今、パンデミックを引き起こしているコロナウイルス。終息に向けて注目されるのが「PCR検査」や「抗体検査」です。連日メディアで飛び交っているワードですが、PCR検査と抗体検査の内容や違いについて「何となくは把握しているけれど、詳しくは分からない」という方も多いでしょう。
本稿では薬事法管理者が、PCR検査や抗体検査はそれぞれどんな検査で、違いは何なのかを解説していきます。
PCR検査と抗体検査の違い
PCR検査はウィルスの検出検査
PCR検査はウィルスを増幅させて検出する検査方法です。
Polymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)の頭文字をとってPCRと呼ばれます。
病原体の検出検査では、はじめに患者から検体を採取しますが、通常患者の検体に含まれるウィルス遺伝子量では、ウィルスを検出するには足りません。
そこで、ウィルス遺伝子量を増幅させ、検出できる状態にするのがPCR法です。
まずは病原体のDNA配列にくっつけられる「プライマー」と呼ばれる短いDNA断片を用いて、一本のDNAから二本のDNAに複製します。次に複製された2本のDNAをそれぞれ複製します。
PCR法では、これを繰り返すことで数時間内にDNAを100万倍に増やすことが可能です。そうして増幅させたウィルスのDNAを染色して検出装置にかけ、確認します。
目的の病原体のDNAを確認することができれば「陽性」、確認することができなければ「陰性」と判定されます。
コロナウィルスでは迅速かつ高精度の「リアルタイムPCR法」が用いられている
今回のコロナウィルスの検出に際しては「リアルタイムPCR法」が用いられています。
リアルタイムPCR法はウィルスの遺伝子を増やす際、光る試薬を織り交ぜることで、検査途中でもウィルス量を測定できる方法です。
遺伝子が増えるときに光が強くなり、検査途中でもウイルスの量を測定できます。
リアルタイムPCR法では通常のPCR法より少ないウイルス量でも測ることが可能(10倍~100倍の検出感度)でスピーディーかつ高精度の検査ができるのです。
抗体検査は抗体が作られているかを調べる検査
抗体検査とは、血液を採取して免疫反応の検査を行い、抗体が作られているかどうかを調べるものです。
体内にはもともと免疫機能が備わっています。
ウィルスが体内に入ると免疫系の「B細胞」が反応し、応急措置的に免疫細胞「IgG細胞」を作ります。IgG細胞は”さすまた”のようなもので、ウィルスを寄せ付けないよう作用します。
しかし、IgG細胞は大きく、小回りが利きません。血管内のウィルスにしか対応できず、血管の外にでたウィルスなどを取り逃がしてしまいます。
IgG細胞の役割はあくまでも時間稼ぎです。
IgG細胞で時間を稼いでる間に、体内のB細胞がウィルスに対応した免疫細胞「IgM細胞」を作ります。
IgM細胞はいわばオーダーメイドの抗体です。サイズも小さく、小回りも利くIgM細胞はウィルスを撃退できます。
そして、IgM細胞はウィルスがいなくなった後も体内に残ります。IgM細胞が体内にある状態なら、ウィルスに感染しないとされています(現在のところ詳細には判明していません)。
そこで、体内にIGM細胞があるかを調べるのが抗体検査です。
正しい知識を持ってコロナウィルスと戦おう