 定義 特徴 商品例
医薬品 病気の診断、治療、予防を目的とした医薬品医療機器等法により定義される物質。厚生労働大臣の承認が必要。 • 有効性と安全性が臨床試験で証明されている
• 処方箋が必要な医薬品と、OTC医薬品がある
• 副作用のリスクがある可能性
• 効能効果が明記される
• 風邪薬
• 抗生物質
• 痛み止め
• 糖尿病治療薬
医薬部外品 医薬品と化粧品の中間に位置する製品。厚生労働大臣が指定した成分を配合し、一定の効果が認められる製品。 • 医薬品よりも緩和な効能効果を持つ
• 治療というより予防・衛生を目的
• 医薬品ほど厳格な承認プロセスではない
• 効能が限定的に表示できる
• 育毛剤
• 薬用歯磨き粉
• 薬用シャンプー
• 消臭スプレー
• 虫除けスプレー
化粧品 皮膚や毛髪を清潔にし、健やかに保つことを目的とした製品。医薬品医療機器等法により規定される。 • 治療効果がない
• 美容目的が主体
• 承認プロセスが簡潔
• 効能表示に制限がある(医学的効能は表示不可)
• 安全性基準は緩い
• 化粧水
• 乳液
• ファンデーション
• シャンプー・リンス
• 香水

医薬品

医薬品は「治療」を目的としたで厚生労働省より配合されている有効成分の効果が認められたものを指します。

ex.

  • 発毛剤
  • 整腸剤
  • 頭痛薬

国内で医薬品として流通させるには、厚生労働大臣による製造販売承認が必要です。


未承認のもので、医薬品・医薬部外品・化粧品もしくは医療機器に該当しないものは「効能」「効果」をうたうことはできません。

「未承認医薬品」ってナニ?

よくニュースなどで「未承認医薬品販売の疑いで…」などと報道されていますよね。あれってなんなの?と思われている方も多いのではないでしょうか。
病気への効果や身体の構造・機能への効果などを「目的」としているものは、実際の効果の有無に関係なく医薬品とみなされます。しかし医薬品として製造販売するには厚生労働大臣の許可が必要です。
承認や許可を受けていないにもかかわらず、病気への効果や身体の構造・機能への効果などをうたう商品は、「未承認医薬品」または「無承認無許可医薬品」と呼ばれ、処罰の対象になります。 ただし保健機能食品(特定保健用食品・栄養機能食品・機能性表示食品)として許可を受け、その認められた範囲内であれば効果効能をうたうことができます。

医薬部外品

医薬部外品とは簡単にいうと、医薬品と化粧品の中間に位置するものです。

医薬部外品の例

  • 育毛剤
  • 日焼け止め
  • 虫歯予防歯磨き粉

厚生労働省が承認した効果・効能に有効な成分が、一定の濃度で配合されていて、承認の範囲内であれば成分や効果効能を標ぼうできます

医薬部外品で認められる効果効能の範囲は次の通りです。

【化粧品等の適正広告ガイドライン 2020年度版】より抜粋

「○○を防ぐ」という効能効果で承認を受けているものは、単に「○○に」等の表現は認められません。

ただし、承認された効能効果が明瞭に別記されていれば単に「○○に」等の表現も可能です。

薬用化粧品

スキンケア

薬用化粧品とは医薬部外品のうち、化粧品的な働きをするものです。厚生労働省が承認した効果・効能に有効な成分が、一定の濃度で配合されています。

薬用化粧品の例

  • 薬用洗顔料
  • 薬用石鹸
  • 薬用シャンプー

薬用化粧品は承認の範囲内で広告することが原則です。ただ次の事柄に配慮すれば化粧品の効能効果のうち、それぞれの種別に対応する効能効果を併せて標ぼうすることができます。

1)医薬部外品本来の目的が隠ぺいされて化粧品であるかのような誤認を与えないこと。

2)殺菌剤配合のシャンプーまたは薬用石けん等は化粧品的な使用目的、用法で使用された場合に、

保健衛生上問題となるおそれのあるものではないこと。

3)化粧品の効能効果として標ぼうしている部分が、あたかも医薬部外品の効能効果として承認を

受けたものであるかのような誤認を与えないこと

たとえば「ふけ・かゆみを防ぐ」という効果の承認を受けた薬用リンスがあったとしましょう。

この場合、「頭皮にうるおいを与えます」との表示は認められます。化粧品効能56の5に「頭皮、毛髪にうるおいを与える」があるからです。

他方で「頭皮にうるおいを与えるリンスです」とするのは認められません。本来の医薬部外品としての目的「ふけ・かゆみを防ぐ」が隠され、化粧品であるかのような印象を与えるためです。

また「頭皮への保湿効果が認められています」も、頭皮への保湿効果が医薬部外品の効能効果として承認を受けたものであるかのような印象を与えるためNGとなります。

「ふけ・かゆみを防ぐ」という効果の承認を受けた薬用リンス

  • 「頭皮にうるおいも与えます」→化粧品効能56「頭皮、毛髪にうるおいを与える(化粧品効能5)」に該当
  • 「頭皮にうるおいを与えるリンスです」→本来の医薬部外品としての目的「ふけ・かゆみを防ぐ」が隠され化粧品であるかのような印象を与える
  • 「頭皮への保湿効果が認められています」→あたかも保湿効果が医薬部外品の効能効果として承認を受けたものであるかのような印象を与える

薬用化粧品の効果効能範囲は次の通りです。

【化粧品等の適正広告ガイドライン 2020年度版】より抜粋

化粧品

化粧品は医薬部外品と比較してもさらに効能・効果が緩和で標ぼうできる範囲が限られています。化粧品の効果効能の範囲は次の通りです。

【化粧品等の適正広告ガイドライン
2020年度版】より抜粋

化粧品のうち、厚生労働省が承認した効果・効能に有効な成分が一定の濃度で配合されているものが「薬用化粧品」それ以外が「一般化粧品」という位置づけとなります。

<「化粧品」「薬用化粧品」「医薬部外品」の関係性>

「化粧品」「薬用化粧品」「医薬部外品」の関係性

医薬部外品と化粧品の一番の違いはいえる範囲

医薬部外品と化粧品の広告実務上の最も大きな違いは標ぼうが認められる範囲です。

医薬部外品は承認された範囲内であれば効果効能をうたえる

「医薬部外品」には、厚生労働省が承認した効果・効能に有効な成分が一定の濃度で配合されていて、承認の範囲内であれば成分の名前や効能・効果を表示することができます。

医薬部外品は承認の範囲内の効果をうたえる

  • 毛髪・頭皮の汚臭を防ぐ
  • あせも・しもやけ・ひび・あかぎれ・ニキビを防ぐ
  • 日焼後のほてりを防ぐ
  • メラニンの生成を抑え、シミ・ソバカスを防ぐ 

承認されていない効果はうたえない

効果表で対応するものであっても、承認を得ていない効果はうたえないので注意が必要です。

たとば効能表では、育毛剤に対応する効果は「育毛、薄毛、かゆみ、脱毛の予防、毛生促進、発毛促進、ふけ、病後・産後の脱毛、養毛」となっています。

しかし、育毛剤であってもふけやかゆみへの効果が承認されていない場合、育毛剤ふけやかゆみへの効果を訴求することは認められません。

化粧品でうたえるのは原則56の効果効能のみ

一方の「化粧品」は「医薬部外品」と比べて表示できる効能・効果が緩和で、かつ限定されています。基本的にうたえるのは先ほどご紹介した56の効果効能のみです。

(例)

  • 香りにより毛髪、頭皮の不快臭を抑える
  • 肌を整える
  • 日焼けを防ぐ
  • 日焼けによるシミ・ソバカスを防ぐ 

など

ただしメーキャップ効果であれば標ぼうが認められています。

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実はコレもOK|化粧品広告で許される「メーキャップ効果」はどこまで 薬機法により化粧品で広告できる表現は規制されていますが、「メーキャップ効果」の標ぼうは認められています(化粧品等の適正広告ガイドライン【2020年版】。メーキャップ効果とは「色彩により、覆う、隠す、見えにくくする等の物理的効果」です。つまり「色彩効果」のほかにも「物理的効果」がうたえます。ただし色彩効果以外の物理的なメーキャップ効果は

化粧品も医薬部外品も医薬品的な治療効果の標ぼうはNG

医薬品的な治療効果があるかのような表現をすることは、「化粧品」でも「医薬部外品」でも認められません。

NG

  • ニキビが治る
  • シミが消える
  • しわがなくなる
  • 髪が生える 

いえるのは

  • 予防
  • 維持
  • 美容
  • 栄養補給(前後関係によっては不適切と判断します。)

までです。

化粧品と医薬部外品、医薬品の違いをおさえ、表現を考えよう

アイデア化粧品や医薬部外品は、表現できる効果効能の範囲が異なります。違いをキチンと理解し、認められた範囲内でどう表現していくかが大切です。

Life-lighterでは、日本でただ一人消費者庁の公的文書の誤りを指摘・是正に貢献した実績をもち、消費者庁と公正取引協議会の資格「景品表示法務検定」のアドバンスクラスを取得済(合格者番号APR22000 32)、わかさ生活に薬機法の専門家としてインタビューをうけた実績などをもつ専業薬機法ライターが広告法務をサポートしています。

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橋本 駿
消費者庁の誤りを指摘した薬機法の専門家
【この記事の著者】
薬機法や景品表示法などの専門家。NTTDocomoやハウス食品、富士薬品など大手企業との取引実績多数。
2023年には消費者庁の公的文書の誤りを指摘・改善、2024年にはわかさ生活に薬機法広告の専門家としてインタビューを受ける。
現在は専業薬機法ライターとして記事制作や表現のチェック、広告に関するコンサルティング、法務研修、講演活動などをおこなう。
消費者庁・公正取引協議会の「景品表示法務検定アドバンスクラス(合格者番号APR22000 32)」や東京都福祉保健局の資格を有する。その他薬機法関連の民間資格ももつ(薬事法管理者資格など)。
2022年 最新薬事法薬機法

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